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散らかった机の上
ライトファンタジー小説になるといいなのネタ帳&落書き帳
Admin / Write
2024/04/26 (Fri) 05:17
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2013/07/20 (Sat) 03:01
 なんだかんだで四話目終了です。
 半年に1回ってペースですかね……思いだした時&気分が乗った時、に進めてますからね。
 なんだかんだで5年経ってて驚きですよ_(:3」∠)_

 四話目は、これまでの三話と比べても非常にメリハリがないというか、起承転結してないというか、何が書きたかったんだろうという感じですね……w
 本来はまったく別の話を考えていたのですが、そっちもオチがつけられなかったので、こういう形になりました。

 話の裏で、ティナとラングリーが何やってるか、という流れはあるのですが、話の表でリームが何やってるか、が、ない。危機とか山場とかがない。皆無。平和すぎ。
 ティナとかラングリーとかはわりと静かに大変そうなのに、リームはただただ魔法の勉強してればいいだけだもんな……気楽なもんだよな。
 仕方ないので、フローラ姫にゆすってもらったり、ミハレットにゆすってもらったりで、超個人的に危機に陥ってもらいましたが……ううーん。
 もうちょっとティナとの関連で立場を揺らがせてみたりしようかな……とは思っています、が……。

 あとは「普通の魔法士」を出して比較対象にしてみたい、ってのもあります。
 宮廷魔法士とか青の魔法監視士とか謎の雑貨屋店主とか、ハイグレードな面々ばかりが登場するので、一般的にどうなのかってのがまったく書かれてないなーと。
 あとはミハレットが現時点でどれくらい魔法が使えるのか、リームとの差は?とか。

 プラス、少なくともラングリーささやき再挑戦はするだろうし、風精霊が青関連じゃない、ってのもはっきり示しておきたいところ。
 しかし、表の流れになる部分がさっぱりさっぱりだな。むむーん。
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2013/07/20 (Sat) 02:11
雑貨屋ラヴェル・ヴィアータ

溶ける鉄鍋、踊るホウキ……とんでもないものが売られているという怪しげな噂が絶えない、奇妙な雑貨屋ラヴェル・ヴィアータ。
魔法に満ちた異世界の街角から始まる、日常系ほのぼのライトファンタジー小説



……の、ネタバレブログです。(・∀・)
あーでもない、こーでもない、言いながらネタ帳代わりにしています。

小説本編だけ読みたい方はこちらへどうぞ! → http://www.dnovels.net/novels/detail/6777


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【キャラクター紹介】


★ リーム / 女性 / 13歳(自称)
 
主人公。肩までの黒髪に翡翠色の瞳、灰色のシンプルなワンピース。
 家出(?)してきて、不思議な雑貨屋で働くことになる。
 真面目でしっかりもの。大人にバカにされるのが何よりキライ。
 青の魔法監視士に憧れ、三話以降では見習い魔法士となる。


★ ティナ・ライヴァート / 女性 / 17歳(見た目)
 
たぶん主人公その2。金髪のポニーテールに茶褐色の瞳、ベージュのゆるい羽織り物と白のシャツ。
 不思議な雑貨屋の店主。自称魔法士。青の魔法監視士は苦手。
 基本的に細かいことは気にしない大雑把な性格だが、悩みがないわけではないようだ。


★ ラングリー / 男性 / 34歳
 
舞台となるクロムベルク王国の宮廷魔法士。一国に片手で数えるほどしかいない優秀な魔法士。
 外はねの黒髪に赤褐色の瞳。自由奔放だがティナには振り回されぎみ。リームの天敵。


★ フローラ / 女性 /29歳
 
クロムベルク王国の公爵家の血を継ぐ貴族。現王の従姉妹にあたる。長い金髪に翡翠色の瞳。
 人形のように可愛らしく十代にしか見えない。「涙姫」と呼ばれるほど四六時中泣いている。


★ イシュ・サウザード & ダナン・ハドレッド /  両者とも男性 / 見た目20代
 
魔法の不正利用を取り締まる「魔法監視士」。魔法士のエリート。
 イシュは長い緑銀髪と紫色の瞳で細身、丁寧語だが態度とプライドがやたら高い。
 ダナンは短めの赤髪と緑色の瞳で筋肉質、ぶっきらぼうな喋りだが常識人、イシュの歯止め役。

 
★ ミハレット・エフォーク・ブルダイヌ / 男性 / 14歳

 宮廷魔法士ラングリーの弟子。大貴族ブルダイヌ家の四男。金髪に海色の瞳。
 師匠に心酔するあまり髪型やローブまで真似ている。テンション高い中にうっすらと育ちの良さがにじみ出る。


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【あらすじ】

■第1話■

 溶ける鉄鍋、踊るホウキ……とんでもないものが売られているという怪しげな噂が絶えない、奇妙な雑貨屋ラヴェル・ヴィアータ。
 しかし、そこしか働き口がないと言われた家出少女リームは、意を決して店の扉をたたく。
 はたして店主は何者なのか? そして、リームを追う魔法の影とは? 魔法に満ちた異世界の街角から始まる、ほのぼのライトファンタジー。

 (31371字/ 原稿用紙:約78枚/ 文庫本換算:約62P)

■第2話■

 憧れの『青』がレンラームの街に来ている――! 噂を聞いたリームは、いてもたってもいられず『青』を探しに駆けだした。
 国をこえて魔法の不正利用を取り 締まる魔法監視士、通称『青』。しかし、どうやら魔法監視士たちは、不思議な雑貨屋の噂を聞きつけてやってきたらしい。
 何やら隠し事をしているらしき店主 ティナと、それを探る『青』のふたり。間に挟まれて揺れ動くリーム。とうとう雑貨屋の秘密があばかれるのか?

 (24165字/ 原稿用紙:約60枚/ 文庫本換算:約48P)

■第3話■

 宮廷魔法士ラングリーに魔法を教わることになった元・家出少女(現・不思議な雑貨屋従業員)リーム。しかし、リームの弟子入りに反対する兄弟子ミハレット が『試練』(?)を突きつけてきた。
 「待ってたぞ、リーム! 今日もこのオレが弟子とはなんたるかを教えてやろうっ!!」「あのさ、いつになったら弟子と して認めてくれるの? いいかげん魔法の勉強をしたいんだけど」
 一方、雑貨屋店主ティナとラングリーとの間では、妙なやり取りが交わされているよう で……? 魔法に満ちた異世界、『黒竜が守護する国』クロムベルクを舞台にした、ほのぼのライトファンタジー。

 (26059字/ 原稿用紙:約65枚/ 文庫本換算:約52P)

■第4話■

 やっとのことで宮廷魔法士の弟子として認められたリーム。魔法の源『フィード』について、兄弟子ミハレットと競争しながら学び始める。
 魔法の勉強、雑貨屋 の店番、フローラ姫とのお茶会――毎日充実した日々を送るリームの裏で、『雑貨屋の不思議』を背負うことになった宮廷魔法士ラングリーは、何やら思うとこ ろがあるようで……? 魔法に満ちた異世界、『黒竜が守護する国』クロムベルクを舞台にした、ほのぼのライトファンタジー。

 (28154字/ 原稿用紙:約70枚/ 文庫本換算:約56P)


↓小説本編置き場↓
http://www.dnovels.net/novels/detail/6777
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2013/07/20 (Sat) 01:33

■野外茶会・ミトロの森

 秋晴れの良い天気。ただ少し風が湿っぽくて遠くの空に雲が見える。雨がふらないといいけど、とリームは思った。
「それじゃあ行こうか」
「はい、お願いします」
 今日はフローラ姫とのお茶会の日。ただし、初めてストゥルベル城の外で開かれる野外茶会だ。フローラ姫はラングリーが連れてくるらしく、こちらはティナと一緒に現地集合の予定だった。

 最初に着いたのは森の入口だった。ストゥルベル領内の小高い丘にある森で、隣にある村の名前と同名の『ミトロの森』と呼ばれているらしい。ところどころ木々の葉が黄色や茶色に染まっている。まだふかふかと落ち葉が積もるには早い時期だ。
「えーと……こっち、かな。ちょっと距離がありそう。もう一回移動しようかな」
「オジサンたちの居る場所が分かるんですか?」
「目印を置いてくれてるのよ。分かる? 東の方」
 リームは目を閉じて感覚を広げた。濃密な黄緑色の気配。黄色が大地のフィードの色で、緑色が水のフィードの色だ。植物が多い場所はそれが混ざって黄緑に見える。
「全然分かりません」
 リームは正直に答えた。歩いて移動するのをためらうほど遠くのことなど、微塵も分かる気がしない。でもティナも、きっと腹黒宮廷魔法士も分かるのだろう。レベルの差は果てしなく広い。
「まぁ最初は難しいかな。じゃあ、もう一回移動するよ」

 紫色の光が薄らいで、見えてきたのは森の中のひらけた場所だった。少し曇ってきた柔らかい日差しの下、一面に紫色のサリタの花が満開だ。
 その中央に不自然に置かれている白いテーブルセット、数人の侍女に囲まれてお人形のように座っているのは涙姫フローラだった。
 そして黒いローブの姿が二人……二人? リームは嫌な予感がした。
 フローラの隣、椅子に座っているのは宮廷魔法士ラングリーだ。とすると、その傍らに立つ小柄な黒ローブ姿は……。
「ミ、ミハレッ……っ!?!?」
 まずい。何故ミハレットがここにいるのだろう。こんな顔ぶれが集まったら、絶対にばれるじゃないか――というか、もう話してしまったのだろうか? フローラ姫と自分との関係について、どういう説明をしてあるんだろう?
 ラングリーが気がついて、それに続いてフローラ姫やミハレットもリームたちの方を向いた。ハンカチで目元をぬぐっていたフローラ姫が微笑みながら手をふる。ラングリーもミハレットも表情に特に変わったところは見られないが……。
「あ、ほんとだね。ミハレットくんも来てたんだ」
「来てたんだ、じゃないですよ、ティナっ!! やばいじゃないですか!!」
 じりじりとティナの服の裾を引っ張りながら後ろへ下がるリーム。ティナもリームの危惧するところは分かったようだが、肩をすくめるだけで動こうとはしなかった。
「まあ、いい機会かもしれないよ? ずっと隠してるのも面倒でしょ」
「ばれたほうが面倒ですよ! きっとまた師匠にふさわしくないとか言って訳の分からない試練をやらせるんですよ!」
 あれだけラングリーに心酔するミハレットだ。地味で平凡な自分が師匠の娘だなんて、絶対に認めるはずがない。こっちだって願い下げなのに。あぁむしろ娘なんかじゃないんだった。そうだった。でも、フローラ姫がそう言ったら信じてしまうのではないだろうか――いや、そうでもないか? フローラ姫と自分は似ても似つかないんだし。勘違いってことで丸く収まる可能性も……?
 リームがぐるぐると考えていると、なかなか近づいてこないことを不思議に思ったらしいラングリーら三人が、何やら言葉を交わし、そしてミハレットがリームとティナのほうに歩いてくるのが見えた。
 どうする!? 誤魔化せるか? それ以前に、話を聞いているのかいないのか? どういう態度をとってくるだろう? やっぱり――がっかりしただろうか……。
 ミハレットが声をかけられるほど近くに来る少し前――リームは、逃げ出した。
「ちょっと、リームっ!」
 ティナの少し呆れ気味な声を背に聞きながら、リームは森の中へと駆けていった。


 ――なんだか前もこんなことあったな。
 リームは大きな木の洞にしゃがんで膝をかかえながら思った。誰かが追いかけてくる気配はない。鳥の鳴き声、風が木々を揺らす音、聞き取れないほど小さな精霊語のささやきだけが聞こえる。
 あの春の日の夜を思い出す。王妃様の背に乗ってストゥルベル城へ行って、初めてフローラ姫に会って。何を言えばいいのか分からなくて、逃げ出してしまったのだ。
 成長してないな、自分。リームは一人ため息をついた。
 こうして一人でゆっくり考えてみると、やはりティナの言うとおり、正直に話してしまったほうが良い気がしてくる。自分が娘だと認めていないことも含めて。ストゥルベル家とも宮廷魔法士とも繋がりを持ちたくない気持ち、ミハレットは分かってくれるだろうか。それとも、名前の束縛からは逃げられないって諭されてしまうだろうか。自分に対する態度も変わってきてしまうのだろうか……。
 ふと、洞の外から茂みを揺らす音が聞こえた。誰かが探しに来たのか、それとも森の動物か。リームは気配をひそめて耳をすませた。
『人間だよ。子供だね』
『なんだ、人間か』
 聞こえてきたのは鈴の音のような精霊語。ふと見ると、洞の外から透明な羽の小さな妖精が二人のぞいていた。黄緑色の葉のような質感の服を着た小人のような形をしている。妖精族はその力の大きさによって虫程の大きさから人間程の大きさまで様々だ。王都で見たことがあるのは人間程の大きさの妖精が多かったので、リームは手のひらほどの大きさの妖精を見るのは初めてだった。
『人間でもいいかな』
『人間は面倒くさいらしいよ』
『うーん、そっかぁ……』
『あの、何かご用ですか?』
 リームが話しかけると、二人の妖精はびっくりして洞の入口から飛び退いた。しかしすぐに戻ってくる。
『喋った! ちょっと下手だけど!』
『ごめんなさい、習ったばかりなので』
『キミは精霊使いなの?』
『いいえ、魔法士……です』
 見習いという単語が分からずに、リームはそう言った。
『魔法士なんだ。へぇ~。魔法士がこんなところで何をしてるの?』
『えーと……』
 何をしてるんだろう自分。返事を考えるより先に、リームはため息をついてしまった。本当に何をしているんだろう。そんなリームを見て、妖精たちは顔を見合わせる。
『精霊語でどう言うか分からないんだね?』
『まぁいいか。僕らは僕らで用事があるしね。あ、もし暇ならさ、手伝ってくれない?』
『何をですか?』
『ちょっと友達が死にそうだから、助けてあげようかなって思ってて』
「えぇっ!? それって大変なんじゃ!?」
 思わず人間の言葉で言ってしまって、リームはすぐに言いなおす。
『それは大変ですね!?』
 しかし妖精はあんまり大変じゃないさそうだ。にこにこと笑いながら鈴のような声で話す。
『僕らは草花の妖精だから、本当は死にそうとかあんまり大したことじゃないんだ。寿命が長い木の妖精や泉の妖精とかだと、もう少し深刻に考えるみたいだけどね。まぁ今回は気が向いたから、ちょっとやってみようかなーってだけで』
『そうなんですか……』
『キミも気が向いたんなら、来てくれる?』
 確かにいつまでもここでじっとしているわけにはいかない。こうしてリームは妖精に誘われるままに洞から出たのだった。


■妖精の小さな花

 それは本当にひっそりと咲いていた。森の中の落ちくぼんだ盆状の一角、木々の影に隠れるように咲く、薄い桃色の花。
『もう妖精の姿を維持できないほどに弱っていてね。まぁ今日明日の命ってとこかな』
『種が残せてるんなら、僕らもこんなことはしないんだけど、残念ながら種を残せてないんだよ』
 そう言う妖精たちだが、口調はいたって気軽なものだ。世間話をするような雰囲気で、リームはどんな表情をしたものか迷ってしまう。
『それで、どうすればいいんですか?』
『一番いいのは、死体だね』
「え゛」
 リームは固まった。相変わらず気軽な調子で妖精は続ける。
『動物の死体があると、フィードの流れががらっと変わるんだ。僕らにとっては良いことづくめさ。でも僕らは狩りができるほど強くないし、死体を運べるほど大きくもないし』
『弱ってる動物を誘導するぐらいしかできないかなと思ってたんだけど、人間の魔法士さんが協力してくれるなら良かったね』
『えーとつまり……何か狩ってくる?』
『うん、それでもいいし、あとはフィードの流れを何とかしてくれるならそれでもいいし』
 何とかとはどういうことか。リームは目を閉じてフィードを観察した。土と水の黄緑色のフィード。確かに他よりも弱々しい気がする。リームは〈杯の雫〉を唱えた。水のフィードを集め、少量の水を手のひらの上に生み出す。
『こういうことなら、できますけれど』
『それはフィードを集めただけだよね? 流れは変わってないから意味がないよ』
『もっと広い範囲からいろんなフィードを集めて、ここに固定してくれるんだったら役に立つかも』
『ごめんなさい、おそらく無理です……』
 これ以上の量のフィードを扱うのは無理だったし、固定というのも全然分からない。魔法士と名乗ってしまったものの、まったくの役立たずだ。妖精たちに呆れた様子やがっかりした様子は見られなかったが、リームは自分で自分が情けなくなってしまった。
『まぁ別にできなくても困るわけじゃないしね。僕らも気が向いたからって感じだから』
 その時、がさがさと横の茂みが揺れ、何か黒い影がぬぅっと現れた。大きい。リームが見上げると、そこに立っていたのはつぶらな瞳の雑食獣ビアーだった。黒い毛皮に覆われた大きな体、太い腕には鋭い爪。雑食獣――つまり、肉食でもある。そして今は、秋である。
『あ、丁度良いね』
「よくないよ!? 私、こんなの狩れないよっ!?」
 あくまで気軽な感じの妖精に、人間語で叫ぶリーム。妖精はたぶん意味を理解できなかったはずだが、笑顔で言った。
『死ぬなら是非あの花のそばでよろしく!』
「私のほうが!?」
 妖精たちにとってはビア―も人間も「動物」ということ以外に大きな差はないようだった。
 ざっ、とビアーが一歩前に進み出た。視線は真っ直ぐリームを見ている。牙の覗く口元からは涎が垂れているようだ。どうしよう。リームはビアーを見たままじりじりと後ろに下がった。視線を外したら襲われる予感がした。どうしよう。こんな大きな獣に対抗できる魔法なんて使えるはずがない。今のリームにできるのは、小さな光や火を呼び出すことぐらいだ。火、火か……。
 リームはビア―を睨みつけたまま、感覚を広げた。ぼんやりと感じる黄緑のフィードの中から、わずかな赤いフィードがある場所を探す……たぶんそこは落ち葉や枯れ枝がある場所だ。リームは呪文を唱えた。かつてないほど集中して一音一音に命を吹き込む。
 ぼうっと、リームのななめ後ろの地面が燃えた。落ち葉がパチパチとはぜる。ビアーの視線が逸れたのを感じて、リームは炎のそばに走った。たき火ほどの大きさの炎の後ろにまわり、何か松明代わりになる枝のようなものはないかと探したが、あいにく見つからなかった。
 ビアーは火をおそれて近づかなかったが、そこから離れようともしない。火が消えるのを待っているのだろうか。確かにそう長いこと火は維持できないだろうし、火から離れて逃げようものなら、すぐに追いつかれてしまうだろう。ああ、結局どうにもならない。やっぱり役立たずだ。ここでビアーと森の木々の栄養になってしまうのだろうか。きっとフローラ姫が泣いてしまう。
 びゅうと風が吹いた。リームは火が消えないかとひやりとする。その耳にくすくすと笑い声が届いた。
『うふふ、だめよ、リームちゃん。こんなところをうろうろしてちゃ』
『偉大なる大樹の友が心配するでしょう』
 風の精霊がふわりとリームの髪をかき混ぜた。ラングリーの塔の近くで見かけた精霊と同じような気もするし違う気もする。顔かたちは異なるはずなのに印象が似ていて、リームにはあまり見分けがつかなかった。
『た、助けに来てくれたんですか?』
『そうかもしれないわね』
『違うかもしれないわね、くすくす』
『ティナかラングリーを呼んできてくれるだけで、すごく助かります』
『それには及ばないわ』
『それをする立場にないわ』
『でもあれをなんとかするくらいはできるかもね』
『お腹をすかせたビアーさん、これは餌ではないのよ』
 すいっと、半透明の風精霊は空中を泳ぐようにビアーに近づき、くるくるとその周囲を回った。ビアーはぐるると唸っていたが、しばらくしてリームとは逆方面に去っていった。リームはそれを見送って、深く深く息をついた。座りこんでしまいそうだったが、なんとかこらえた。
『ありがとうございます……』
『ふふふふ、あとは彼にお任せね』
『お呼びではない可哀相な彼ね、くすくす』
 風精霊はつんつん、とリームの頬をつついたあと、空に溶けるように消えてしまった。結局、助けに来てくれたということなんだろうか。風精霊の考えていることは本当に分からない。ふと見ると、先程の妖精がたき火を見ていた。
『これは使えるかもしれないね』
『死体ほどじゃないけどね。この灰もらっていいよね? 何か使う?』
『いいえ、使いませんよ。どうぞ』
『ありがとう!』
 あの花のそばで死んでね、と笑顔で言ったことを何一つ気にしていないらしい彼らは、根本的に人間とは違う考え方をする生き物だった。精霊も妖精も、言葉は習えてもその心までは習えない。
 ざくざくと草を踏む音が聞こえて、リームはびくっと振り返った。今度の足音は黒い獣ではない。ずっと小柄な黒いローブ姿だった。
「リーム、こんなとこにいたのか! 何してたんだ?」
「ミハレット」
 普通につぶやいたはずだったのに、自分の声が震えているのを聞いて、リームは口元を押さえた。目の前がにじむ。気恥かしさと悔しさにリームは奥歯を噛んで、ミハレットから顔をそむけた。
「お、おい、リーム?」
 駆け寄ってきたミハレットが、白いハンカチを差し出してきた。ローブや髪形だけでなく所持品まで同じとは、こいつはどこまで師匠になりたいのか。リームは可笑しくなってしまって泣きながら笑った。
「大丈夫だから、ごめん。ありがと」
「本当に大丈夫なのか? 何かあったのか?」
「ううん、大丈夫。ミハレット、私を探しに来てくれたの?」
「そうだ。フローラ様が心配なさってるぞ」
「フローラ様が……あのさ、私のこと、何か聞いた?」
 そっとミハレットの表情をうかがう。心配そうな表情の他は、特に何も変化は見られない。
「あぁ。フローラ様の養子候補だったそうだな。それで師匠の弟子になるキッカケになったんだろ? ラッキーだったなぁ。ついでに養子になれば良かったのに。まぁ魔法士を目指すんだったらストゥルベル家の跡継ぎは面倒だな。それは分かる」
「でしょ? 分かるよね? そうなの、面倒なんだよっ」
「でも、フローラ様の養子ってことは、ほぼ師匠の養子みたいなものじゃないか! いいなぁ、師匠の養子! オレもできることなら師匠を父上と呼びたい! ああ今度呼んでみてもいいだろうか!? 絶対蹴飛ばされるけど!」
 力説するミハレットの姿に、リームは分かってもらえたかもしれないという淡い気持ちを、きれいさっぱり吹き消されてしまった。涼しい秋風が吹き抜ける。
 でもどうやら、自分がフローラ姫の実の娘だという……いや、かもしれないという話は聞いていないようだ。
「もしかして、養子の話がもう一度あがってきてるから逃げたりしたのか? だめだぞ、逃げたりしないで嫌なら嫌とちゃんと言わなきゃ伝わらないからな」
「そんなこと分かってるよ」
 似たようなことを前も言われた気がする。そんなに自分は逃げてばかりだろうか? ……そうだな、逃げてばかりだ。リームはひとつ頷くと、ミハレットのほうに向きなおった。
「あのね。落ち着いて聞いてほしいんだけど、実は、私……」
「なんだ?」
「……私は……」
「…………」
「…………………か、帰り道、分からなくなっちゃったんだけど、どっちかなっ!?」
「あぁ、迷子だったのか。やっぱりな。そんなことだろうと思ったよ。ほら、こっちだぞ」
 駄目だぁぁぁっ! 言えないっ!
 リームはミハレットの後ろを歩きながら心の中で叫んだ。言えない。なんで言えないのか自分でも分からない。リームは悔しくなって、また目尻に涙をにじませた。今絶対振り返るなよ、とミハレットの背中をにらみながら。


■サリタの花咲く森で

「お待たせしてしまって本当にすみませんでした」
「いいのよ、リーム……でも驚いてしまったわ。何か理由があったの……?」
「おじさ……ラングリー師匠の顔が気に食わなかったので」
 ミハレットに怒涛のごとく文句を言われるのが分かっているので、呼び方を言いなおす。当の腹黒タヌキはにやりと笑い、確かにこの表情が嫌だったのは嘘じゃない、と、リームは思いながらラングリーをにらみつけた。
 サリタの花畑の中央には、白いテーブルセットに座る五人と、小さなワゴンのそばに控えている侍女数人。琥珀色のお茶は香り高く、テーブル中央に用意された焼き菓子はナッツがたっぷり使われていた。
「あらまあ、またケンカでもしたの……?」
「師匠と弟子なんてケンカがつきものさ」
「そうなんですか!? オレ、ケンカしたことないですよね? つきものなんですか? したほうがいいんですかっ?」
「まぁお前の場合はケンカにならんからなぁ」
「だめよ、ラングリー。また声を出なくする魔法なんてかけたら、可哀相でしょう……」
 涙をにじませて諌めるフローラ姫の言葉に、ティナがのんびりお茶を飲みながら言う。
「そんなことしてたんだ……ミハレットくん、がんばるねー」
「いえっ、オレとしては一生あのままでも良かったんですよ! 師匠の弟子にしてもらえるんだったら声がでないことくらいなんでもなかったです!」
「はっはっは、どうですこの面倒くささ、すごいでしょう。ティナ殿に一匹くれてやりたいくらいですよ」
「いやー、遠慮しておくかなー」
 紫色の花が揺れる森のお茶会に笑い声が響く。リームは少し目をふせて琥珀色のお茶を一口飲んだ。
 ふわっとフローラ姫が優雅に立ちあがった。するするとリームのそばに近づいて、突然横から抱きしめた。
「フ、フローラ様っ!?」
「元気ないわね、リーム……ぐすっ。大丈夫よ、ケンカなんてすぐ仲直りすればいいのよ」
「そーだぞぉ、リーム。仲直りしよう、仲直り」
 満面のにやにや笑いという表現もおかしなものだが、そうとしか表現できないラングリーに、リームはフローラ姫の腕の中から呪いの視線を送った。
「うーん、お似合いだと思うけれど、こればっかりはリームが決めることだしなー。確かにストゥルベル家はなぁ……」
 ミハレットのつぶやきにティナが尋ねる。
「エイゼル国王に王子が生まれた今でも厄介なの?」
「公爵家ですから。オレの家でさえかなり面倒なんですよ。オレは兄が何人もいますからだいぶマシですけれど。フローラ様にも他に跡継ぎがいらっしゃれば別なんでしょうけれどね」
 それを聞いて、ラングリーはお茶のカップを手に取りながら、何気なく言った。
「たぶんそろそろだと思うんだがな。フローラ、体調はどうだ?」
「まだ分からないわ。あと二週間くらいすればはっきりすると思うけれど……」
「えっ」
「え?」
「あぁ」
 三人の視線がフローラ姫に集中する。フローラ姫は秋咲きの薔薇のように微笑んで、腕の中で固まる娘にささやいた。
「またはっきりしたらお話するわね」
 雲間から柔らかい日差しが降り注ぎ、森の木々を通り抜けた風はどこか甘い匂いを運ぶ。実りの秋はこれから深まる季節だった。


― 雑貨屋ラヴェル・ヴィアータ4   終 ―
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