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  <title>散らかった机の上</title>
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  <description>ライトファンタジー小説になるといいなのネタ帳＆落書き帳</description>
  <lastBuildDate>Fri, 19 Jul 2013 18:01:55 GMT</lastBuildDate>
  <language>ja</language>
  <copyright>© Ninja Tools Inc.</copyright>
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    <item>
    <title>四話目、終了。</title>
    <description>
    <![CDATA[　なんだかんだで四話目終了です。<br />
　半年に１回ってペースですかね&hellip;&hellip;思いだした時＆気分が乗った時、に進めてますからね。<br />
　なんだかんだで５年経ってて驚きですよ_(:3｣&ang;)_<br />
<br />
　四話目は、これまでの三話と比べても非常にメリハリがないというか、起承転結してないというか、何が書きたかったんだろうという感じですね&hellip;&hellip;ｗ<br />
　本来はまったく別の話を考えていたのですが、そっちもオチがつけられなかったので、こういう形になりました。<br />
<br />
　話の裏で、ティナとラングリーが何やってるか、という流れはあるのですが、話の表でリームが何やってるか、が、ない。危機とか山場とかがない。皆無。平和すぎ。<br />
　ティナとかラングリーとかはわりと静かに大変そうなのに、リームはただただ魔法の勉強してればいいだけだもんな&hellip;&hellip;気楽なもんだよな。<br />
　仕方ないので、フローラ姫にゆすってもらったり、ミハレットにゆすってもらったりで、超個人的に危機に陥ってもらいましたが&hellip;&hellip;ううーん。<br />
　もうちょっとティナとの関連で立場を揺らがせてみたりしようかな&hellip;&hellip;とは思っています、が&hellip;&hellip;。<br />
<br />
　あとは「普通の魔法士」を出して比較対象にしてみたい、ってのもあります。<br />
　宮廷魔法士とか青の魔法監視士とか謎の雑貨屋店主とか、ハイグレードな面々ばかりが登場するので、一般的にどうなのかってのがまったく書かれてないなーと。<br />
　あとはミハレットが現時点でどれくらい魔法が使えるのか、リームとの差は？とか。<br />
<br />
　プラス、少なくともラングリーささやき再挑戦はするだろうし、風精霊が青関連じゃない、ってのもはっきり示しておきたいところ。<br />
　しかし、表の流れになる部分がさっぱりさっぱりだな。むむーん。]]>
    </description>
    <category>未選択</category>
    <link>http://tirakatta.blog.shinobi.jp/%E6%9C%AA%E9%81%B8%E6%8A%9E/%E5%9B%9B%E8%A9%B1%E7%9B%AE%E3%80%81%E7%B5%82%E4%BA%86%E3%80%82</link>
    <pubDate>Fri, 19 Jul 2013 18:01:55 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>あらすじとキャラ紹介</title>
    <description>
    <![CDATA[<font style="font-size:large;"><font style="font-family: times new roman;"><font style="color: rgb(0, 0, 205);">雑貨屋ラヴェル・ヴィアータ</font></font></font><br />
<br />
<strong>溶ける鉄鍋、踊るホウキ&hellip;&hellip;とんでもないものが売られているという怪しげな噂が絶えない、奇妙な雑貨屋ラヴェル・ヴィアータ。<br />
魔法に満ちた異世界の街角から始まる、日常系ほのぼのライトファンタジー小説</strong><br />
<br />
<br />
&hellip;&hellip;の、ネタバレブログです。（・&forall;・）<br />
あーでもない、こーでもない、言いながらネタ帳代わりにしています。<br />
<br />
小説本編だけ読みたい方はこちらへどうぞ！　&rarr;　<a href="http://www.dnovels.net/novels/detail/6777"><font style="color:#006400;">http://www.dnovels.net/novels/detail/6777</font></a><br />
<br />
<br />
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------<br />
<br />
<strong><font style="font-size:large;">【キャラクター紹介】</font></strong><br />
<br />
<br />
<font style="color:#a52a2a;"><strong><img alt="" src="//tirakatta.blog.shinobi.jp/File/blog-rimu.jpg" style="width: 200px; height: 186px;" />★ リーム　/ 女性 / １３歳（自称）</strong><br />
　</font><font style="color:#000000;">主人公。肩までの黒髪に翡翠色の瞳、灰色のシンプルなワンピース。<br />
　家出（？）してきて、不思議な雑貨屋で働くことになる。<br />
　真面目でしっかりもの。大人にバカにされるのが何よりキライ。<br />
　青の魔法監視士に憧れ、三話以降では見習い魔法士となる。</font><br />
<br />
<font style="color:#a52a2a;"><strong><img alt="" src="//tirakatta.blog.shinobi.jp/File/blog-tina.jpg" style="width: 200px; height: 188px;" />★ ティナ・ライヴァート / 女性 / １７歳（見た目）</strong><br />
　</font><font style="color:#000000;">たぶん主人公その２。金髪のポニーテールに茶褐色の瞳、ベージュのゆるい羽織り物と白のシャツ。<br />
　不思議な雑貨屋の店主。自称魔法士。青の魔法監視士は苦手。<br />
　基本的に細かいことは気にしない大雑把な性格だが、悩みがないわけではないようだ。</font><br />
<br />
<font style="color:#a52a2a;"><strong><img alt="" src="//tirakatta.blog.shinobi.jp/File/blog-rang.jpg" style="width: 200px; height: 193px;" />★ ラングリー / 男性 / ３４歳</strong><br />
　</font><font style="color:#000000;">舞台となるクロムベルク王国の宮廷魔法士。一国に片手で数えるほどしかいない優秀な魔法士。<br />
　外はねの黒髪に赤褐色の瞳。自由奔放だがティナには振り回されぎみ。リームの天敵。</font><br />
<br />
<font style="color:#a52a2a;"><strong><img alt="" src="//tirakatta.blog.shinobi.jp/File/blog-flor.jpg" style="width: 200px; height: 190px;" />★ フローラ / 女性 /２９歳</strong><br />
　</font><font style="color:#000000;">クロムベルク王国の公爵家の血を継ぐ貴族。現王の従姉妹にあたる。長い金髪に翡翠色の瞳。<br />
　人形のように可愛らしく十代にしか見えない。「涙姫」と呼ばれるほど四六時中泣いている。</font><br />
<br />
<font style="color:#a52a2a;"><strong><img alt="" height="196" src="//tirakatta.blog.shinobi.jp/File/blog-isyudanan.jpg" width="300" />★ イシュ・サウザード　＆　ダナン・ハドレッド /&nbsp; 両者とも男性 / 見た目２０代</strong><br />
　</font><font style="color:#000000;">魔法の不正利用を取り締まる「魔法監視士」。魔法士のエリート。<br />
　イシュは長い緑銀髪と紫色の瞳で細身、丁寧語だが態度とプライドがやたら高い。<br />
　ダナンは短めの赤髪と緑色の瞳で筋肉質、ぶっきらぼうな喋りだが常識人、イシュの歯止め役。</font><br />
<font style="color:#a52a2a;">　<br />
<strong><img alt="" src="//tirakatta.blog.shinobi.jp/File/blog-miha.jpg" style="width: 200px; height: 182px;" />★ ミハレット・エフォーク・ブルダイヌ / 男性 / １４歳</strong></font><br />
　宮廷魔法士ラングリーの弟子。大貴族ブルダイヌ家の四男。金髪に海色の瞳。<br />
　師匠に心酔するあまり髪型やローブまで真似ている。テンション高い中にうっすらと育ちの良さがにじみ出る。<br />
<br />
<br />
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------<br />
<strong><font style="font-size:large;">【あらすじ】</font></strong><br />
<br />
<font style="color:#0000ff;">■第１話■</font><br />
<br />
　溶ける鉄鍋、踊るホウキ&hellip;&hellip;とんでもないものが売られているという怪しげな噂が絶えない、奇妙な雑貨屋ラヴェル・ヴィアータ。<br />
　しかし、そこしか働き口がないと言われた家出少女リームは、意を決して店の扉をたたく。<br />
　はたして店主は何者なのか？　そして、リームを追う魔法の影とは？　魔法に満ちた異世界の街角から始まる、ほのぼのライトファンタジー。<br />
<br />
　（31371字/ 原稿用紙：約78枚/ 文庫本換算：約62Ｐ)<br />
<br />
<font style="color:#0000ff;">■第２話■</font><br />
<br />
　憧れの『青』がレンラームの街に来ている――！　噂を聞いたリームは、いてもたってもいられず『青』を探しに駆けだした。<br />
　国をこえて魔法の不正利用を取り 締まる魔法監視士、通称『青』。しかし、どうやら魔法監視士たちは、不思議な雑貨屋の噂を聞きつけてやってきたらしい。<br />
　何やら隠し事をしているらしき店主 ティナと、それを探る『青』のふたり。間に挟まれて揺れ動くリーム。とうとう雑貨屋の秘密があばかれるのか？<br />
<br />
　（24165字/ 原稿用紙：約60枚/ 文庫本換算：約48Ｐ）<br />
<br />
<font style="color:#0000ff;">■第３話■</font><br />
<br />
　宮廷魔法士ラングリーに魔法を教わることになった元・家出少女（現・不思議な雑貨屋従業員）リーム。しかし、リームの弟子入りに反対する兄弟子ミハレット が『試練』（？）を突きつけてきた。<br />
　「待ってたぞ、リーム！　今日もこのオレが弟子とはなんたるかを教えてやろうっ！！」「あのさ、いつになったら弟子と して認めてくれるの？　いいかげん魔法の勉強をしたいんだけど」<br />
　一方、雑貨屋店主ティナとラングリーとの間では、妙なやり取りが交わされているよう で&hellip;&hellip;？　魔法に満ちた異世界、『黒竜が守護する国』クロムベルクを舞台にした、ほのぼのライトファンタジー。<br />
<br />
　（26059字/ 原稿用紙：約65枚/ 文庫本換算：約52Ｐ）<br />
<br />
<font style="color:#0000ff;">■第４話■</font><br />
<br />
　やっとのことで宮廷魔法士の弟子として認められたリーム。魔法の源『フィード』について、兄弟子ミハレットと競争しながら学び始める。<br />
　魔法の勉強、雑貨屋 の店番、フローラ姫とのお茶会――毎日充実した日々を送るリームの裏で、『雑貨屋の不思議』を背負うことになった宮廷魔法士ラングリーは、何やら思うとこ ろがあるようで&hellip;&hellip;？　魔法に満ちた異世界、『黒竜が守護する国』クロムベルクを舞台にした、ほのぼのライトファンタジー。<br />
<br />
　（28154字/ 原稿用紙：約70枚/ 文庫本換算：約56Ｐ）<br />
<br />
<br />
&darr;小説本編置き場&darr;<br />
<a href="http://www.dnovels.net/novels/detail/6777">http://www.dnovels.net/novels/detail/6777</a><br />
-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------]]>
    </description>
    <category>【はじめに】あらすじとキャラ紹介</category>
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    <pubDate>Fri, 19 Jul 2013 17:11:43 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">tirakatta.blog.shinobi.jp://entry/73</guid>
  </item>
    <item>
    <title>雑貨屋ラヴェル・ヴィアータ４－３</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
■野外茶会・ミトロの森<br />
<br />
　秋晴れの良い天気。ただ少し風が湿っぽくて遠くの空に雲が見える。雨がふらないといいけど、とリームは思った。<br />
「それじゃあ行こうか」<br />
「はい、お願いします」<br />
　今日はフローラ姫とのお茶会の日。ただし、初めてストゥルベル城の外で開かれる野外茶会だ。フローラ姫はラングリーが連れてくるらしく、こちらはティナと一緒に現地集合の予定だった。<br />
<br />
　最初に着いたのは森の入口だった。ストゥルベル領内の小高い丘にある森で、隣にある村の名前と同名の『ミトロの森』と呼ばれているらしい。ところどころ木々の葉が黄色や茶色に染まっている。まだふかふかと落ち葉が積もるには早い時期だ。<br />
「えーと&hellip;&hellip;こっち、かな。ちょっと距離がありそう。もう一回移動しようかな」<br />
「オジサンたちの居る場所が分かるんですか？」<br />
「目印を置いてくれてるのよ。分かる？　東の方」<br />
　リームは目を閉じて感覚を広げた。濃密な黄緑色の気配。黄色が大地のフィードの色で、緑色が水のフィードの色だ。植物が多い場所はそれが混ざって黄緑に見える。<br />
「全然分かりません」<br />
　リームは正直に答えた。歩いて移動するのをためらうほど遠くのことなど、微塵も分かる気がしない。でもティナも、きっと腹黒宮廷魔法士も分かるのだろう。レベルの差は果てしなく広い。<br />
「まぁ最初は難しいかな。じゃあ、もう一回移動するよ」<br />
<br />
　紫色の光が薄らいで、見えてきたのは森の中のひらけた場所だった。少し曇ってきた柔らかい日差しの下、一面に紫色のサリタの花が満開だ。<br />
　その中央に不自然に置かれている白いテーブルセット、数人の侍女に囲まれてお人形のように座っているのは涙姫フローラだった。<br />
　そして黒いローブの姿が二人&hellip;&hellip;二人？　リームは嫌な予感がした。<br />
　フローラの隣、椅子に座っているのは宮廷魔法士ラングリーだ。とすると、その傍らに立つ小柄な黒ローブ姿は&hellip;&hellip;。<br />
「ミ、ミハレッ&hellip;&hellip;っ！？！？」<br />
　まずい。何故ミハレットがここにいるのだろう。こんな顔ぶれが集まったら、絶対にばれるじゃないか――というか、もう話してしまったのだろうか？　フローラ姫と自分との関係について、どういう説明をしてあるんだろう？<br />
　ラングリーが気がついて、それに続いてフローラ姫やミハレットもリームたちの方を向いた。ハンカチで目元をぬぐっていたフローラ姫が微笑みながら手をふる。ラングリーもミハレットも表情に特に変わったところは見られないが&hellip;&hellip;。<br />
「あ、ほんとだね。ミハレットくんも来てたんだ」<br />
「来てたんだ、じゃないですよ、ティナっ！！　やばいじゃないですか！！」<br />
　じりじりとティナの服の裾を引っ張りながら後ろへ下がるリーム。ティナもリームの危惧するところは分かったようだが、肩をすくめるだけで動こうとはしなかった。<br />
「まあ、いい機会かもしれないよ？　ずっと隠してるのも面倒でしょ」<br />
「ばれたほうが面倒ですよ！　きっとまた師匠にふさわしくないとか言って訳の分からない試練をやらせるんですよ！」<br />
　あれだけラングリーに心酔するミハレットだ。地味で平凡な自分が師匠の娘だなんて、絶対に認めるはずがない。こっちだって願い下げなのに。あぁむしろ娘なんかじゃないんだった。そうだった。でも、フローラ姫がそう言ったら信じてしまうのではないだろうか――いや、そうでもないか？　フローラ姫と自分は似ても似つかないんだし。勘違いってことで丸く収まる可能性も&hellip;&hellip;？<br />
　リームがぐるぐると考えていると、なかなか近づいてこないことを不思議に思ったらしいラングリーら三人が、何やら言葉を交わし、そしてミハレットがリームとティナのほうに歩いてくるのが見えた。<br />
　どうする！？　誤魔化せるか？　それ以前に、話を聞いているのかいないのか？　どういう態度をとってくるだろう？　やっぱり――がっかりしただろうか&hellip;&hellip;。<br />
　ミハレットが声をかけられるほど近くに来る少し前――リームは、逃げ出した。<br />
「ちょっと、リームっ！」<br />
　ティナの少し呆れ気味な声を背に聞きながら、リームは森の中へと駆けていった。<br />
<br />
<br />
　――なんだか前もこんなことあったな。<br />
　リームは大きな木の洞にしゃがんで膝をかかえながら思った。誰かが追いかけてくる気配はない。鳥の鳴き声、風が木々を揺らす音、聞き取れないほど小さな精霊語のささやきだけが聞こえる。<br />
　あの春の日の夜を思い出す。王妃様の背に乗ってストゥルベル城へ行って、初めてフローラ姫に会って。何を言えばいいのか分からなくて、逃げ出してしまったのだ。<br />
　成長してないな、自分。リームは一人ため息をついた。<br />
　こうして一人でゆっくり考えてみると、やはりティナの言うとおり、正直に話してしまったほうが良い気がしてくる。自分が娘だと認めていないことも含めて。ストゥルベル家とも宮廷魔法士とも繋がりを持ちたくない気持ち、ミハレットは分かってくれるだろうか。それとも、名前の束縛からは逃げられないって諭されてしまうだろうか。自分に対する態度も変わってきてしまうのだろうか&hellip;&hellip;。<br />
　ふと、洞の外から茂みを揺らす音が聞こえた。誰かが探しに来たのか、それとも森の動物か。リームは気配をひそめて耳をすませた。<br />
『人間だよ。子供だね』<br />
『なんだ、人間か』<br />
　聞こえてきたのは鈴の音のような精霊語。ふと見ると、洞の外から透明な羽の小さな妖精が二人のぞいていた。黄緑色の葉のような質感の服を着た小人のような形をしている。妖精族はその力の大きさによって虫程の大きさから人間程の大きさまで様々だ。王都で見たことがあるのは人間程の大きさの妖精が多かったので、リームは手のひらほどの大きさの妖精を見るのは初めてだった。<br />
『人間でもいいかな』<br />
『人間は面倒くさいらしいよ』<br />
『うーん、そっかぁ&hellip;&hellip;』<br />
『あの、何かご用ですか？』<br />
　リームが話しかけると、二人の妖精はびっくりして洞の入口から飛び退いた。しかしすぐに戻ってくる。<br />
『喋った！　ちょっと下手だけど！』<br />
『ごめんなさい、習ったばかりなので』<br />
『キミは精霊使いなの？』<br />
『いいえ、魔法士&hellip;&hellip;です』<br />
　見習いという単語が分からずに、リームはそう言った。<br />
『魔法士なんだ。へぇ～。魔法士がこんなところで何をしてるの？』<br />
『えーと&hellip;&hellip;』<br />
　何をしてるんだろう自分。返事を考えるより先に、リームはため息をついてしまった。本当に何をしているんだろう。そんなリームを見て、妖精たちは顔を見合わせる。<br />
『精霊語でどう言うか分からないんだね？』<br />
『まぁいいか。僕らは僕らで用事があるしね。あ、もし暇ならさ、手伝ってくれない？』<br />
『何をですか？』<br />
『ちょっと友達が死にそうだから、助けてあげようかなって思ってて』<br />
「えぇっ！？　それって大変なんじゃ！？」<br />
　思わず人間の言葉で言ってしまって、リームはすぐに言いなおす。<br />
『それは大変ですね！？』<br />
　しかし妖精はあんまり大変じゃないさそうだ。にこにこと笑いながら鈴のような声で話す。<br />
『僕らは草花の妖精だから、本当は死にそうとかあんまり大したことじゃないんだ。寿命が長い木の妖精や泉の妖精とかだと、もう少し深刻に考えるみたいだけどね。まぁ今回は気が向いたから、ちょっとやってみようかなーってだけで』<br />
『そうなんですか&hellip;&hellip;』<br />
『キミも気が向いたんなら、来てくれる？』<br />
　確かにいつまでもここでじっとしているわけにはいかない。こうしてリームは妖精に誘われるままに洞から出たのだった。<br />
<br />
<br />
■妖精の小さな花<br />
<br />
　それは本当にひっそりと咲いていた。森の中の落ちくぼんだ盆状の一角、木々の影に隠れるように咲く、薄い桃色の花。<br />
『もう妖精の姿を維持できないほどに弱っていてね。まぁ今日明日の命ってとこかな』<br />
『種が残せてるんなら、僕らもこんなことはしないんだけど、残念ながら種を残せてないんだよ』<br />
　そう言う妖精たちだが、口調はいたって気軽なものだ。世間話をするような雰囲気で、リームはどんな表情をしたものか迷ってしまう。<br />
『それで、どうすればいいんですか？』<br />
『一番いいのは、死体だね』<br />
「え゛」<br />
　リームは固まった。相変わらず気軽な調子で妖精は続ける。<br />
『動物の死体があると、フィードの流れががらっと変わるんだ。僕らにとっては良いことづくめさ。でも僕らは狩りができるほど強くないし、死体を運べるほど大きくもないし』<br />
『弱ってる動物を誘導するぐらいしかできないかなと思ってたんだけど、人間の魔法士さんが協力してくれるなら良かったね』<br />
『えーとつまり&hellip;&hellip;何か狩ってくる？』<br />
『うん、それでもいいし、あとはフィードの流れを何とかしてくれるならそれでもいいし』<br />
　何とかとはどういうことか。リームは目を閉じてフィードを観察した。土と水の黄緑色のフィード。確かに他よりも弱々しい気がする。リームは〈杯の雫〉を唱えた。水のフィードを集め、少量の水を手のひらの上に生み出す。<br />
『こういうことなら、できますけれど』<br />
『それはフィードを集めただけだよね？　流れは変わってないから意味がないよ』<br />
『もっと広い範囲からいろんなフィードを集めて、ここに固定してくれるんだったら役に立つかも』<br />
『ごめんなさい、おそらく無理です&hellip;&hellip;』<br />
　これ以上の量のフィードを扱うのは無理だったし、固定というのも全然分からない。魔法士と名乗ってしまったものの、まったくの役立たずだ。妖精たちに呆れた様子やがっかりした様子は見られなかったが、リームは自分で自分が情けなくなってしまった。<br />
『まぁ別にできなくても困るわけじゃないしね。僕らも気が向いたからって感じだから』<br />
　その時、がさがさと横の茂みが揺れ、何か黒い影がぬぅっと現れた。大きい。リームが見上げると、そこに立っていたのはつぶらな瞳の雑食獣ビアーだった。黒い毛皮に覆われた大きな体、太い腕には鋭い爪。雑食獣――つまり、肉食でもある。そして今は、秋である。<br />
『あ、丁度良いね』<br />
「よくないよ！？　私、こんなの狩れないよっ！？」<br />
　あくまで気軽な感じの妖精に、人間語で叫ぶリーム。妖精はたぶん意味を理解できなかったはずだが、笑顔で言った。<br />
『死ぬなら是非あの花のそばでよろしく！』<br />
「私のほうが！？」<br />
　妖精たちにとってはビア―も人間も「動物」ということ以外に大きな差はないようだった。<br />
　ざっ、とビアーが一歩前に進み出た。視線は真っ直ぐリームを見ている。牙の覗く口元からは涎が垂れているようだ。どうしよう。リームはビアーを見たままじりじりと後ろに下がった。視線を外したら襲われる予感がした。どうしよう。こんな大きな獣に対抗できる魔法なんて使えるはずがない。今のリームにできるのは、小さな光や火を呼び出すことぐらいだ。火、火か&hellip;&hellip;。<br />
　リームはビア―を睨みつけたまま、感覚を広げた。ぼんやりと感じる黄緑のフィードの中から、わずかな赤いフィードがある場所を探す&hellip;&hellip;たぶんそこは落ち葉や枯れ枝がある場所だ。リームは呪文を唱えた。かつてないほど集中して一音一音に命を吹き込む。<br />
　ぼうっと、リームのななめ後ろの地面が燃えた。落ち葉がパチパチとはぜる。ビアーの視線が逸れたのを感じて、リームは炎のそばに走った。たき火ほどの大きさの炎の後ろにまわり、何か松明代わりになる枝のようなものはないかと探したが、あいにく見つからなかった。<br />
　ビアーは火をおそれて近づかなかったが、そこから離れようともしない。火が消えるのを待っているのだろうか。確かにそう長いこと火は維持できないだろうし、火から離れて逃げようものなら、すぐに追いつかれてしまうだろう。ああ、結局どうにもならない。やっぱり役立たずだ。ここでビアーと森の木々の栄養になってしまうのだろうか。きっとフローラ姫が泣いてしまう。<br />
　びゅうと風が吹いた。リームは火が消えないかとひやりとする。その耳にくすくすと笑い声が届いた。<br />
『うふふ、だめよ、リームちゃん。こんなところをうろうろしてちゃ』<br />
『偉大なる大樹の友が心配するでしょう』<br />
　風の精霊がふわりとリームの髪をかき混ぜた。ラングリーの塔の近くで見かけた精霊と同じような気もするし違う気もする。顔かたちは異なるはずなのに印象が似ていて、リームにはあまり見分けがつかなかった。<br />
『た、助けに来てくれたんですか？』<br />
『そうかもしれないわね』<br />
『違うかもしれないわね、くすくす』<br />
『ティナかラングリーを呼んできてくれるだけで、すごく助かります』<br />
『それには及ばないわ』<br />
『それをする立場にないわ』<br />
『でもあれをなんとかするくらいはできるかもね』<br />
『お腹をすかせたビアーさん、これは餌ではないのよ』<br />
　すいっと、半透明の風精霊は空中を泳ぐようにビアーに近づき、くるくるとその周囲を回った。ビアーはぐるると唸っていたが、しばらくしてリームとは逆方面に去っていった。リームはそれを見送って、深く深く息をついた。座りこんでしまいそうだったが、なんとかこらえた。<br />
『ありがとうございます&hellip;&hellip;』<br />
『ふふふふ、あとは彼にお任せね』<br />
『お呼びではない可哀相な彼ね、くすくす』<br />
　風精霊はつんつん、とリームの頬をつついたあと、空に溶けるように消えてしまった。結局、助けに来てくれたということなんだろうか。風精霊の考えていることは本当に分からない。ふと見ると、先程の妖精がたき火を見ていた。<br />
『これは使えるかもしれないね』<br />
『死体ほどじゃないけどね。この灰もらっていいよね？　何か使う？』<br />
『いいえ、使いませんよ。どうぞ』<br />
『ありがとう！』<br />
　あの花のそばで死んでね、と笑顔で言ったことを何一つ気にしていないらしい彼らは、根本的に人間とは違う考え方をする生き物だった。精霊も妖精も、言葉は習えてもその心までは習えない。<br />
　ざくざくと草を踏む音が聞こえて、リームはびくっと振り返った。今度の足音は黒い獣ではない。ずっと小柄な黒いローブ姿だった。<br />
「リーム、こんなとこにいたのか！　何してたんだ？」<br />
「ミハレット」<br />
　普通につぶやいたはずだったのに、自分の声が震えているのを聞いて、リームは口元を押さえた。目の前がにじむ。気恥かしさと悔しさにリームは奥歯を噛んで、ミハレットから顔をそむけた。<br />
「お、おい、リーム？」<br />
　駆け寄ってきたミハレットが、白いハンカチを差し出してきた。ローブや髪形だけでなく所持品まで同じとは、こいつはどこまで師匠になりたいのか。リームは可笑しくなってしまって泣きながら笑った。<br />
「大丈夫だから、ごめん。ありがと」<br />
「本当に大丈夫なのか？　何かあったのか？」<br />
「ううん、大丈夫。ミハレット、私を探しに来てくれたの？」<br />
「そうだ。フローラ様が心配なさってるぞ」<br />
「フローラ様が&hellip;&hellip;あのさ、私のこと、何か聞いた？」<br />
　そっとミハレットの表情をうかがう。心配そうな表情の他は、特に何も変化は見られない。<br />
「あぁ。フローラ様の養子候補だったそうだな。それで師匠の弟子になるキッカケになったんだろ？　ラッキーだったなぁ。ついでに養子になれば良かったのに。まぁ魔法士を目指すんだったらストゥルベル家の跡継ぎは面倒だな。それは分かる」<br />
「でしょ？　分かるよね？　そうなの、面倒なんだよっ」<br />
「でも、フローラ様の養子ってことは、ほぼ師匠の養子みたいなものじゃないか！　いいなぁ、師匠の養子！　オレもできることなら師匠を父上と呼びたい！　ああ今度呼んでみてもいいだろうか！？　絶対蹴飛ばされるけど！」<br />
　力説するミハレットの姿に、リームは分かってもらえたかもしれないという淡い気持ちを、きれいさっぱり吹き消されてしまった。涼しい秋風が吹き抜ける。<br />
　でもどうやら、自分がフローラ姫の実の娘だという&hellip;&hellip;いや、かもしれないという話は聞いていないようだ。<br />
「もしかして、養子の話がもう一度あがってきてるから逃げたりしたのか？　だめだぞ、逃げたりしないで嫌なら嫌とちゃんと言わなきゃ伝わらないからな」<br />
「そんなこと分かってるよ」<br />
　似たようなことを前も言われた気がする。そんなに自分は逃げてばかりだろうか？　&hellip;&hellip;そうだな、逃げてばかりだ。リームはひとつ頷くと、ミハレットのほうに向きなおった。<br />
「あのね。落ち着いて聞いてほしいんだけど、実は、私&hellip;&hellip;」<br />
「なんだ？」<br />
「&hellip;&hellip;私は&hellip;&hellip;」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;か、帰り道、分からなくなっちゃったんだけど、どっちかなっ！？」<br />
「あぁ、迷子だったのか。やっぱりな。そんなことだろうと思ったよ。ほら、こっちだぞ」<br />
　駄目だぁぁぁっ！　言えないっ！<br />
　リームはミハレットの後ろを歩きながら心の中で叫んだ。言えない。なんで言えないのか自分でも分からない。リームは悔しくなって、また目尻に涙をにじませた。今絶対振り返るなよ、とミハレットの背中をにらみながら。<br />
<br />
<br />
■サリタの花咲く森で<br />
<br />
「お待たせしてしまって本当にすみませんでした」<br />
「いいのよ、リーム&hellip;&hellip;でも驚いてしまったわ。何か理由があったの&hellip;&hellip;？」<br />
「おじさ&hellip;&hellip;ラングリー師匠の顔が気に食わなかったので」<br />
　ミハレットに怒涛のごとく文句を言われるのが分かっているので、呼び方を言いなおす。当の腹黒タヌキはにやりと笑い、確かにこの表情が嫌だったのは嘘じゃない、と、リームは思いながらラングリーをにらみつけた。<br />
　サリタの花畑の中央には、白いテーブルセットに座る五人と、小さなワゴンのそばに控えている侍女数人。琥珀色のお茶は香り高く、テーブル中央に用意された焼き菓子はナッツがたっぷり使われていた。<br />
「あらまあ、またケンカでもしたの&hellip;&hellip;？」<br />
「師匠と弟子なんてケンカがつきものさ」<br />
「そうなんですか！？　オレ、ケンカしたことないですよね？　つきものなんですか？　したほうがいいんですかっ？」<br />
「まぁお前の場合はケンカにならんからなぁ」<br />
「だめよ、ラングリー。また声を出なくする魔法なんてかけたら、可哀相でしょう&hellip;&hellip;」<br />
　涙をにじませて諌めるフローラ姫の言葉に、ティナがのんびりお茶を飲みながら言う。<br />
「そんなことしてたんだ&hellip;&hellip;ミハレットくん、がんばるねー」<br />
「いえっ、オレとしては一生あのままでも良かったんですよ！　師匠の弟子にしてもらえるんだったら声がでないことくらいなんでもなかったです！」<br />
「はっはっは、どうですこの面倒くささ、すごいでしょう。ティナ殿に一匹くれてやりたいくらいですよ」<br />
「いやー、遠慮しておくかなー」<br />
　紫色の花が揺れる森のお茶会に笑い声が響く。リームは少し目をふせて琥珀色のお茶を一口飲んだ。<br />
　ふわっとフローラ姫が優雅に立ちあがった。するするとリームのそばに近づいて、突然横から抱きしめた。<br />
「フ、フローラ様っ！？」<br />
「元気ないわね、リーム&hellip;&hellip;ぐすっ。大丈夫よ、ケンカなんてすぐ仲直りすればいいのよ」<br />
「そーだぞぉ、リーム。仲直りしよう、仲直り」<br />
　満面のにやにや笑いという表現もおかしなものだが、そうとしか表現できないラングリーに、リームはフローラ姫の腕の中から呪いの視線を送った。<br />
「うーん、お似合いだと思うけれど、こればっかりはリームが決めることだしなー。確かにストゥルベル家はなぁ&hellip;&hellip;」<br />
　ミハレットのつぶやきにティナが尋ねる。<br />
「エイゼル国王に王子が生まれた今でも厄介なの？」<br />
「公爵家ですから。オレの家でさえかなり面倒なんですよ。オレは兄が何人もいますからだいぶマシですけれど。フローラ様にも他に跡継ぎがいらっしゃれば別なんでしょうけれどね」<br />
　それを聞いて、ラングリーはお茶のカップを手に取りながら、何気なく言った。<br />
「たぶんそろそろだと思うんだがな。フローラ、体調はどうだ？」<br />
「まだ分からないわ。あと二週間くらいすればはっきりすると思うけれど&hellip;&hellip;」<br />
「えっ」<br />
「え？」<br />
「あぁ」<br />
　三人の視線がフローラ姫に集中する。フローラ姫は秋咲きの薔薇のように微笑んで、腕の中で固まる娘にささやいた。<br />
「またはっきりしたらお話するわね」<br />
　雲間から柔らかい日差しが降り注ぎ、森の木々を通り抜けた風はどこか甘い匂いを運ぶ。実りの秋はこれから深まる季節だった。<br />
<br />
<br />
―　雑貨屋ラヴェル・ヴィアータ４　　　終　―]]>
    </description>
    <category>■雑貨屋[小説本編]第４話</category>
    <link>http://tirakatta.blog.shinobi.jp/%E2%96%A0%E9%9B%91%E8%B2%A8%E5%B1%8B-%E5%B0%8F%E8%AA%AC%E6%9C%AC%E7%B7%A8-%E7%AC%AC%EF%BC%94%E8%A9%B1/%E9%9B%91%E8%B2%A8%E5%B1%8B%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%BF%EF%BC%94%EF%BC%8D%EF%BC%93</link>
    <pubDate>Fri, 19 Jul 2013 16:33:59 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">tirakatta.blog.shinobi.jp://entry/72</guid>
  </item>
    <item>
    <title>雑貨屋ラヴェル・ヴィアータ４－２</title>
    <description>
    <![CDATA[■雑貨屋の『不思議』<br />
<br />
「ティナ、お待たせしました！　ちゃんと見つけましたよっ」<br />
　得意げな顔をして執務室に入ってきたのはリームだった。右手には金属の輪でできた魔法具を持っている。<br />
　中庭の端から端まで、少しずつ移動しながら周囲のフィードをじっくり観察して、やっと見つけ出したのだ。黄と緑と青のフィードがふわりと混ざりあいながら流れるバラの生垣の中、規則正しく輪を描く金朱色のフィード。生垣に手を突っ込んで取り出して、刻まれた魔法文字を読んでみたが、まだ仕組みは全然分からなかった。それでも無事見つけたのだから課題はクリアだ。<br />
「おー、すごいじゃない。やったわね」<br />
「えへへ、ティナが教えてくれたおかげですっ」<br />
　リームの後に続いて、ミハレットが納得いかない表情で入ってきた。<br />
「師匠、すみません！　今回は油断しました！　がっ！　次こそは！　オレが先に見つけてやりますっ！！！」<br />
「そうかそうか、まぁがんばれよ」<br />
　ラングリーはかなり適当に応じるが、ミハレットはそれでも嬉しいらしい。キラキラした瞳で真っ直ぐラングリーを見て、はいっと元気に返事をした。<br />
<br />
　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　＊<br />
<br />
　雑貨屋に帰宅したのはすっかり暗くなった八の刻だった。空間移動の紫色の光が消えて、ティナが天井付近の魔法具を見上げると、ふっと魔法の明かりが店内を照らした。リームが明かりをつける時は〈小さき光〉の呪文を唱えるのだが、ティナは呪文を使わない。ティナのイヤリングにはどれだけの量の呪文が組み込まれているのだろうか。<br />
「お腹すいたでしょ？　晩御飯用意するね」<br />
「あっ、ティナ、私も手伝います！」<br />
　二人でカウンター裏手の台所へむかう。リームが〈灯の火〉でかまどに火をつけ、ティナが食糧庫を覗いて芋と卵を出した。<br />
「リーム、これ切っておいてくれる？　確かハーブもあったはず&hellip;&hellip;」<br />
「はい、分かりました」<br />
　ティナが戸棚を探している間に、リームは水甕から水を汲んで芋を洗い、包丁で皮をむきはじめる。<br />
　と、リームは眼をまるくして手を止めた。本来なら白いはずの芋の中身が鮮やかなオレンジ色をしていたのだ。<br />
「あれ？　なんかこのお芋変わってますね。中、オレンジ色ですよ。初めて見ました」<br />
「あ、ほんとだ。失敗したなー。でも食べられるんじゃない？」<br />
「うーん、どうでしょう&hellip;&hellip;」<br />
　リームは芋の匂いをくんくんと嗅いだりしてみたが、ふとティナの言葉に違和感を感じた。<br />
　失敗したな、と言っていた。変な芋を買ってしまって失敗した、という意味だろうか。しかし食料品の買い物はほとんどリームの役目だ。リームが失敗したというようには聞こえなかったが&hellip;&hellip;。そういえば、この芋はいつ買ったものだろう？　ここしばらく、芋は買っていないはずだ。<br />
「このお芋、ティナが買いました？」<br />
「え？　あぁ、うん。そうそう、私が買ったやつ。ごめんね、変なお芋買っちゃって」<br />
　ティナが買ってきた、変なもの。そういうものがここには沢山あるはずだ。正確に言うなら、店頭に。<br />
「&hellip;&hellip;えーと、ティナ、このお芋もしかして、雑貨屋の商品と同じ方法で手に入れました？」<br />
「あー、まぁ、そんな感じ」<br />
　へへへと笑って誤魔化すティナ。先程の「失敗した」は、仕入れに失敗したということだろうか。リームは何か引っ掛かるものを感じていた。<br />
　溶ける鉄鍋や踊るホウキと同じ手段で手に入れたもの。雑貨屋の不思議の原因である、奇妙な商品と同じ――。<br />
　『青』が雑貨屋を調査に来た、あの日の晩を思い出す。<br />
『それなりのものをいただかないと』<br />
『雑貨屋の不思議を背負える何かですよ』<br />
　ラングリーの言葉に、ティナは答えていた。<br />
『分かった、考えておくわ』<br />
　――雑貨屋の不思議はラングリーが背負うことになっている。<br />
　おそらく、あの『巻物』に記された魔法によって。<br />
　リームはオレンジ色の芋から視線をあげて、ティナのほうを見た。<br />
「もしかして、雑貨屋の商品って、ティナが魔法で作ってるんですか？」<br />
　ぴた、っとティナの動きが止まった。戸棚から出したハーブを手にしたまま、そーっとリームを振り返る。リームの表情を確認して、何故かほっとしたような微笑を見せた。<br />
「それって&hellip;&hellip;ラングリーから聞いたの？」<br />
「いいえ。でもそうなのかなーって」<br />
「そうだねぇ、うん。まぁ、そうかな？」<br />
「違うんですか？」<br />
「ち、がわない、かな。うん。そう。雑貨屋の商品は私が作ってる」<br />
　とうとう認めた。<br />
　特別な仕入れ先、なんて言っていたが、自分の魔法で加工した商品だったのだ。魔法士だということは分かっていたのに、何故隠す必要があったのだろう。<br />
「やっぱりそうなんですね。最初からそう言ってくれればいいじゃないですか」<br />
「う&hellip;&hellip;ご、ごめんね。リームが魔法士の弟子になるなんて思ってなかったからさ。ほら、普通の人にとって魔法士って、ちょっと得体がしれないじゃない？」<br />
「そんなことないですよ。強くてかっこよくて皆の憧れですよ！」<br />
　リームが脳裏に思い浮かべるのは孤児院に訪れた『青』の人の姿だ。小さい頃だったので記憶があいまいだが、ショートカットの女性だったように思う。ある子を狙ってやってきた数人の悪い魔法士を鮮やかな光の渦であっという間に倒してしまった正義の味方。<br />
「そういう風に思ってくれる人はありがたいんだけどね&hellip;&hellip;」<br />
「ティナも『青』になればいいんですよ。すごい魔法技術があるんですから。もし『青』が嫌いなら宮廷魔法士とか、魔法を使う仕事は沢山あると思うんですけど&hellip;&hellip;なんで雑貨屋なんですか？」<br />
　たぶん魔法を使いたくないわけじゃないんだろう。いつも気軽に空間移動の魔法で送り迎えしてくれるし、なにより魔法で商品を作っているのだから。『魔法士』として扱われることが嫌なのだろうか？　だったら、魔法で作ったりしないで普通に商品を仕入れて店をやれば、不思議な雑貨屋にはならなくて、『青』に目をつけられたりもしなかったのに。<br />
「うーん、私もいろいろ考えたんだけどね。魔法士でいるとやっぱり『青』と関わらなきゃいけなくなるし、かと言って閉じこもってると飽きちゃうし。街で普通に暮らしながらってのが丁度良いかなって」<br />
「普通に暮らしながら&hellip;&hellip;何をしてるんですか？」<br />
「えーと、魔法の、練習？」<br />
「あ、そっか。なんだ、そうなんですね」<br />
　リームはやっと少し納得できた。自分と同じで、ティナもまだ修行中なのだ。もちろんレベルの差は比べものにならないんだろうけれど。練習で作った商品だから、あんなヘンテコなものができあがってるわけだ。<br />
「でも失敗作を売るのはどうかと思いますよ？」<br />
「いや失敗作じゃないのよ、ほんとに成功したと思って店に並べてるの。でも後からボロがでてくるものが多くて&hellip;&hellip;まだまだ未熟だね」<br />
　ティナは皮をむきかけのオレンジ芋を手にとって眺めながら肩をすくめる。ごく一部の魔法士しか扱えない空間移動の魔法すら簡単にこなしてしまうティナが自分と同じ修行中だと思うと、リームはなんだか親近感がわいてきた。<br />
「大丈夫ですよ、きっと失敗せずできるようになります！　私もがんばって勉強しますから、ティナも一緒にがんばりましょう！」<br />
「ふふふ、ありがと。うん、がんばるよ」<br />
　ティナはにっこりと笑ってそう言った。オレンジ芋をリームに返して、鍋の準備をする。<br />
「あ、店のものを魔法で作ってるって、他の人に言わないでね？　ラングリーは知ってるけど、他は誰にも&hellip;&hellip;フローラさんやミハレットくんにも言わないように、くれぐれもお願いね」<br />
「はい、分かりました」<br />
　きっとまた『青』の目にとまるのが嫌なのだろうと、この時はまだ、リームはそう思っていた。<br />
<br />
<br />
■『不思議』な猫の置物<br />
<br />
　閑古鳥が鳴くことは分かっていても開店時間はやってくる。リームは今日も魔法語教本と共に店番だ。<br />
　ふと顔をあげると、通りに面した窓から小鳥が入ってきた。地味な茶色のどこにでもいる小鳥だが、リームにはよく見憶えがあった。<br />
「あれ？　腹黒オジサンの鳥だ」<br />
　次回のことかな？　と思いながら、リームが手を伸ばすと、いつものように小鳥はその手にとまった。<br />
『よう、リーム。勉強は進んでいるか？』<br />
「もちろんです。次もミハレットには負けませんよ」<br />
『ふふふ、ミハレットのやつもかなり必死でやってるからな、油断はできないぞ。ところで、ティナ・ライヴァートはいるか？』<br />
「いえ、今居ないんです。ティナに用事ですか？」<br />
『あぁ。いや、急ぎじゃないんだ。では、これを渡しておいてくれ。よろしくな』<br />
　そう言うと、茶色い小鳥は光を発しながら封書に姿を変えた。宛名はティナ・ライヴァート殿となっている。<br />
　それから数刻経って（もちろん客は一人も来なかった）、ティナが階段をおりてきた。<br />
「リーム、そろそろ昼ご飯にしよっか」<br />
「あ、ティナ。少し前にオジサンから手紙が届きましたよ」<br />
「手紙？　私に？　なんだろ」<br />
　ティナが封を開けて手紙を読む。しかし中を読んでもどこか不思議そうな表情のままだった。<br />
「んー、よく分かんないな。でもとりあえず行ってあげようかな。リーム、私、ご飯食べたらラングリーんとこ行ってくるね。店番お願いできる？」<br />
「はい、もちろんです。私のお仕事ですから。何をしに行くんですか？」<br />
「それが分からないんだよね。詳しいことは全然書いてないの。ま、話だけでも聞いてあげようかなと思って。いろいろお世話になってるしね」<br />
　こうして昼ご飯を食べた後、ティナは出かけ、再びリームは店番を続けた。<br />
　ティナが呼ばれたのは、以前の地下魔法陣での魔法のことかな？　とリームは思う。見上げるほど巨大な光る石を思い出す。フィードを見ておけば良かったと今になって思うけれど、あの時はまだその発想がなかった。あの時ティナが現れたのは、あれがあの『巻物』に関連した魔法だったからだろうか。<br />
　結局あれは何だったんですか？と聞いたことはあるが、リームにはまだ難しい魔法だから、もうちょっと魔法のこと分かるようになってから教えてあげるね、と言われてしまった。確かに今聞いても全然分からない気がする。もっともっと勉強して、早く一人前の魔法士にならないと、『青』なんてさらにその先の先なのだから。<br />
<br />
<br />
　ティナが帰ってきたのは七の刻だった。雑貨屋はすでに閉店してあり、リームは夕食の準備を終えて魔法語教本を読んでいた。<br />
「ただいまー」<br />
「おかえりなさい、ティナ。おじさん、何の用事だったんですか？」<br />
　リームが尋ねる。ティナはとっても楽しそうな笑顔だ。<br />
「うん、新しい魔法陣の試験を手伝ってきたって感じかな。いやぁ、やっぱりラングリーってすごいね。私も魔法に詳しい知り合い多いけど、技術力では全然負けてない」<br />
　気に食わない腹黒宮廷魔法士を手放しに褒められて、リームはあまり素直に喜べなかった。本来ならば、魔法を教えてもらうにしても『青』に推薦してもらうにしても、有能な魔法士であることはありがたいはずなのだが、根本的に気に食わないという感覚はどうしても拭えない。<br />
「へぇ&hellip;&hellip;それって例えば、王妃様みたいな竜族とかと比べてもですか？」<br />
　なんとなく冷たい言い方になってしまった。しかしティナは気づいていないようだ。少し興奮ぎみの弾む笑顔で応える。<br />
「そうね。竜族って物理的な力も魔法的な力もすっごいけど、だからこそ小手先の技術でなんとかしようって発想がないみたいなんだよね。それは精霊族や妖精族もそう。あのへんは呪文なんか使わなくても自分の属性に応じたフィードが扱えるから、魔法を使うこと自体滅多にないし。光族は音楽にしか興味ないし、闇族は武術にしか興味ないし」<br />
「&hellip;&hellip;って、ティナ、どんだけ知り合いがいるんですかっ？」<br />
「いやまぁ、いろいろあってね。あっ、夕食できてるんだ。ありがと」<br />
　ティナがカウンターの椅子についたので、リームもそれに並んだ。宮廷魔法士と高度な魔法技術について語り合え、様々な種族の知り合いがいて、見た目通りの年齢じゃなさそうな雑貨屋店主。でもリームにとっては恩人で仲間で家族だ。<br />
「心配しなくても、私はティナが人間じゃなくったって気にしませんよ」<br />
「んふふ、ありがと。でも私は人間だよ、一応ね」<br />
「一応&hellip;&hellip;？」<br />
　疑問符を浮かべるリームを見て、ティナはニヤっと笑った。<br />
「私も、リームが宮廷魔法士の娘でも公爵家のお姫様の娘でも気にしないよ」<br />
「娘　じ　ゃ　な　い　ですっっ！！」<br />
　不思議な雑貨屋ラヴェル・ヴィアータに、今日も楽しげな笑い声が響く。ティナとリームにとっては不思議でも奇妙でもない普通の日常だった。<br />
<br />
<br />
　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　＊<br />
<br />
　秋晴れの昼下がり。通りに面した雑貨屋の窓から、リームより一、二歳小さな少年が数人こそこそと店内を覗いている。初めてのことではない。とんでもないものが売られているという怪しい雑貨屋ラヴェル・ヴィアータは、レンラームに住む少年達にとって、ちょっとした肝試しスポットでもあった。<br />
　「早く行けよ」「分かってるって」などとやり取りが聞こえた後、一人の少年がそぅっと入口から入ってきた。<br />
「いらっしゃいませ？」<br />
　カウンターの椅子に座って魔法語教本を読んでいたリームが声をかける。緊張で無表情になっている少年は、口の端を持ちあげてなんとか愛想笑いをしようとしているようだった。そろそろと足元が崩れないか確かめるかのような足取りで店内を進む少年。テーブルや棚に並ぶ商品を得体のしれないものを見るような目で見ている――まぁ中には確かに得体のしれないものも混ざっている訳だが。<br />
　リームのいるカウンターの前までくると、少年は入口のほうを振り返った。入口とその隣の窓からは、他の少年達が目線で急かしている。少年はごくっとつばを飲み込んで、リームに話しかけた。<br />
「あ、あの&hellip;&hellip;銅貨三枚で買えるもの&hellip;&hellip;なんでもいいんで&hellip;&hellip;」<br />
「銅貨三枚？　あったかなぁ&hellip;&hellip;ちょっと待ってね」<br />
　遊び半分でもお客様はお客様。リームは魔法語教本を閉じると、カウンター横から店内に出た。銅貨三枚というと屋台の揚げドーナツひとつくらいの値段だ。装飾品はもちろん、鍋や食器などの生活用品にも足りない。値札を見ながらリームが店内を一周する間、少年はカウンター前に立ったまま視線でリームを追っていた。<br />
「あ、あった。これなんかどう？」<br />
　リームが見つけたのは親指ほどの小さな置物だった。黄褐色の粘土を焼いたような質感で、かなりデフォルメされた猫の形だ。座っているものや寝転んでるものなど色々ある。あまり上手い出来ではないが銅貨三枚だとこれくらいだろう。<br />
「うん、なんでもいい&hellip;&hellip;」<br />
「色々あるから選ぶといいよ」<br />
　少年はおそるおそるリームに近づいて、棚に並んでいる小さな猫の置物を眺めた。ほどなく、座っている一匹に手を伸ばす。<br />
「ニャー」<br />
「わぁっ！？」<br />
「えっ！？」<br />
　驚いた少年は猫の置物から手を離し、こぼれ落ちた置物は店の床へと落下する。<br />
　あぁ、割れる！<br />
　しかし、置物はカッ！と音を立てて石の床にぶつかっただけで、割れずにそのまま転がった。<br />
　少年とリームの視線に晒されて、転がった猫の置物はただ沈黙するのみ。<br />
「&hellip;&hellip;い、今、な、鳴いた&hellip;&hellip;」<br />
「うん&hellip;&hellip;」<br />
　リームは棚に残る別の猫の置物にそっと触れた。何も起こらない。意を決して、転がったほうの置物に手を伸ばす。<br />
「ニャーン」<br />
「ああああやっぱり呪いの猫人形っ！？」<br />
「うわあああっ！！」「呪われた！　テッドが呪われた！」「逃げろぉぉ！！」<br />
　店の入口で様子を見ていた少年達が一斉に逃げ出す。<br />
「ま、待ってよぉぉっ！！」<br />
　店の中にいた少年も、命からがら逃げ出すように店を駈け出していった。<br />
　静けさだけが残された店内に一人立つリーム。自分の手にある猫の置物をもう一度見た。ひっくり返して全面を確認する。魔法文字は見あたらない。動く様子はない。置物の頭を指先でなでた。<br />
「ゥニャアー」<br />
　鳴いた。<br />
　いや、鳴き声がするだけで、置物の口元が動いたりする様子はない。溶ける鉄鍋、踊るホウキと同様の、不思議な雑貨屋の『不思議』が発現してしまったようだ。<br />
　少年にはちょっと可哀相なことをしてまったな。リームはそう思いながら、鳴く猫の置物を持ってカウンターに戻った。<br />
　ティナが魔法で作っているという雑貨屋の商品――そしてたまにある失敗作。魔法で品物を作るというのはどうやっているのだろう。例えば、この猫の置物だと、粘土から猫の形を作るのは自分の手でやったほうが早いように思う。焼きあげる工程を魔法でやってるのだろうか？　あとは粘土の質や色を魔法で調整しているとか&hellip;&hellip;？<br />
　リームは目を閉じて精神を集中し、感覚を広げた。周囲のフィードを感じとる。猫の置物のフィードはごく淡い黄色で、普通の土や陶器と比べて何も変わりはない。リームは目を閉じて集中を維持したまま、そっと猫の置物に触れた。ニャアと鳴き声が聞こえる。フィードに変化はない。何か魔法が発動したようにはまったく見えなかった。ただ、自分が未熟だから感じ取れないだけかもしれないけれど&hellip;&hellip;。<br />
　そんなふうにリームが猫の置物を観察していると、二階から扉の開閉する音と足音が聞こえた。ティナが帰ってきたのだ。ティナの部屋は結界が張られているらしく、フィードの流れが遮断されていて空間移動の魔法の際に発生する紫色のフィードが見えない。<br />
「おかえりなさい、ティナ」<br />
　ティナが階段を下りてくるのを見ながら、リームは言った。<br />
「うん、ただいま」<br />
　応じるティナを見て、リームはあれと思った。なんだか元気がない。表情はいつも通りほほ笑んでいるが、なんとなくいつもと雰囲気が違う。<br />
「ん？　その猫の置物、気にいった？　あんまり可愛くないかなと思ってたんだけど」<br />
　リームの手元を見ながら言うティナ。いつも通りと言えばいつも通り。少し声に元気がないだけだ。ちょっと体調でも悪いのかな？とリームは思った。あるいは出かけた先で何かあったのだろうか。いつもティナが出かける時に何をしに行くのかとはいちいち聞かないが、たまに聞いた時には友人に会いに行くという返答が多かった気がする。<br />
「いえ、この猫の置物がですね」<br />
　リームはちょいちょいと指先で猫の置物をつつく。<br />
「ニャーン」<br />
「うわあ、鳴いちゃうんだ。これはよくないね」<br />
「どうやって作ったら鳴くようになるんですか？」<br />
「それが分ってたら失敗しないよ」<br />
　ティナはため息をついて猫の置物を持ちあげた。ニャーと手の中で鳴く置物をじっと見る。<br />
「&hellip;&hellip;そーですか。難しいですね」<br />
　ぽつりとつぶやいたそれは明らかにリームに向けられた言葉ではなく、リームは首をかしげた。<br />
「ティナ？」<br />
「あ、ううん。なんでもないの。見つけてくれてありがとね。片づけとくわ」<br />
「はい&hellip;&hellip;ティナ、なんだか元気ないですね？　何かあったんですか？」<br />
「えっ、そ、そう？　そんなことないけど」<br />
「じゃあ心配事でもあるとか」<br />
「いや、そんな&hellip;&hellip;」<br />
　ティナは視線をナナメ下にさまよわせて、しかし頭の霧を振り払うように軽く首をふると、にっこりと強気の笑みをリームに向けた。<br />
「大丈夫、心配しないで。いろいろと気にしないのが私の良い所なんだった。うん。世の中なるようになるもんよね。ならないんだったらするしっ。さって、晩御飯の準備でもしよっか」<br />
　よく分からないが、ティナの中で何か整理がついたのだろう、元気になってくれたことにリームは嬉しく思った。ティナが『気にしない』ことを選んだ事柄を、もしラングリーが知ったなら、またしても長い長いため息をつくだろうことをリームは知る由もなかった。<br />
<br />
<br />
<br />
■風精霊と魔法士の弟子<br />
<br />
「よぉーーっし！！　リーム！！　今回はオレの勝ちだっ！！」<br />
　握りこぶしをあげて叫ぶミハレットの手には小さな紙片があった。よく見ると何やら魔法陣が描かれている。今日の課題の魔法具だ。<br />
　しまった、先を越された、と、リームは唇を噛んだ。<br />
「どこにあったの？」<br />
「上だよ」<br />
「上って&hellip;&hellip;浮いてたの！？」<br />
「そう！　塔よりも高いところだったけど、〈そよぐ風〉で触れただけで落ちてきたぞ。そういう風に作ってあったんだな。さすが師匠！」<br />
「それってずるくない？　どこまでが中庭の範囲なのよ」<br />
　リームは夕焼けから紺色に変わりつつある空に目と意識を向ける。と、青色に感じられる風のフィードの流れが固まっている部分があった。目には見えないけれど、何かいる。<br />
「ねぇ、ミハレット、あれ&hellip;&hellip;」<br />
「ん？　あぁ、風精霊だろ。時々師匠の様子を見に来るんだ。たぶん『青』の使いじゃないか？」<br />
　見られていることに気がついたのか、目に見えない２つの気配が二人の元に降りてきた。フィードの固まりとしか感じられなかったものが、目にも見える形をとる。半透明の女性の姿。ひらひらした服と長い髪、少し幼くみえる表情は楽しげだ。<br />
『ミハレットくんでしょ？　で、リームちゃん。くすくすくす』<br />
『魔法のお勉強ね？　がんばってね。うふふふ』<br />
　習いたての精霊語をなんとか理解する。名前を知られていることにリームは驚いた。もし『青』の使いならきちんとしなければ。リームはしゃきっと表情をあらためた。<br />
『青の人の使いなのですか？』<br />
『さぁ？　どうかしら？』<br />
『どうかしらね？　分からないわね？　くすくすくす』<br />
　がんばって精霊語を使ってみたが、風精霊たちはまともに答えるつもりはないようだ。でもちゃんと伝わったらしいので、リームはちょっと嬉しかった。<br />
「別に『青』の使いだからってオレらのことはわざわざ報告したりしないと思うぞ。聞いても何も答えないけどな。ただでさえ風精霊ってやつは捉えどころがないやつが多いし」<br />
『私たちが人間語を理解しないとでも思ってる？』<br />
『うまいこと言ったとでも思ってる？　風だけに』<br />
『とらえられない。うふふふふ』<br />
　くるくるとミハレットの周囲を飛び回る二人の風精霊。ミハレットは少しうざったそうだ。<br />
「こんなことしてる場合じゃない、早く師匠に報告して褒めてもらわなくては！　師匠、師匠ーーっ！！」<br />
　ミハレットはローブの裾をひるがえして全速力で駆け出していき、リームも塔へ戻ることにした。今日も遅くなってしまったので、ティナが待ってるはずだ。ミハレットに負けたのは悔しいが、事実なので仕方がない。次は絶対に負けないんだから、と心に誓った。<br />
　そんな二人を見ながらくすくすと笑う風精霊たちはすうっと黄昏の夜空に溶けていった。<br />
<br />
　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　＊<br />
<br />
　窓の外では風精霊たちが弟子たちにちょっかいを出している様子が見える。課題は見つけられたようだ。もうすぐ執務室に戻って来るだろう。<br />
「あのさ、実は&hellip;&hellip;」<br />
「軽率だと怒られました？　ご友人に？」<br />
「えっ、誰から聞いたの！？」<br />
「いいえ、そんなところだろうなぁと。何かやらかす前に処分しろとか言われませんでした？」<br />
「そっ、そんなこと&hellip;&hellip;言いかねない人もいるけど、たぶんその場合、私には言わずに&hellip;&hellip;」<br />
「そーですか。肝に銘じておきます。まぁ、命狙われるのは慣れてますから。ストゥルベル公に散々狙われましたからね」<br />
「いや、大丈夫よ！　たぶん&hellip;&hellip;ちゃんと、私が責任とるって、今度言っておくから」<br />
「俺が失敗した時にその責任をとってくださるんですか？　そりゃあ、ありがたいことで。世界の命運を背負うのは大変ですね？」<br />
「うん。ほんとなんか、大変。思ってたより大変」<br />
　しみじみとそう言われて、ラングリーは少し口をつぐむ。<br />
　階段をのぼってくる足音が聞こえた。<br />
　尻尾があればちぎれんばかりに振っているだろう褒めてくださいオーラをまとう一番弟子と、眉をしかめて次こそは負けまいと決意のオーラをまとう二番弟子の姿をありありと思い浮かべることができて、ラングリーは口の端に笑みを乗せた。<br />
<br />
]]>
    </description>
    <category>■雑貨屋[小説本編]第４話</category>
    <link>http://tirakatta.blog.shinobi.jp/%E2%96%A0%E9%9B%91%E8%B2%A8%E5%B1%8B-%E5%B0%8F%E8%AA%AC%E6%9C%AC%E7%B7%A8-%E7%AC%AC%EF%BC%94%E8%A9%B1/%E9%9B%91%E8%B2%A8%E5%B1%8B%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%BF%EF%BC%94%EF%BC%8D%EF%BC%92</link>
    <pubDate>Fri, 19 Jul 2013 16:33:25 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>雑貨屋ラヴェル・ヴィアータ４－１</title>
    <description>
    <![CDATA[<br />
■初秋のお茶会<br />
<br />
「ああああああ、なんて素敵なの&hellip;&hellip;っ！！！　とっても似合うわ、リームっっっ！！！」<br />
　予想通り号泣する人形のように可愛らしい姫君に、リームはもう慣れたものだった。侍女たちがハンカチを渡したり飲物を差し出したりして落ち着かせるのを見ながら、別の侍女がすすめるままにテーブルにつき、お茶を飲みながら見守る。<br />
　すっかり風も涼しくなり中庭にはバラも咲き始めてきた初秋の晴れの日。夏の暑い時期はストゥルベル城の屋内でひらかれていたお茶会だったが、今回のお茶会は庭でひらかれていた。<br />
　前回のお茶会で、ミハレットにローブを貰った話をぽろっとしたところ、是非着てきてほしいと泣いて頼まれたのだった。普通に話している間も半分くらいは泣いているフローラ姫なので今更という感じもするが、やはり涙ながらに頼まれると真っ向から断るのは気が引けてしまい、結局着てくるはめになってしまった。<br />
「ご、ごめんなさいね&hellip;&hellip;あんまり素敵だったものだから&hellip;&hellip;うううっ、リーム立派になって&hellip;&hellip;っ」<br />
「いえ、まだ魔法のひとつも教えてもらってないですから」<br />
「あぁ、そういえばミハレットくんに弟子として認められるまで教えてもらえないのだったわね&hellip;&hellip;魔法士になるのって大変なのね&hellip;&hellip;ミハレットくんもラングリーの弟子になる時はなんだか大変そうだったわ」<br />
　それについてはミハレット自身からも聞いたことがあった。なんでも何度か死にかけたとか&hellip;&hellip;本人の話なので誇大しているんだろうと思っていたが、城の使用人たちからも似たような話を聞くので、本当に死にかけたらしい。むしろラングリーが半殺しにしたらしい。それでも全力でラングリーに心酔するミハレットの思考回路は本当に理解できなかった。<br />
「でも、ミハレットくんはとっても良い子よね。ブルダイヌ家とは昔からお付き合いがあるから、小さい頃から知っているのよ。舞踏会でも妹さんたちの面倒をよくみてたわ」<br />
　ブルダイヌ家はクロムベルク王国の建国当時から存在する由緒正しい大貴族で、公爵家であるストゥルベル家と並ぶほどの規模なんだそうだ。そこまでは以前聞いていたが、ミハレットの兄妹のことは初めてきいた。<br />
「ミハレットって妹がいるんですか？」<br />
「えぇ。十人兄弟だったはずよ。ミハレットくんは六番目の子だったかしら&hellip;&hellip;えぇと、お兄さんが三人、お姉さんが二人、あと弟さんが一人に妹さんが三人ね」<br />
「よく知っていますね」<br />
「社交界で会う相手のことを知っておくのがお仕事のようなものなの。でも十人も兄弟がいたらきっとにぎやかでしょうねぇ」<br />
　孤児院で育ったリームはそのにぎやかさを想像することができたが、やはり貴族となると子供の頃から貴族らしくふるまうように教育されているのだろうか。おっとりゆったりした立ち振る舞いのフローラ姫を見ているとそうなんじゃないかなと思えてくる。でも、ミハレットはそうでもないか&hellip;&hellip;。<br />
　そんなことを考えていると、フローラ姫がなんだかそわそわしているようだった。侍女から渡されたハンカチのふちを意味なく整えたりしている。<br />
「フローラ姫、どうかしましたか？」<br />
「あ、あのね、リーム&hellip;&hellip;急にこんなこと言うのもなんだけど&hellip;&hellip;その、リームは弟や妹ができたら、どう思うかしら&hellip;&hellip;？」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;はぁっ！？　いるんですかっ！？」<br />
　ガタッと椅子を蹴って立ち上がってしまい、フローラ姫はびくっと身を引いて、今にも泣きそうに目をうるうるとさせる。リームは慌てて両手をふった。<br />
「ごめんなさい、そういうつもりじゃないんです。泣かないでください」<br />
「い、いいのよ&hellip;&hellip;そうよね、リームを孤児院に預けて親としての責任を放棄したのに、もうひとりだなんて酷い話よね&hellip;&hellip;うううっ」<br />
「あの。それで、いるんですか、いないんですか」<br />
　ピノ・ドミア神殿にそれらしい子はいただろうか。リームは自分の記憶をたどる。あるいは、今お腹の中に&hellip;&hellip;？　さめざめと泣き始めるフローラ姫の腹部をなんとなく見ながらリームは思った。見た目に変化はないが、もしかしているんだろうか。弟か妹。間違いなく父親はアレ。また神殿の孤児院に預けるんだろうか。でも、自分の時は未婚の子だったからという理由だったはずだ。今はもうすでに偽装ながらも結婚をしているわけだから、ここで育てられるんだろうか&hellip;&hellip;。<br />
　しかし、フローラ姫はハンカチで涙を拭きながら、ふるふると首をふった。<br />
「いいえ、まだいないわ」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;なんだ、そうですか。&hellip;&hellip;まだ？」<br />
　なんだか冷ややかな声音になってしまったことに、リームは自分で驚いた。そんなつもりじゃない。自分はフローラ姫が子供を産もうが関係ないはずだ。むしろストゥルベル家の跡継ぎができてくれたほうが何かと面倒くさくないはずだ。そうに決まってる。<br />
「うううっ&hellip;&hellip;ごめんなさい。確認して良かったわ&hellip;&hellip;やっぱりやめておくわね&hellip;&hellip;リームと仲良くできてるから、つい欲が出てしまったの&hellip;&hellip;」<br />
「いえ、違うんです。別に私は&hellip;&hellip;」<br />
　少し口ごもって、ぐるぐるする頭の中で自分の言いたいことを整理しながら、リームは泣き続けるフローラ姫を正面から見据えて言った。<br />
「あの、フローラ姫。もう一度言っておきますけれど、私はストゥルベル家の養子になるつもりはありません。ここには娘として来ているわけではありません。しいて言えば茶飲み友達くらいです。&hellip;&hellip;ですから、フローラ姫がお子様が欲しいと思われるのでしたら、お好きになさってください。私には関係ありませんので」<br />
　だめだ、まだ言葉にトゲが残っている。リームは自分でも分かっていた。でも、これ以上どう言えばいいのか。思考と気持ちの歯車がかみ合わなくて、リームは下を向いて唇を噛んだ。<br />
　ふわり、と花の香りがした。そっと頭に何かがふれる。――フローラ姫がそばに来て、頭をなでていた。<br />
「泣かないで、リーム&hellip;&hellip;ありがとう」<br />
　泣いているのはフローラ姫のほうじゃないか。そう思いながら、リームは両手で自分の目元をこすった。フローラ姫はいつも泣いてばかりで侍女に囲まれていてふわふわとして頼りないお姫様なのに、なんでこういう時だけ母親みたいな顔をするんだろう。息づかいを感じる距離で、リームはやっと聞こえるくらいの小さな声でつぶやいた。<br />
「&hellip;&hellip;私、わりと下の子の面倒みるの得意でした。フローラ姫は小さい子の面倒みるの初めてですよね？　お子様ができたら、あやしにきてあげます」<br />
「&hellip;&hellip;ありがとう。ごめんなさい、リーム&hellip;&hellip;」<br />
　背中にまわされたフローラ姫の両腕は細くて繊細で、目の前の首筋の白さなんて本当に人形のようだった。でも、人形と違って温かい。甘い花の香りは何故か安心する。記憶に残らないほど幼い頃、私はこの腕に抱かれたことがあるんだろうか。リームはフローラ姫の腕の中でそっと目を閉じた。<br />
<br />
　　　　　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　　＊<br />
<br />
　不思議な雑貨屋ラヴェル・ヴィア―タの閉店時間は六の刻。その時間が来る前から、カウンターにはすでに夕食の準備が整っていた。今日の夕食は、スリ魚のフライと青菜とウインナーのスープ、パンは固めのライ麦パンだ。ティナが閉店の看板を出すと、リームはひとりで食前のお祈りを済ませ、二人並んで夕食を食べ始める。<br />
「そもそも、子供を作る予定があるんだったら、私を養子にむかえようとする必要なかったじゃないですか」<br />
「やー、それは逆じゃない？　リームが養子になってたら、もうひとり子供をなんて必要なかったのかも」<br />
「あ、そっか&hellip;&hellip;っていうか、偽装結婚してたらＯＫなんだったら、なんでもっと早くしておかなかったのかとっ」<br />
「うーん、それも多分逆&hellip;&hellip;リームができたから慌てて偽装結婚したんでしょ」<br />
「責任感がっ、なさすぎるっ！　貴族ってこれだから！　毎年何人の子がピノ・ドミア神殿の孤児院に来てると思ってるんですか！」<br />
　ストゥルベル城のお茶会から帰ったあと、ティナにフローラ姫がもうひとり子供を欲しがっているという話をしたら、今までどこにあったのか不満が次々に湧いてでてきた。なんでフローラ姫の前では全然出てこなかったのか不思議でならない。本当ならフローラ姫にこそきちんと言ってやるべきことなのに。<br />
「&hellip;&hellip;ごめんなさい。ティナに言っても仕方ないですよね」<br />
　リームが言うと、ティナはにこにこしながら応えた。<br />
「いーのいーの。でも、兄弟かぁ～。私は一人っ子だから、ちょっと羨ましいな。リームはどっちかというと、弟のほうがいい？　それとも妹のほうがいい？」<br />
「弟でも妹でもないですから。私は養子にはならないんですからね。でもできれば、フローラ姫に似てほしいです」<br />
　父親になるだろうあいつには絶対似てほしくない。腹黒宮廷魔法士にそっくりの子供なんて、めちゃくちゃ気に触るガキだろうとありありと想像できる。<br />
「ふーん。でもリームはどちらかというとラングリーに似てるよね。いろいろ物怖じしないとことか」<br />
「似・て・な・い・で・すっっっ！！！」<br />
　全力で否定するリームを、ティナは楽しそうに笑って見ていた。<br />
<br />
<br />
<br />
■弟子の証<br />
<br />
「リーム、待ってたぞ！」<br />
「はいはい。で、今日は何をするの？」<br />
　もうお約束となってしまったやり取りをしながら、リームはかかえた魔法語教本を塔一階応接室のテーブルの上に置いた。<br />
　大げさにため息をついたり不平不満を示したりしても効果はないのだ。もういろいろと諦めたリームの態度は淡々としたものだった。一方、相変わらずミハレットのテンションは高い。<br />
「ふっふっふ、今日はなっ、リームにプレゼントがあるんだ！」<br />
「何？　ローブの次は杖でもくれるの？」<br />
「おしいけど違う！　杖も考えたがちょっと難しかった！　&hellip;&hellip;やっぱり杖が良かったかな？」<br />
「いやそもそもプレゼントとかいらないから。私はさっさとこの試練とやらを終わらせて、魔法の勉強をしたいだけで&hellip;&hellip;」<br />
「うん、そうだな。では、リームっ」<br />
　ミハレットは姿勢を正す。<br />
「オレは千年に一度の天才で偉大なる宮廷魔法士ラングリー師匠の一番弟子として！　リームに弟子の証たるアミュレットを授けよう！」<br />
　ミハレットが取り出したのは濃紫色の布がはられた小箱だった。リームに見せるように蓋をあけると、中には青い宝石のついた銀色のブローチが入っている。どことなくラングリーの杖を意識したモチーフだ。そういえば、ミハレットも同じものをローブの肩口につけていた。<br />
「アミュレットといっても、まだ何も魔法は入っていない。これから勉強して自分で魔法具を作るのにぴったりだろ」<br />
　リームはちょっと呆気にとられて得意満面なミハレットと銀色のブローチを見比べた。またこんな高そうなもの、と思ったが、ローブを受け取ってしまっている以上、そのあたりを言っても仕方がない。貴族は根本的に価値観が違うのだ。それはフローラ姫と話しててもよく分かる。それよりも、ローブと違う点は&hellip;&hellip;。<br />
「弟子の証ってことは、やっと弟子として認めてくれたの？」<br />
　真に受けてほっとしたら、またすぐに面倒くさいことを言い出すかもしれない。リームが警戒したままに聞くと、ミハレットは少し残念そうな顔をした。<br />
「&hellip;&hellip;もうちょっと喜ぶと思ったんだけどな。んん、一応、リームが魔法士を目指す気持ちはよく分かった。師匠に対する愛はまだまだ足りないが、リームなりに師匠を大事に思っているのはこの前の件でも分かったし」<br />
「大事になんて思ってなーいっ！？」<br />
「そういうのを『つんでれ』というらしい。師匠に聞いた」<br />
　あの腹黒中年タヌキ魔法士が一体何を言ったのか、想像するだけでもはらわた煮えくりかえる気分だったが、とにもかくにも、どうやら本当にこれで魔法の勉強が進められるようだ。わけのわからない試練からやっと解放される。リームはアミュレットが入った小箱を受け取った。<br />
「ローブの代金と一緒にきっと返すから。とりあえず借りておくんだからね。ありがとう」<br />
「あぁ、そうだな。リームは髪飾りにしても似合うんじゃないかな？　そうやっても使えるように留め具を作ってもらったんだ。つけてやろうか？　鏡もあるぞ」<br />
　時々ミハレットが妙に女性に気配りができるのは何故だろうと思っていたのだが、姉が二人に妹が三人いると聞いて納得した。リームは自分でつけるからと断って、鏡を見ながら右の耳の上あたりに留めた。アクセサリーなどつけたことがないので、ちょっと浮いてみえるんじゃないかと自分では思う。<br />
「うん、とっても良く似合うぞ！　黒髪って素敵だな！」<br />
「あ、ありがと&hellip;&hellip;」<br />
　この真正面から褒める感じも女兄弟がいるからなのだろうか。それとも貴族の教育の中には女性を褒めろという項目もあるのだろうか。なんとなく落ち着かないが、悪い気はしなかった。<br />
<br />
<br />
「はっはっは、悪いが何も考えてなかった。今日は適当に自習しておいてくれ。また次回までに何か考えておく」<br />
　笑顔でそう言い放たれて、リームは期待しながら執務室まであがってきてしまった自分を心底後悔した。<br />
　ミハレットの試練が終わって、やっと弟子として魔法の勉強ができると思った矢先、当の師匠の発言がこれだった。本当にこいつが『青』に認められた国有数の宮廷魔法士じゃなかったら、すぐにでも弟子を辞めてやるのにと心から思う。<br />
「リーム、そんな怖い顔するなよ。自習は基本だぞ。オレなんかこの一年、九割九分は自習で学んできたんだ」<br />
　それは放置されているだけではないのか。押しかけ弟子ミハレットは憧れの師匠の弟子でさえあればそれで満足なようだった。でも、リームはそれでは困るのだ。<br />
「大丈夫なんですか？　本当にシェイグエール魔法院に入れるくらいの魔法を教えてもらえるんですか？」<br />
「心配するな。今ちょっと色々と忙しくてな。そういえば、フローラから聞いたが――」<br />
「帰りますっ！　来週はちゃんと教えてくださいね！」<br />
　ラングリーが妙な話を出す前に、リームは急いで執務室を出た。ミハレットもあとについてくる。<br />
「まぁ、そんなに怒るなって。師匠はお忙しいんだ。なにせ天才的頭脳と最高の魔法力を併せ持ち国王陛下や王妃殿下からも信頼の厚い宮廷魔法士だからなっ！」<br />
　どうやらミハレットはフローラ姫とリームの関係は知らないらしい。特にラングリーに口止めはしていないのだが（したとしても無駄だろう）ラングリーとしても話す理由がないということなのだろうか。もしばれたら、またしても面倒なことになりそうで嫌すぎる。私はただ『青』になるために魔法の勉強をしたいだけなのに。<br />
　結局、ティナが迎えに来るまでの数刻は、ミハレットに案内された城の図書室で本を読んで終わったのだった。<br />
<br />
<br />
■魔法の源『フィード』<br />
<br />
　目を閉じて、耳を塞ぐ。そのまま少しうつむいて、自分の体全体を意識する。そして、全身の感覚をじわじわと広げていく。<br />
　やがて広げた感覚が何かに触れるのが分かる。触れるというよりは、皮膚で空気の温度を感じるのに近いだろうか。黄色、緑色、青色&hellip;&hellip;目には見えないのに何故か色のイメージも感じとれる。ぼんやりと霧のように形が定まらず、流れ動いているもの――世界に満ちる息吹、魔法の源『フィード』。<br />
　それは神々の世界にある聖なる大樹『フィーグ・ラルト』から生み出された力で、聖なる大樹の子である『王の樹』グラン・リィトを通じてこの世界に供給されているという。生物でいうと血潮ともいうべき、世界にとって必要不可欠な力。そう本で読んだが、大きすぎる話であまり実感はできない。<br />
　魔法はこのフィードを操る技術なんだそうだ。<br />
　やっとのことで始まったラングリーの魔法指導。期待を抑えつつ執務室に向かったリームに、ラングリーは言った。<br />
「まずはフィードを正確に感じ取ることからだ。見えるもの聞こえるものに惑わされないこと。中庭に魔法具を隠しておいたから、フィードを目印に見つけてこい。お前たちでも分かるように作っておいたからな」<br />
「ハイッ、分かりました！！　よーし、リーム、先に見つけたほうが勝ちだからな！」<br />
「えっ、ちょっとまっ&hellip;&hellip;！？」<br />
　一緒にいたミハレットはすぐさま執務室を飛び出していってしまい、残されたリームは開けっ放しの扉のほうを見たまま二秒ほど迷ったが、くるりと振り返ってラングリーにたずねた。<br />
「もうちょっと具体的に教えてください。フィードの見方は本で読みましたけど、目印にってどういうことですか」<br />
「それは見てみれば分かるさ」<br />
「ほんとですか？」<br />
「ウソ言うわけないだろう。自然に流れるフィードと魔法で固定されたフィードは全然違う。もちろん自然なフィードの流れに似せて作ることもできるが、今回はやってないからな。ほらほら、早く行かないとミハレットに先を越されるぞ」<br />
「ま、負けません！！」<br />
　そう言うと、リームも執務室から駈け出していった。<br />
<br />
　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　＊<br />
<br />
　突然、右後方に違和感を感じた。圧迫感と歪み、フィードの流れが渦を巻くように変化する。感じる感覚を色として表現するなら、虹色から紫色へ。その鮮やかな紫色は実際に見覚えがあった。<br />
　リームが振り向くと、バラの生け垣のずっと向こうに消えつつある紫色の光が見えた。そして見慣れたシルエットの人影。ティナが迎えに来たのだ。<br />
「ティナ！」<br />
　呼びかけて手を振ると、ティナも気がついてこちらに歩いてくる。二人は噴水のそばで落ち合った。<br />
「今日は一人なんだね。ちゃんと魔法は教えてもらえた？」<br />
「それが、課題みたいなのが出されたんですけど、うまくできなくて&hellip;&hellip;」<br />
　リームが魔法具探しについて説明すると、ティナはふーんと言いつつ視線を左右にすべらせた。<br />
「あぁ、なるほどね。初めての課題にしては、ちょっと難しいんじゃないかなぁ」<br />
「えっ、見つけたんですか！？　どこらへんにありますっ？」<br />
「いやあ、私が教えちゃったら意味がないじゃない」<br />
「せめてヒント！　ヒントください！」<br />
「えー、それじゃあねぇ&hellip;&hellip;フィードっていろんな色があるじゃない？　属性によってさ。地面を流れるフィードは黄色っぽいし、空を流れるフィードは青っぽい」<br />
「はい」<br />
「で、混ざってるといろんな色に見えるから、属性の偏りが無いところは虹色っぽくなってると思うんだけど&hellip;&hellip;こう、混ざり具合がね、不自然でおかしいなーってとこがあるのよ」<br />
「混ざり具合&hellip;&hellip;ですか？」<br />
　リームは目を閉じて、感覚を広げてみる。ここは噴水のすぐ近くなので、水属性を示す緑色のフィードが強い。緑色と青色と、黄緑色とわずかなオレンジ色。ぼんやりとした光のようでもあり、香りのようでもあるそれは、絡まりあいながら緩やかに流れている。目を開くと、明るい庭園の光景に覆い隠されて、淡くつかみどころのない流れは把握できなくなる。<br />
「&hellip;&hellip;何が普通で、何がおかしいのか、ぜんぜん分かりません」<br />
「うーん、そうだよねぇ。えーと、なんていうか&hellip;&hellip;あ、ほら、コレとかどう？」<br />
　ティナが自分の右耳のピアスを示す。雑貨屋のカウンターに置いてある呼び鈴と対になる魔法具だ。<br />
「はい&hellip;&hellip;ちょっとよく見せてもらっていいですか？」<br />
　リームは再び目を閉じて、ティナのピアスのそばに右手を伸ばした。温度を感じるように手をかざすと、ぼんやりとしたフィードがよく『みえる』。<br />
　周囲のフィードの流れとは少し違う、比較的はっきりとした色味。ふわふわと漂うのではなく、ひとつの点をまわるように緩やかに動く流れ。次第に、細く束ねられた色糸が模様を描くような流れがみえた。これが、制御されたフィードの流れ――魔法。<br />
　リームはぱっと目を開くと、満面の笑みで言った。<br />
「見えました！　魔法って、綺麗なんですね」<br />
「なんとなく分かったかな。全部がこういう感じってわけじゃないけど、まずはひとつでも実際に感じてみないと分からないよね」<br />
「そうですね。いきなりこの広い庭園の中から探せって言われても無理ですよ。すごく集中して見ないと色味とか流れの違いが分からないですもん」<br />
　その時、ミハレットが石畳の遊歩道から蔓のからまるアーチをくぐって噴水のそばにやってきた。<br />
「あぁ、ティナ殿、ごきげんよう。リーム、今日はもう帰るのか？」<br />
「えっと&hellip;&hellip;」<br />
　ティナの顔をうかがうリーム。ティナはニコニコと手をふる。<br />
「いいよ、見つかるまでがんばって。別に早く帰らなきゃいけない用事があるわけでもないし。ミハレットくんは見つけたの？」<br />
「いえ、まだです。さすがは世界最高峰の魔法士、千年に一度の天才である師匠が出された課題っ、なかなか手ごたえがありますっ。ティナ殿は師匠の塔でお待ちになりますか？」<br />
「そうだね、フィード感知の邪魔しちゃ悪いし、そうしよっかな」<br />
　ミハレットのティナに対する態度が随分丁寧になっているのは、ラングリーから何か聞いているからだろうか。それとも単にラングリーのティナに対する態度を真似ているだけなのだろうか。あとで探りを入れてみようと、リームは思った。<br />
<br />
<br />
■執務室にて<br />
<br />
　執務室の扉がノックされ、ラングリーは魔法具を手にした弟子たちが入ってくるものだと思ったが、しかしそこにいたのは長い金髪をひとつにまとめた少女姿の例のアレであった。<br />
「これはティナ殿。お迎えの時間ですね。リームは庭園にいたはずですが」<br />
「うん、さっき会ったよ。まだ課題が見つからないんだって。初っ端からあれは難しすぎるんじゃないの？」<br />
　ティナはリームが普段使っている椅子に腰かけながら言う。ラングリーは読んでいた書物を閉じて立ちあがった。<br />
「この俺の弟子ですからね、あれくらいできなきゃ話にならないですよ。お茶でも淹れましょう。日が暮れるまでやってるでしょうから」<br />
　棚からティーポットとカップを取り出すと、小声で呪文を唱えながら横に置いてある茶葉の缶の蓋をあける。ティーポットの蓋をとり茶葉を入れる頃には、ポット中には湯気の立つお湯が満ちていた。<br />
「へぇ、それいいね。ポットに水と火の魔法が刻みこんであるんだ。お店に置いてみようかな」<br />
「このタイプの魔法具は魔法士じゃないと使えないですよ。貴女の雑貨屋の目的とずれている気がしますが？」<br />
　ティーポットとカップ、そして角砂糖が入った小鉢をトレイに乗せ、ティナが座る長机に運ぶ。ティナは目の前に置かれたティーポットをまじまじと観察した。<br />
「別にそんなことないわよ。この世のありとあらゆるものを並べられるようになるのが目標なんだから、魔法具だってあってもいいし」<br />
「まだその段階じゃないように聞いてますけれどね。鉄鍋は溶けませんし、ホウキは踊らないですよ」<br />
　茶化すような笑顔で言うラングリーに、ティナは眉根を寄せた。<br />
「う&hellip;&hellip;だって、難しいのよっ。ラングリーだってやってみたんだから分かるでしょ？」<br />
　その言葉に、今度はラングリーのほうが眉をしかめる。<br />
「だから、俺を同列に並べないでくださいよ。一介の魔法士にすぎないんですからね。前にも言いましたが、貴女はもうちょっと自覚を持った方がいいと思います」<br />
「あははは、それすっごいよく言われるー」<br />
　屈託なく笑うティナに、ラングリーは肩をすくめて自分の机のほうに戻った。椅子にはかけずに、窓の外、中庭を見下ろす。四の刻を少し過ぎ、日は傾きかけているもののまだ明るい。<br />
「リームにはいつ話すのですか？」<br />
「え？」<br />
　ティーポットの蓋をあけてお茶の出具合を確かめていたティナがラングリーへ視線をあげた。<br />
「魔法を学び始めたら、遅かれ早かれ気づくということは分かってたはずですよね？　誤魔化し続けるのは無理ですよ」<br />
「うん&hellip;&hellip;だけど、ねぇ、ほら。みんながみんなラングリーみたいな感じじゃないしね？　いくら父娘だといってもね？」<br />
「そうですね。分かりますよ。&hellip;&hellip;ティナ・ライヴァート殿」<br />
　ラングリーは窓の横の壁に背をあずけ、腕を組んでまっすぐティナを見据えた。<br />
「俺じゃダメですか？」<br />
　ティナは一瞬ぽかんとした表情をする。<br />
「&hellip;&hellip;え？　ごめん、悪いけど全然興味ないし、フローラさんが泣き死ぬと思うんだけど」<br />
「何言ってるんですか、俺がフローラ以外に興味を持つわけがないでしょう。リームの代わりですよ」<br />
　ラングリーはやれやれと頭をかきながら自分の肘掛け椅子に腰をおろした。<br />
「思うに、貴女には『普通の人間』の視点が必要なんですよね？　だからわざわざ人間の街に店を開いているのでしょう？　俺だったら貴女の正体をすでに知っていますし、その上で普通の人間としての意見もできると思いますよ」<br />
「あ、あぁ、そういう&hellip;&hellip;あはは、そうよね。えーっとね&hellip;&hellip;」<br />
　ティナは笑って誤魔化しながら、ティーポットからお茶を注いだ。琥珀色の香茶がカップを満たす。<br />
「なんか、うまく言えないんだけど&hellip;&hellip;私が必要としてるのはたぶん、普通の人間の視点っていうか&hellip;&hellip;そう簡単に代われるようなモノじゃないんだと思う。うん。ラングリーはラングリーですごく助かってるんだけどね？　『青』からの目隠しにもなってもらってるし、こうして話してても色々とためになるし」<br />
「そうですか。まぁ貴女の決めることに対して口を出せる立場でもありませんでしたね。失礼しました」<br />
「ううん。参考になる意見をありがと」<br />
　ティナは香茶を一口飲んで、ふと気づいたように言った。<br />
「ねぇ、もしかして、リームだけじゃなくて、私のことも心配してくれた？」<br />
「どちらかというと『世界』を心配したというほうが近いかもしれませんよ」<br />
「あー、そっちか。うん。ごめん。みんなに心配かけてるのは分かってる。でもそんなヒドイことにはならないと思うからさ。大丈夫だよ、たぶん」<br />
　にこっと笑う表情の裏表のなさに、ラングリーは再び深くため息をついた。こいつは心の底からそう思ってるんだろうな。まったく悪意がないだけに純粋に恐ろしかった。<br />
「そうですね。そうあるように祈っておきます」<br />
「ん&hellip;&hellip;また会えるの楽しみにしてるって」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
「あ、ごめん」<br />
「&hellip;&hellip;いえ、大丈夫です。そうですね、近いうちに」<br />
　ラングリーは目を閉じて、脳裏に焼きついた姿に祈りをささげた。]]>
    </description>
    <category>■雑貨屋[小説本編]第４話</category>
    <link>http://tirakatta.blog.shinobi.jp/%E2%96%A0%E9%9B%91%E8%B2%A8%E5%B1%8B-%E5%B0%8F%E8%AA%AC%E6%9C%AC%E7%B7%A8-%E7%AC%AC%EF%BC%94%E8%A9%B1/%E9%9B%91%E8%B2%A8%E5%B1%8B%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%BF%EF%BC%94%EF%BC%8D%EF%BC%91</link>
    <pubDate>Fri, 19 Jul 2013 16:32:37 GMT</pubDate>
    <guid isPermaLink="false">tirakatta.blog.shinobi.jp://entry/70</guid>
  </item>
    <item>
    <title>四話目以降の箇条書き</title>
    <description>
    <![CDATA[四話目以降のネタを箇条書き。<br />
<br />
■魔法の勉強その２「フィードの関知」<br />
■魔法の勉強その３「維持」<br />
■魔法の勉強その４「属性」&rarr;ティナの雑貨屋を不思議にしている魔法の正体に感づく？<br />
■ティナは竜なのか？　光族闇族なのか？<br />
■イシュとダナンの仕事に関わる<br />
■ラングリー〈女神のささやき〉に再挑戦のため準備<br />
■ラングリーの〈女神のささやき〉を狙う影<br />
■フローラとリームの仲良しさん<br />
■雑貨屋商品をリームが貰う&rarr;なんか起こる<br />
□青の長の動き<br />
□風の長の動き（青と協力体制）<br />
□各トップの動き（精霊王、光王、闇王、竜王）<br />
<br />
黒い女王様はリームとのからませかたが不明なので当分出てこないかも。<br />
人間魔法具の坊ちゃんはミハレットとライバル関係にしやすそうかな。でも金髪がかぶるから銀髪に変更するか。銀髪巻き毛。きらきらした二人に挟まれる地味なリームの構図になるなぁ。少女漫画っぽい。<br />
自称運命の女神の愛されし子な占い師も出しておきたいけど、タイミングが不明。<br />
ラヴェル・ヴィアータさん、出てくんのかな&hellip;&hellip;リームが店名に疑問を持ったら、流れで出てきてしまいそうな&hellip;&hellip;そうすると色々ばらしていきそうな&hellip;&hellip;いや。いやいやいや？<br />
　それにしてもこの店名、ソフィアさんは絶対好きじゃないだろうな。嫌な思い出のほうが多そうだし。<br />
　最初はソフィアさんの名前を借りようかとかいう話も出て、でももう私からは卒業しなさい、みたいになって、じゃあその上を目指そうかでラヴェルさん。<br />
<br />
シェイグエール魔法院の試験を受けに行く直前（あるいは同時）くらいで、なんか事件起こして、雑貨屋を続けられなくなる、けど院には合格、みたいに終わるのがきれいかなぁ。<br />
その頃には普通の魔法士としては十分やっていける程度の力量はあるはずで&hellip;&hellip;宮廷魔法士の弟子として仕事を受けたりもしてるかな？<br />
<br />
とりあえずのネタ出しは以上ということで。]]>
    </description>
    <category>構想</category>
    <link>http://tirakatta.blog.shinobi.jp/%E6%A7%8B%E6%83%B3/%E5%9B%9B%E8%A9%B1%E7%9B%AE%E4%BB%A5%E9%99%8D%E3%81%AE%E7%AE%87%E6%9D%A1%E6%9B%B8%E3%81%8D</link>
    <pubDate>Mon, 10 Dec 2012 14:40:58 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>三話目、終了。</title>
    <description>
    <![CDATA[　ざっくり書き終わりました。ざくざく。１年以上放置しておいてざくざく。<br />
　きっとこれからもこんな調子な気がします。<br />
<br />
　途中までは推敲前として書いてあったわけですけど、書きながら結構変わりました。特にリームの反応。<br />
　なんだかんだの流れで納得するかなと思ったら真っ向から反発したり、逆にテンション高いかなと思ったらだだ下がりだったり。こういう風に言われたらこう反応するだろうな、というのが、事前想定と書いてる途中で違ってくるのは良いことなのか悪いことなのか分かりませんｗ<br />
<br />
　ラングリーの立ち直りが早かったのは、たぶん王妃様といろいろお話してるんだと思います。構想に書いてあるようなことを。それでやっとやれやれだぜみたいな心境になれたのかと。<br />
<br />
　さて、今後ですけど、いいかげんリームも魔法の勉強を始められるかと思います。<br />
　あとは雑貨屋にそろそろお客さん？<br />
　お客さんってば帰り道を青に頼ろうとするから、それは困るってラングリーに押しつけるまでは見えましたが－。<br />
<br />
　もうひとつ書き終わってから思ったことは、ラングリーが〈ささやき〉を使いこなせるようになったら、それはそれで結構なオオゴトなのではと。<br />
　ラングリーはティナと違ってそのへんは理解してるでしょうから、周囲に簡単にばれないように注意して使うでしょう。<br />
　王妃様に口止めはできないとしても、王妃様はとくに重大なことだとは思ってないので、聞かれなきゃ答えないでしょう。ティナも自分から言うようなことはしないだろうけど、話の流れでぽろっと言うかも？<br />
<br />
　〈ささやき〉自体は普通に魔法の一種として存在するので、使い手は青だとか宮廷魔法士とかに限られるにせよ、特に問題はない。<br />
　オオゴトになりうるのは、ラングリーの名が組み込まれたことで、むこうさんが『特別な計らい』をしてくれるようになってしまった、ということで&hellip;&hellip;。<br />
　どの程度の計らいをしてくれるのかは、本人にも分からない。ティナにも分からない。それがおそろしい。そういうこと。<br />
<br />
　ぽろっと知ってしまった面々はどういう反応をするか。<br />
　今からでも遅くないから前言撤回しとけ、という良識派と、ティナが選んだことなんだから別にいーんじゃない、という達観派。<br />
　良識派に言われて、むこうさんと相談してみるものの、えー前言撤回なんてらしくないじゃーん？みたいにからかわれて、なにこれダメってことなの？みたいな、まだどこまで強くでていいのか分からないティナは引いてしまう、と。<br />
　しばらく様子を見てみましょ、と、まとまると思われる。<br />
　で、良識派はラングリーを監視体制に入るんだろうな。そうすると『青』にも気づかれて、ティナがいやがっていた面倒な事態に&hellip;&hellip;。<br />
<br />
　ていうか、そもそも『青』はティナをあえて放置してるだけで、いつ接触しようかな～♪なんて楽しんでいるはず。<br />
　うまく逃げられていると思っているのはティナ本人だけ。<br />
　<br />
　青以外にちょっかい出そうと目論見る集団はいるかな&hellip;&hellip;？　ティナには手を出せないけどラングリーならって思えるような相手とすると、少なくとも人間じゃないなぁ&hellip;&hellip;。<br />
　現状に不満を持っていて、ラングリーの〈ささやき〉の力が欲しいなって思うとすると&hellip;&hellip;？　うーむ、闇族の誰かかなぁ&hellip;&hellip;。<br />
　〈ささやき〉の力で、夜の世界に？　おぉ、なんか普通のラスボスっぽいやつだ。<br />
　ティナとか出てくるとぽいされちゃうので、是非ティナに分からないように姑息な手段を使ってどうにかしてもらいたいものです。<br />
<br />
　&hellip;&hellip;リームが帰ってこなかったらティナ出てくるじゃん。困った。しばらく家族で旅行に行きます的な？　うーむ。<br />
<br />
　もうちょっと考えます。<br />
<br />
]]>
    </description>
    <category>未選択</category>
    <link>http://tirakatta.blog.shinobi.jp/%E6%9C%AA%E9%81%B8%E6%8A%9E/%E4%B8%89%E8%A9%B1%E7%9B%AE%E3%80%81%E7%B5%82%E4%BA%86%E3%80%82</link>
    <pubDate>Mon, 03 Dec 2012 12:07:55 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>雑貨屋ラヴェル・ヴィアータ３－２</title>
    <description>
    <![CDATA[（５）名前の束縛<br />
<br />
　結局、ティナに先日のラングリーとのやりとりの意味を聞いても、リームにはいまひとつ理解できない答えが返ってくるばかりだった。<br />
　ティナの話をまとめると、『青』の対応を頼んだお礼と今後『青』がラングリーを調査したときの対策のために、『雑貨屋の不思議を背負える何か』を渡したらしい。<br />
　おそらく魔法だとリームは思うのだが、つまりこの雑貨屋が奇妙な原因はティナが何か魔法を使っているせいなのだろうか。それと同じ魔法を書いた巻物をラングリーに渡したということなのだろうか。<br />
　しかし、ラングリーの様子が只事ではなかった。いつも状況を面白がっているようなにやにや笑い（とリームには見える）を浮かべているのに、あんなに真剣なまなざしは初めて見た。これを渡す意味を分かっているのかとティナに聞いていた。ティナが思っている以上の意味が、あの巻物――あるいは魔法にはあるのだろうか。ティナは問題あるとは思わないと言っていたが&hellip;&hellip;。<br />
「リーム～！　そろそろ時間じゃなーい？」<br />
　階段下からティナの呼び声が聞こえてきて、雑貨屋２階の自室にいたリームは、はーいと大きく返事をした。<br />
　前回ラングリーの塔へ行ってから１週間が経っていた。今回はミハレットがいないといいなぁと思いつつ、リームは魔法語教本をまとめて１階に下りた。<br />
「お待たせしました」<br />
「準備はできた？　じゃあ、送るわよ。迎えはいつも通り４刻くらいでいいかな？」<br />
「はい。いつもありがとうございます」<br />
「いいのよ。魔法は減るもんじゃないしね」<br />
　あらわれた紫色の光がリームを包み込む。呪文の詠唱無しで魔法を使えるのは、魔法具に事前に呪文を織り込んでおくからだ。ティナが身につけている魔法具は呼び鈴と連動しているイヤリングくらいだから、たぶんとてつもなく複雑な魔法があのイヤリングに込められているのだろう。<br />
　リームの目の前が紫色の光でいっぱいになった次の瞬間には、すでに薄れつつある光の向こうには、ラングリーの塔が見えていた。<br />
<br />
＊　　　　　　　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊<br />
<br />
「待ってたぞ、リーム！　今日もこのオレが弟子とはなんたるかを教えてやろうっ！！」<br />
　塔の入口をはいってすぐ、リームを出迎えたのは相変わらずやる気満々のミハレットだった。<br />
　やっぱり、いた&hellip;&hellip;。リームはうんざりしたため息をついた。もしかしたら初めてここに来たときのようにミハレットが居ない日もあるのかもしれないと、淡い期待も抱いていたが無駄だったようだ。<br />
　なんとかミハレットと遭わないように日程を調節して魔法を教えてもらえないかとラングリーにも伝えたのだが、結局今逃げても問題は先延ばしになるばかりだろうと言われて、それは確かにその通りだったから納得せざるをえなかった。<br />
　逃げるのではなく、ちゃんと真正面から受けて立つしかないのだ。<br />
　魔法語教本はとりあえず１階の応接室に置いて、ミハレットに連れられるままリームは城内へ向かった。<br />
「宮廷魔法士の弟子たるもの、それなりの知性と気品を兼ね備えてなければならない。まずは形からだ。リームの恰好は魔法士としてふさわしくない」<br />
　意気揚々と語るミハレット。リームは庶民は魔法士にふさわしくないと言われたように感じた。これだから貴族は。皮肉をこめて言った。<br />
「魔法の力の前では、貴族も庶民もないんじゃなかったの？」<br />
「貴族も庶民も関係なく、魔法士らしい格好すれば皆魔法士に見えるだろう？　なにより、かっこいいじゃないか！」<br />
　師匠であるラングリーと全く同じ黒のローブを着て髪型まで似せてしまうミハレットは、全力の笑顔で断言した。かっこいいから。ふーん子供っぽいな、と、リームは思う。自分のことを棚にあげているとは気がつかない。<br />
　城内を使用人の通用口を中心に歩いてしばらく、着いたのは衣服の繕い等をする針子の仕事場だった。十数人の女性が豪華絢爛なドレスから使用人の服まで様々な衣服に向かってそれぞれ仕事をしている。ミハレットが針子の一人と会話をすると、その針子は様々な衣服が並ぶ奥から一着の黒いローブを持ってきた。シンプルだが生地も仕立ても良い、庶民ではそうそう手に入れられないくらいのものだというのは見ただけで分かった。<br />
「とりあえずそれっぽいのを用意してもらった。正式なローブはまた改めて仕立ててもらうといい」<br />
「さあさあ、試着してみましょう。裾や袖なんかは、ちょちょいと直せますからね♪」<br />
　針子が笑顔でカーテンで仕切られた試着場所を指し示す。<br />
「ちょ、ちょっと待って。そんな高そうなローブの代金なんて払えないよっ。言ったでしょ、私はあんたとは違って普通の平民なんだからね！」<br />
　慌てるリームに、ミハレットはさらさらと応える。<br />
「あぁ、問題ない。これの支払いは済ませてある。気になるなら魔法士として稼ぐようになってから返してくれればいい。オレも家の名前で借りている金はそうやって返すつもりだし、雑貨屋で働いた程度では手に入れるまで時間がかかりすぎるだろ。かりにも師匠の弟子を名乗る以上、いつまでもそんな恰好では&hellip;&hellip;」<br />
「なによ、ばかにしてるの？　そんな施しなんていらない！」<br />
　ミハレットの言葉を遮り、リームはミハレットをにらみつける。孤児院にいたときも貴族が戯れに菓子などを配ることがよくあった。そもそもリームがいたピノ・ドミア神殿の孤児院は貴族からの寄付でなりたっているようなものなのだが、それでも一部貴族の上から目線の施しを嫌う孤児はリームを含め少なくなかった。<br />
　そんなリームにミハレットは言い返すかと思いきや、軽く目をひらいたあと、少し視線を落とし静かに言った。<br />
「気に障ったならすまない。一般市民を貶めるつもりは一切ないんだが、信じてもらえないかもしれないな&hellip;&hellip;今までもそういうことはあったし」<br />
　うってかわっての意気消沈した態度に、リームは動揺した。ミハレットは間違いなく庶民を軽んじていたし自分が不快に思うのも当然だし&hellip;&hellip;でも、悪いことを言ってしまったんじゃないかという罪悪感がもやもやしてるのは何故だろう。ミハレットに同情の視線を向ける針子の存在も居心地の悪さを高める要因だ。<br />
「え、と、あの&hellip;&hellip;」<br />
「いいんだ、オレはもう城（ここ）で学んでる。ブルダイヌ家のミハレットという名前はオレの一部で、切り離せないんだ。いくら自分で家の名を捨てたと言っても無理なんだ」<br />
　城のどこへ行っても坊ちゃん坊ちゃんと使用人たちから呼ばれるミハレット。それは慕われていることを表わすと同時に、貴族の息子としか見てもらえないことも表わした。リームの脳裏にフローラ姫からの手紙の宛名がよぎる。可愛らしい丸文字でリーム・キーティア・ストゥルベル殿と書かれたそれを、自分の本名だと思ったことは無かった、はずだったが――。<br />
「でも師匠が言ってくれた。家名の束縛から逃げ出すことを目的にするのは無駄なことだ、って。逆に、自分を磨くことを目的にすれば、いつのまにか自分の名が家名を越えることになる。あのブルダイヌ家の六男が魔法士をやってる、じゃなくて、あの魔法士ミハレットがブルダイヌ家の六男だ、って言われるようになる。すごいだろ？　さすが師匠っ、魔法だけでなくすべてにおいて知恵深く造詣にとみ他の追随を許さないっ！！」<br />
　何故いつも話がその方向にずれるのか。リームにはミハレットの思考回路が分からなかった。しかしミハレットの言葉は心をざわざわと波だたせた。『家名の束縛から逃げ出すことを目的にするのは無駄なことだ』――まるで自分に言われているようで。そんなことはない、私は孤児であり天涯孤独であり、どんな家とも関係がないんだ。そう言い聞かせている自分と、その姿を見ているもう一人の自分と。自分の一部は気づいている。彼女が目をそらして逃げているだけだということに。<br />
　――私もその名を受け入れられたなら、真っ直ぐに魔法士を目指すことだけに向かうことができるのかな――。<br />
「つまりだな、オレのことが気に入らないのは仕方がないことだ。それとこれとは別のこと。師匠の弟子として恥ずかしくない立派な魔法士見習いになるためには、通らなければならない道なんだ！」<br />
「そっ、そもそもあんたに道とか決められる筋合いないし&hellip;&hellip;」<br />
　ごにょごにょと反論するものの、先程の勢いはすっかり削がれてしまったリーム。<br />
「いいから、まずは着てみろって。ほんとテンションあがるぞ。間違いない」<br />
　結局、押し切られて、ローブを試着することになってしまった。<br />
　つややかな黒色のローブは襟元の形が少しラングリーのものに似ている。ミハレットのもののようにそっくり同じというわけではないが。鏡にうつる自分は、いつもの灰色のワンピース姿よりも随分大人びて見えた。なんだか魔法が使えそうな感じだ。リームは口の端があがってしまうのを抑えきれずに、にやにやしている自分の姿を眺めることになった。どうせなら青色のローブにしてくれれば良かったのにと思ってしまったりして。<br />
「ほら、似合うじゃないか！　言ったとおりだろう」<br />
　試着室から出てきたリームに、ミハレットが声をかける。針子もよくお似合いですよと満面の笑顔だ。<br />
「師匠と同じ黒髪だから、黒いローブが良く似合って羨ましいな」<br />
「べっ、別に同じなんかじゃ&hellip;&hellip;！」<br />
　反射的に反論してしまって、きょとんとしたミハレットの様子から、黒髪がそんなに珍しくないことを思い出して口をつぐむ。<br />
「と、とりあえず&hellip;&hellip;ありがとう。あとでぜったい稼いで返すから」<br />
「あぁ、そうだな。立派な魔法士になったら返してくれるといい」<br />
　――迎えに来たティナにどうしたのそのローブと驚かれて、顛末を話したら、ずいぶん仲良くなったねと笑われてしまった。<br />
　別に仲良くなった訳じゃない。でも、だいぶ慣れてきたかな、と思うだけで。あとはさっさと魔法の勉強の続きを始められればいいんだけど。<br />
　黒いローブはリームの自室の壁の目立つところにかけて、魔法の練習をするときだけ身につけることにした。<br />
<br />
（６）〈女神のささやき〉<br />
<br />
「あのさ、いつになったら弟子として認めてくれるの？　いいかげん魔法の勉強をしたいんだけど」<br />
　今回も塔の下で待っていたミハレットに、黒ローブを着たリームは魔法教本を応接テーブルに置きながら言う。セリフは初めて会った時から変わってないが、随分とげとげしさが無くなっていた。それを分かっているのかいないのか、ミハレットは屈託のない笑顔だ。<br />
「そうだな、あとリームに足りないのは、師匠の素晴らしさを知らないことだ。師匠がどれだけ素晴らしい魔法士なのか分かれば、きっと青じゃなくて宮廷魔法士になりたいと思うんじゃないかな」<br />
「それはぜったいないから」<br />
　リームはきっぱりと即答したが、ミハレットはまるで聞こえなかったかのように塔を出て、城へとむかう。リームもしぶしぶながら後に続いた。<br />
「今日はな、師匠が久しぶりに地下魔方陣で儀式魔法をやるらしいんだ。すごいんだぞ。塔の魔法陣の１０倍くらいの大きさがあるんだ。うまく使えば、王都全体を魔法の効果内におさめることができるんだそうだ。これは見ておかなきゃ損だろ？」<br />
　身振り手振りを交えて力説しながら歩くミハレットに適当に返事をしつつ、確かにそんなにすごい魔法だったら見てみたいとリームは思った。気にくわない腹黒宮廷魔法士だけど、その魔法の技術だけは確かなのだ。『青』も一目置く国有数の宮廷魔法士。今まで小さな魔法は見てきたが、大がかりな魔法は見たことがない。<br />
　いつもの使用人の通路とは違う廊下を進んでいき、だんだん人気の少ない地下へと入って行く。壁や天井の装飾にまじって魔法語が刻まれているのが見てとれる。途中数カ所に衛兵が立っていたが、ミハレットの姿を見ると軽く敬礼するだけで特に何も問いただされなかった<br />
　廊下の先に大きな扉が見えた。天井まで続く臙脂色の大きな扉は魔方陣が描かれ、取っ手もドアノブも見あたらない。ミハレットは何やら羊皮紙の切れ端を取り出すと、片手を扉にかざして読み上げた。魔法語だ。――しかし、扉はなんの反応も示さない。<br />
「&hellip;&hellip;あれ？　おかしいな&hellip;&hellip;。いつもはこれで開くんだが」<br />
「発音が違うんじゃないの？」<br />
「いや、今まで何度も開けてるんだし、合ってるはず&hellip;&hellip;」<br />
　ミハレットの持つ羊皮紙をリームは横からのぞき込む。<br />
　その時。<br />
　感じるはずのない猛烈な風圧を扉から感じた。いや、実際には空気は動いていない。風の圧力に似た何かの力。リームとミハレットはその力に押されて、廊下に倒れた。<br />
「わっ！？」<br />
「きゃっ！」<br />
　二人の声をかき消すように、低い轟音が扉の向こうから聞こえた。地響きに城全体がきしむ。しかし、それは一瞬で終わった。すぐに扉の向こうはしんと静まりかえり、遠く廊下の上のほう、城の上層階のほうではばたばたと足音や人の騒ぎ声が聞こえてくる。<br />
「なんだ&hellip;&hellip;？　何かあったのか？」<br />
「こ、こういうことって、よくあるの？」<br />
「いや、初めてだ」<br />
　ミハレットは再び羊皮紙の魔法語を読みあげる。扉の魔方陣がほのかな光を宿し、ゆっくりと扉が開いていく。<br />
「開いた！」<br />
　巨大な扉の向こうは、とても大きな半球状の広間だった。教会がひとつ建ってしまいそうなほど天井も高い。窓がなく、暗いはずだが、今はその広間を占める物体のおかげでぼんやりと明るかった。<br />
　大きな魔方陣があると思われる広間の中央。見上げるほどの巨大なそれは、淡い乳白色の結晶のようだった。ちょっとした家くらいの大きさはある。水晶の原石のように柱状の結晶が放射状に並んでいる固まりで、ある一部はほのかに赤く、またある一部は青や緑に、弱い光を包んでいてとても幻想的だ。<br />
「これは&hellip;&hellip;？」<br />
「オレも初めて見る。師匠は&hellip;&hellip;師匠？」<br />
　周囲を見回しながら、ゆっくりと進むミハレット。リームもおそるおそるそれに続く。広間に人の気配はなく、二人の足音だけが響く。巨大な結晶はただゆっくりと光を明滅させている。<br />
　結晶を一周しても、ラングリーの姿は見あたらない。すると、結晶の中なのか？　ミハレットとリームはどちらからともなく顔を見合わせて、意を決してそっと結晶に触れようとした。<br />
「お待ちなさい」<br />
　凛とした声が広間の入口のほうから響き、二人が振り返る。黄昏時の東空のような紫色のドレスを身にまとい、つややかにうねる黒髪を腰までおろした女性が、複数の衛兵と魔法士を従えて立っていた。優雅さと気品と恐ろしいまでの強さを秘める、クロムベルク王国を守護する黒竜の化身――。<br />
「王妃様！？」<br />
「ファラミアル殿下！」<br />
　立ち尽くすリームとは違い、ミハレットは即座に膝をついて臣下の礼をとった。<br />
「立ちなさい、ミハレット・エフォーク。久しぶりですね、リーム・キーティア」<br />
　王妃は微笑みを浮かべてゆっくりと二人に近づいてきた。結晶を見上げて言う。<br />
「これについて、何か聞いていますか？」<br />
「いいえ&hellip;&hellip;」<br />
「師匠が&hellip;&hellip;宮廷魔法士ラングリーが儀式魔法を行うらしいとだけ。何をするかは教えてもらっていません」<br />
「そうですか」<br />
　王妃は目を閉じ、そっと結晶に触れた。しばらくして目を開く。アメジストのようなその瞳は、人とは違う、瞳孔の細い竜の瞳。<br />
「&hellip;&hellip;いけない。このままでは&hellip;&hellip;」<br />
　そう言うと、王妃の周囲を黒い電光が弾けはじめた。王妃の姿を包むように広がる闇夜の黒。リームはそれに見覚えがあった。黒の固まりは大きく広がり、巨大な黒竜の姿をとるはずだ。月明かりにきらめく竜の鱗、はばたく大きな翼を今でもよく憶えている。<br />
『シルート、二人を外へ。サルザンとバチルスも部屋を出なさい』<br />
　耳を介さず聞こえる『声』で、王妃は魔法士と衛兵に命じる。白髪交じりの魔法士はリームとミハレットを広間の外へとうながした。<br />
　いったい何が起こっているのだろう。王妃様が出てくるなんて夢にも思わなかった。あの地響きは城全体に響いたに違いない。一体ラングリーは何をしてしまったというのか。王妃様は何をしようとしているのか。<br />
　ミハレットとリームが広間の外に出ると、扉がゆっくりと閉まろうとしていた。淡く光る巨大な結晶と、その横には大きな闇の固まり。竜の姿をもう一度見てみたい気持ちもあって、リームは閉まりゆく扉の隙間からじっと広間の中を凝視していた。<br />
「大丈夫ですよ、ファラさん。あとは私がやりますね」<br />
　その声は広間の奥、結晶のすぐそばから聞こえた。王妃のものではない、でもリームには聞き覚えがありすぎる声。その声に応じて、闇色の固まりは急速に小さくなっていく。<br />
「ティナ！？」<br />
　その姿を確認することなく、臙脂色の扉はリームの目の前でぴったりと閉まった。<br />
<br />
<br />
＊　　　　　　　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊<br />
<br />
「ご迷惑おかけしてすみません。詳しい話はあとでしますから」<br />
「よろしくお願いしますね、ティナちゃん」<br />
　人の姿に戻った王妃が見守る横で、不思議な雑貨屋の店主は無造作に結晶に触れた。<br />
　触れた部分を中心に、さらさらと結晶が虹色に光る粉へと変化する。見上げるほど巨大な結晶全体が粉と化すのにそう時間はかからなかった。<br />
　広間の中央、結晶の中心部分には、うずくまる黒色の魔法士。細い金色の杖をしっかりにぎったまま、ぴくりとも動かない。<br />
「ちょっと、ラングリー？　無事なのは分かってんのよ。自分で欲しいって言ったんだから、責任持って身につけなさいよね」<br />
　さくさくと虹色の粉を踏みながら、金髪の少女は魔法士に近づく。魔法士はゆっくりと顔をあげた。<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;！」<br />
　少女は歩みを止めた。魔法士は少女から視線をそらす。<br />
「ティナちゃん。ラングリーはそれは優秀な魔法士です、けれどね――」<br />
　普通の人間だということを、忘れてはいけませんよ。<br />
「――うん。ごめん。私が悪かったわ」<br />
「あとは任せてくださいな」<br />
「ほんとすみません。ここは後で片付けに来ますので、一旦帰りますね」<br />
　少女はもう一度魔法士を見ると、薄紫色の光につつまれて消えた。<br />
　王妃は魔法士に近づく。魔法士はふらつきながらも、ゆっくりと立ち上がった。<br />
「何を見ましたか」<br />
「『彼女』を」<br />
「あなたが未熟なのではありません。未熟だとすればあの子が。そしてそれは罪ではなく、自然で当たり前なこと」<br />
「&hellip;&hellip;えぇ。えぇ、よく分かりました&hellip;&hellip;よーく分かりましたよ、まったく酷い話だ！」<br />
　魔法士は顔をあげ、金の杖を床に打ちつけた。ざくっと虹色の粉に杖がささる。王妃はふっと笑みをこぼした。<br />
「大丈夫そうですね。さすがはラングリーです」<br />
「さすがではないですよ！　王妃様、アレは俺の気が狂って暴走していたらどうするつもりだったんですかね？　どうもしないんでしょうね、多少落ち込むくらいでしょうか！　俺も分かっていたつもりでしたけれど&hellip;&hellip;あぁ」<br />
　魔法士が片手で顔を覆う。その手は小刻みに震えていた。<br />
「自分が情けない。弟子達に会わせる顔がないですね&hellip;&hellip;」<br />
「私は貴方を誇りに思います」<br />
　王妃の言葉に、魔法士は胸に手を当てて深く一礼した。<br />
<br />
<br />
（７）不思議な雑貨屋の不思議な店主<br />
<br />
　日はすっかり落ちて、クロムベルク城の中庭は細い三日月の明かりに照らされるばかりだ。<br />
　塔の執務室から中庭を見下ろしたあと、リームは自分の机に戻って魔法教本に目を落とした。<br />
　ティナは迎えに来ないし、ラングリーも戻ってこない。地下の広間でいったい何があったのか。自分はどうすればいいのだろう。<br />
　執務室の扉がノックされ、はっとしたリームが立ち上がると、ミハレットが布のかかったカゴを持って入ってきた。<br />
「夕食をもらってきたぞ。師匠は今日は帰らないかもしれないなぁ。まぁ帰らない日はちょくちょくあるが、今日はおかしなことがあったから少し心配だな」<br />
　机にカゴをおいて布をとると、焼きたての丸パンとあぶり肉、蒸してつぶしたイモ、香味オイルであえた生野菜が入っていた。<br />
「迎えにきてないってことは、やっぱり地下魔方陣の間にいたのはリームのとこの雑貨屋の店主みたいだな」<br />
「うん&hellip;&hellip;確かにティナの声だったと思う」<br />
「あの店主は一体何者なんだ？　王妃様と知り合いのような口ぶりだったし」<br />
　パンをかじりながらミハレットが言う。リームも空腹に負けてもそもそと食べ始めた。パンは驚くほどふわっふわで、あぶり肉は焼きたてジューシーだが、いまひとつ美味しさを楽しめる余裕がない。<br />
「何者も何も&hellip;&hellip;ティナはティナだよ。確かに王妃様と知り合いだけど、それは王妃様と国王様が出会ったときにお手伝いしたからで」<br />
「それって随分昔の話じゃないか。もしかして店主は竜族なのか？　王妃様と同じ？」<br />
「さぁ&hellip;&hellip;でも竜族だろうと人間だろうと同じじゃない？　王妃様だって人間の国王様とご結婚して王子様もいらっしゃるんだから」<br />
「まぁ、そりゃあ、そういう意味では&hellip;&hellip;」<br />
「ティナは、ティナだよ」<br />
　リームはもう一度ゆっくり言って、窓から外を眺めた。<br />
<br />
「いやあ、すっかり遅くなったなぁ。おう、お前たち、まだ休んでなかったのか」<br />
　ノックもなく唐突に執務室へ入ってきたのは、いつも通りの飄々とした笑顔のラングリーだった。<br />
　魔法教本を見ながらうつらうつらしていたリームは一気に眠気が吹っ飛んだ。しかし、動いたのはミハレットのほうが先だった。<br />
「師匠！　師匠師匠師匠ーっ！！　大丈夫だったんですか！」<br />
　抱きつかんばかりに突進するミハレットをラングリーは慣れた様子でかわす。ミハレットはつんのめったが、こちらも慣れているのか転ばずにもちこたえた。<br />
「はっはっは、俺様を誰だと思っているんだ？　あの程度の失敗でへこたれるラングリー様じゃないさ」<br />
　やっぱり何か失敗したんだ、と、リームは思いながら、いつもなら見てるだけで腹の立つ俺様な笑顔に、どこかほっとする自分に気がついた。<br />
「さて、リーム。ティナ・ライヴァートの迎えがまだのようだが&hellip;&hellip;」<br />
　顔は笑顔だが声が硬い。なんとなくリームはそう思った。<br />
「あ、あの、さっき広間にいたのって、やっぱりティ――」<br />
　ラングリーは膝を折り、リームと視線を合わせて、真正面から見つめた。赤褐色の瞳に映る自分の表情がひどく不安げに見えて、リームは言葉を詰まらせた。<br />
「リーム。なんとなく分かっていると思うが&hellip;&hellip;ティナ・ライヴァートは非常に&hellip;&hellip;なんと言うか、扱いにくい。油断していると酷い目にあう。それでもお前は、雑貨屋に帰りたいか？　ミハレットのように城に住み込みで魔法を学べば、『青』になれる日もそう遠くないはずだ」<br />
　本気で私を心配している。それが分かる低く落ち着いた声音と真っ直ぐな視線だった。しかしリームは首をふった。<br />
「ティナが不思議なのは最初から知ってます。それでも雑貨屋で働こうって思ったんです。ティナが私を必要としないんなら仕方ないですけど、たぶんティナは誰かを必要としてるんです」<br />
　でなければ、あんなに多彩な魔法が使えるのに店員を雇おうなんて思うだろうか？　人間じゃないかもしれないティナが人間の街で雑貨屋をやっているのは、人間を必要としているからではないだろうか。<br />
「それがよりによってお前なんだよな&hellip;&hellip;まったく、運命の女神は性格が悪い」<br />
　ラングリーの手がリームの頬に触れる。それは見た目よりずっと大きくて温かかった。<br />
<br />
<br />
＊　　　　　　　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊<br />
<br />
　アメジスト色の光の向こう、汎用魔方陣の部屋の石壁しか見えない景色が水面のように揺らぎ、見慣れた街並みに置き換わる。時間は深夜。家々の明かりもほとんどなく、星明かりだけが通りを照らす。<br />
「さぁ、俺もティナ・ライヴァートに話があるからな。たぶんまだ起きてるだろう。ほら、明かりがついた」<br />
　雑貨屋ラヴェル・ヴィアータの店内に明かりが灯る。しかし、出迎えには出てこない。ラングリーとリームは、店の扉をくぐった。<br />
　カウンターに腰掛けているのは、長い金髪をひとつにまとめた少女――不思議な雑貨屋ラヴェル・ヴィアータの店主、ティナ・ライヴァート。二人の姿を確認すると、少し目を見開いた。<br />
「思ったより立ち直りが早かったね。しばらく私の顔を見られないんじゃないかと思ってた」<br />
「はっはっは。言ったでしょう。貴方は俺を信用しすぎで見くびりすぎなんですよ」<br />
　ラングリーの言葉にティナは少し表情を和らげる。しかしまだいつもの明るいティナとは程遠かった。<br />
「今回のことは、ほんと私の失敗だから。ごめんなさい」<br />
「そうでしょうとも。今後気をつけてください。そしてもうひとつ。あれを撤回するようなことはしないでくださいよ。間違いなく俺が貰ったものですからね」<br />
「え&hellip;&hellip;まだ使う気なの？　あんななったのに？」<br />
「だーかーらー、見くびりすぎって言ってんだろ？　ちょっと油断してただけで、次は使いこなしてみせるさ。後悔しても遅いぞ。俺にあれを与えたのは、お前の失敗なんだからな」<br />
　一息にそこまで言い切ると、ラングリーはティナにぴしっと人差し指をつきつけた。お得意の俺様笑顔全開で。ティナはきょとんとした表情から一転して、腹の底から笑い声をあげた。<br />
「あははははっ！　そっか、そーね！　なんだ、心配しちゃったじゃん&hellip;&hellip;よかった。そんな酷い失敗じゃなかった！」<br />
「いや、そーとー酷い失敗だからな？　本当に以後注意してくださいませよ、ティナ・ライヴァート殿。じゃあ、リーム。また来週な」<br />
　片手をあげて店を出ようとするラングリーに、ティナは何故か驚いたようだった。<br />
「えっ、ちょ&hellip;&hellip;いいの？」<br />
「何がですか」<br />
「その&hellip;&hellip;大事な娘さんを私みたいなのに預けて」<br />
「娘じゃないです！！」<br />
　おとなしく様子を見守るつもりだったリームは、つい反射的に声をあげてしまって、二人の視線に居住まいを正した。<br />
「えっと、ティナ、私は不思議な雑貨屋だって話を聞いていて、それでもここに来たんです。ティナが普通じゃないのはもう十分わかってます。でも、そんなの関係ないです。王妃様だって、竜族なのに国王様とご結婚したじゃないですか。私はティナがたとえ人間じゃなくったって、ここで働きます」<br />
「だ、そーだ。不肖の娘だが、よろしく頼むぞ」<br />
「だから娘じゃないってばっ！！」<br />
　ほほえましいやりとりをするリームの手を、ティナは膝をついて両手でにぎった。<br />
「ありがとう、リーム。あなたがうちの店に来てくれて良かった」<br />
「私もっ、私もティナの店で働けて良かったです！」<br />
　目尻を下げて心底嬉しそうに微笑むティナは、確かに年相応よりも随分大人びて見えた。でもやっぱり自分を必要としてくれているんだなというのは分かって、リームはティナの手をぎゅっと握りかえした。]]>
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    <category>■雑貨屋[小説本編]第３話</category>
    <link>http://tirakatta.blog.shinobi.jp/%E2%96%A0%E9%9B%91%E8%B2%A8%E5%B1%8B-%E5%B0%8F%E8%AA%AC%E6%9C%AC%E7%B7%A8-%E7%AC%AC%EF%BC%93%E8%A9%B1/%E9%9B%91%E8%B2%A8%E5%B1%8B%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%BF%EF%BC%93%EF%BC%8D%EF%BC%92</link>
    <pubDate>Mon, 03 Dec 2012 10:48:03 GMT</pubDate>
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  </item>
    <item>
    <title>雑貨屋ラヴェル・ヴィアータ３－１</title>
    <description>
    <![CDATA[（１）魔法を学ぶ<br />
<br />
　どんっ、とリームの目の前に積まれたのは分厚い４～５冊の本だった。どれも布張りのしっかりした装丁で、ひとつひとつが片手で持ち運ぶのは大変そうなほどの重さに見える。<br />
「基礎魔法語、記述魔法語、精霊語。発音に特化した教本に、初歩の魔法陣形式。とりあえず、これをすべておぼえろ。文字を知らないと話にならないからな」<br />
「分かりました。この本は持って帰ってもいいんですか？」<br />
「あぁ、良いぞ。ただ、城の蔵書から借りてきたものだから、ちゃんと返すようにな」<br />
　宮廷魔法士ラングリーの執務室はクロムベルク城の中庭に建つ塔の上にあった。塔にはいくつか部屋があるらしく、リームがいるのはその最も高い位置にある部屋だ。正面に飾り格子のついた窓とその手前に磨き上げられた大きな木机。左右の本棚には大量の本と巻物、アミュレットのようなもの、そして何故かレースで飾られた人形や淡いピンク色の花飾りなど、似つかわしくないものがところどころに置かれていた。<br />
　中央の机以外に片側の壁沿いに長細い机があった。もともとは小物が置かれていたのだろう。今は除けられており、その空いた場所にリーム用の小さな椅子が置かれていた。<br />
「じゃ、がんばれよ」<br />
　軽く右手をあげてそう言うとラングリーは自分の机に戻る。リームは重い魔法語の教本の１冊を手に取りぱらぱらと中身を見ていたが、しばらくしてラングリーに言った。<br />
「あの。こういう勉強はうちでもできますから。ここに来ている間に、もっとこう&hellip;&hellip;実践的なこと教えてほしいんですけど」<br />
　『青』になるために宮廷魔法士ラングリーのもとで魔法を教わることになって、リームは自分なりに今まで独学で調べてきたことを復習してきた。この腹黒宮廷魔法士のことは今でも気に食わないし、飄々とした笑顔を見るたびに馬鹿にされているようで腹がたつけれど、その魔法の技術だけは素直に認めている。どんなことを教わるのだろうと、期待していたし不安もあったし――でも『青』になるために絶対負けるもんか！と気合いを入れてきたのだ。<br />
　それが、一番に渡されたのが語学の本。そして放置。正直拍子抜けだった。本を借りられるのはありがたいけれど、せっかくティナに送ってもらってまで来ているのだし、ここでしかできないことをやりたい。<br />
　ラングリーは書類らしき紙束から視線をあげ、相変わらずの人を小馬鹿にしたような（とリームには見える）微笑みで言った。<br />
「聞いてなかったのか？　話にならないんだ。ペンの持ち方も知らないやつに、恋文の書き方を教えられないだろう？　まず、ペンを持つ。で、字が丁寧に書ける。内容はそれからだ」<br />
「よく分からない例えですけど、自分でできる勉強はうちでやってきます。ここに来れるのは週に１度くらいなんですから、もっとためになることを教えてください」<br />
「おいおい、それが人にものを教わる態度なのか？　そんなやつは自分の娘じゃなかったら絶対弟子にしないぞー」<br />
「誰が娘なんですか！」<br />
　叫んでしまってから、にやにやと笑っているラングリーを見て、つい乗せられてしまう自分を悔しく思う。本当にこいつは性格が悪い。こっちだって『青』になるためじゃなかったら、絶っ対に弟子入りなんてしないんだから。<br />
「&hellip;&hellip;本を読むだけならここにいる必要ないですね。帰ります。おぼえてきたら、ちゃんと教えてくれるんですね？」<br />
「もちろんだとも。『青』の試験なんて簡単に通れるくらいのことは教えてやるさ。教えてはやるが、できるかどうかはお前次第だ」<br />
「必ずできるようになって、『青』になります！」<br />
　はっきりと断言したリームにラングリーは満足げにうなずいた。椅子から立ち上がると細身の銀の杖と巻物をひとつ持ってリームの机に近づく。<br />
「ティナ・ライヴァートはまだ迎えに来ないだろう？　俺が送ってやろう。本は俺が持つから、ちょっとこれを持っていてくれ。下の部屋に移動するぞ」<br />
　渡された巻物と杖を持ち、ラングリーのあとに続いて部屋を出るリーム。銀の杖は細いわりに重量があった。よく見ると表面には細かい呪文が刻まれている。なんとか意味の分かる部分はないかと目をこらして読んでみたが、何一つ分からなかった。<br />
　ひとつ下の階層の部屋は窓がないらしく扉を開けても真っ暗だ。ラングリーが入り口横の壁に触れて短い呪文を唱えると、いくつかのぼんやりとした魔法の明かりが部屋を照らした。何も物が置かれていない真四角の広い部屋。そこには床一面に大きな魔法陣が描かれていた。<br />
「汎用魔法陣だ。あえて記述を未完成にして使用用途を広げている。空間移動の魔法の大部分はそっちの銀の杖に入っている。まぁ内容は分からんだろうが、流れだけでも見ておくといい」<br />
　ラングリーは魔法陣の中央に魔法語の本を積み置くと、リームをその近くに呼び、杖と巻物を受け取った。ラングリーが呪文を唱えはじめると、床の魔法陣の線に沿って流れるように白い光が広がっていく。呪文が続くにつれて、その光は淡い紫色に変化し、眩しいほどの強さになった。そして、軽い浮遊感とともに、アメジスト色の光の向こう、石造りの部屋の風景が水面のように揺らぎ、別の景色に置き換わる――明るい日差しの下、通りに面した二階建ての店。青地に黄色の文字で書かれた看板。雑貨屋ラヴェル・ヴィアータだ。<br />
「空間移動の魔法が扱えるようになれば、魔法士としてはエリートだな。大貴族や商業組合、神殿、どこからも引く手あまただ。あっという間に城が建てられるほどの稼ぎになるぞ。そこらの魔法士じゃ空船の運転士がせいぜいだからな」<br />
「――え？　なんでおじさん、一緒に来たんですか？　私、本くらい持てますよ」<br />
　リームの疑問に、ラングリーは軽く呆れた溜息をついた。<br />
「お前なぁ、ティナ・ライヴァートを基準に考えるなよ。人を対象にした空間移動の魔法は、術者も一緒に移動するのが当たり前だ。途中で何かあったら取り返しがつかないだろ」<br />
　いつもティナに一人で移動させてもらっているリームとしては、そう言われてもいまひとつ納得できなかった。移動が一瞬すぎて途中で何かあるという事態が想像できない。空間移動の仕組みは難しすぎて、自力で調べた程度の魔法知識ではまったく欠片も理解できないのだ。リームはラングリーにそうなんですか、とだけ答えて、重い４～５冊の魔法語教本を両手でかかえた。<br />
　ちょうどその時、雑貨屋の入口が開き、噂のティナが顔を出した。<br />
「リーム、ラングリー！　どうしたの。早かったのね」<br />
「いえ、ティナ殿。リームが自習ならうちでやりたいと言いましてね。あぁ、あと、これはティナ殿に。約束のやつです」<br />
　ラングリーがティナに手渡したのは、執務室から持ってきた巻物だった。ティナは封を解いて初めの方を確認すると、わずかに眉をしかめつつもうなずいた。<br />
「分かった。ちょっと時間がかかるかもしれないけど、考えとく」<br />
「よろしくお願いしますよ。じゃあな、リーム」<br />
　ラングリーはリームとすれ違いざまにぽんぽんと頭をなで、両手が本でふさがったリームは抵抗のうなり声をあげて心底嫌そうに首をぶんぶんとふった。<br />
<br />
（２）店番のおともは魔法語教本<br />
<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;ル、ルェート&hellip;&hellip;Бл&zeta;=лб&zeta;&hellip;&hellip;」<br />
「んー、それは多分、б&zeta;=л」 じゃないかなぁ？」<br />
「あ、そっか&hellip;&hellip;」<br />
「そのあたり活用が難しいよねぇ。私も昔、おぼえるの大変だったよ」<br />
　ラングリーに魔法語の本を借りてから、一ヶ月が経った。<br />
　夏の暑い盛りを乗り越えて、ようやく涼しい風が吹き始めた今日この頃。リームは休みの時も店番をしている時も、常に魔法語の本を片手に勉強していた。<br />
　相変わらず客の来ない雑貨屋の店内でカウンターの椅子に腰かけて勉強しているリームを、ティナは微笑ましく見守っていた。<br />
「魔法語と記述魔法語の違いは分かりやすいんですけど、魔法語と精霊語が似ているようで全然違うところもあったりして、ごっちゃになるんです。ティナはライゼール王国の出身だから、精霊語は小さい頃からできたんですか？」<br />
　ライゼール王国はクロムベルク王国から北の海を渡った先にある国で、精霊派＜エレメンツ＞が国教だったはずだった。精霊使いも多く、精霊語もずっと一般的に違いない。しかしティナは首をふった。<br />
「ううん。私は田舎の村で育ったから、そもそも読み書きできる人も少なかったし、精霊使いも魔法士もほとんどいなかったの」<br />
「そうなんですね。やっぱりティナは魔法士になるために都会に出たんですか？」<br />
「いや、村で唯一の魔法士だった先生に教わったんだ。でも途中でお母さんが病気になっちゃったから、治療法を探すために見習いのまま風従者になって村を出たんだけどね」<br />
　風従者は、一定の住まいを持たず自分の技術や資質だけを頼りに旅をして暮らす人々のことだ。いわゆる何でも屋のようなもので、浮浪者のような人から騎士のような身なりの人まで様々だ。そういえば、フローラ姫からティナは昔風従者だったらしいと話を聞いたおぼえがある。<br />
「それで、お母さんの病気は治ったんですか？」<br />
「うん。無事病気も治って、前よりも元気&hellip;&hellip;元気？　うん、まぁ元気といえば元気になったかな」<br />
　微妙な言い回しだったが、ティナが笑顔だったので、リームは安心した。<br />
　しかし、こうしてティナの話を聞いていると、人間かどうか疑っていたことが完全に間違いに思えてくる。作り話めいたところはまったく感じない。<br />
　リームはついまじまじとティナを見てしまい、それに気がついたティナはちょっと勘違いしたらしく、軽く片手を振りながら言いつくろった。<br />
「あ、大丈夫よ、ほんとに元気だから。それで、リーム、明日ラングリーのところに行くってことでいいんだよね？」<br />
「はい。この前、魔法の鳥と話して、だいぶ魔法語おぼえたことは認めてもらいましたから。やっとこれからが本番です。なんでもフィードの感知と魔力の広げ方？をやるとか言ってました」<br />
「あぁ&hellip;&hellip;そうなんだ。うん、まぁそうだろうね&hellip;&hellip;」<br />
　リームの言葉を聞いたティナは、何故か気まずそうな表情をした。なんとなく視線をナナメ上にさまよわせている。リームにはその理由が見当つかず、率直に尋ねた。<br />
「なにか問題があるんですか？」<br />
　ティナはそのままの表情で視線をリームに戻し、言葉を選びながら言う。<br />
「まぁ、なんていうか&hellip;&hellip;ラングリーから聞くかもしれないけど、たまに私の周りでは魔法の力が正常に働かないかもしれないから&hellip;&hellip;習ってきても、ここで練習するのは難しいかも」<br />
「えっと、それってどういうことですか？」<br />
「うーん、なんだろ。伊達に不思議な雑貨屋じゃないっていうか、まぁ不思議じゃなくなるのが目標なわけだけど、現時点では難しい&hellip;&hellip;かも。まぁ、そういう魔法があるって思ってくれれば」<br />
　魔法の力が正常に働かなくなる結界のような魔法をティナが使っているということだろうか？　だったらそう言ってくれればいいのにとリームは思ったが、そう言わないということはそれは正しい表現ではないのだろう。<br />
　正直まったく分からなかったが、リームはとりあえず分かりましたと答えるしかなかった。<br />
　人間のようにしか見えないのに時々こういうところが怪しさ満点の、相変わらず正体不明な謎多き店主だった。<br />
<br />
（３）宮廷魔法士の弟子<br />
<br />
　美しく整えられた花壇と石畳の小道、まだ日が真上に昇り切っていない柔らかな陽射しの中、さわさわと風だけが通り抜ける。<br />
　そんな晩夏のクロムベルク城の中庭に、紫色の光があらわれた。その光が薄れ、光の中からシルエットが見えてくる。灰色のワンピースを着て分厚い本を何冊も持ち、黒髪を肩までおろした少女――リームだ。<br />
　約１カ月ぶりのクロムベルク城。中庭には石造りの塔が建っていた。宮廷魔法士ラングリーの執務室や居住場所がある塔だ。<br />
　やっと今日から本格的に魔法を教えてもらえる。ラングリーに会うのは嫌だけれど、魔法を教えてもらえるのは楽しみにしていた。<br />
　魔法語を勉強していて実際自分でも魔法を使ってみようと試したのだが、滅多にうまくはいかなかった。＜小さき光＞ぐらいの基本的な魔法からちょっとでも他の要素を足そうとすると、とたんに発動しなくなる。呪文の発音はティナにも確認してもらって間違いなく正しいはずなのに。やはりなんらかのコツがいるようだった。<br />
　塔の入口の大きな木戸を背中で押し開けるようにして中に入る。１階はシンプルな応接間のような部屋になっていた。今は誰もいない。入口のすぐ横から壁に沿ってらせん階段があり、上の階へと続いている。<br />
　重い本を両手にかかえて最上階まで上がるのは少々骨が折れるが、文句は言っていられない。リームはよしっと心の中で気合いを入れて、石造りの階段をのぼりはじめた。<br />
<br />
＊　　　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　　　＊<br />
<br />
　軽く息をあげながら最上階にたどり着いたリームは、ラングリーの執務室の扉の前で、一応礼儀上ノックをしなければと本を一旦床に置こうとした。<br />
　と、その時、突然扉が開いた。外開きの扉は当然目の前にいたリームにぶつかりそうになる。<br />
「っきゃ！？」<br />
「おおっと、すまない！」<br />
　よろけたリームを支えたのは、しかしラングリーではなかった。<br />
　背の高さはリームよりわずかに高い程度、おそらく年齢もそう変わるまい。肩より短い蜂蜜色の髪を外にはねさせ、瞳は濃い青色。そしてどこかで見たような黒いローブを着た少年だった。<br />
「大丈夫か？　重そうな本だな。師匠に頼まれたのか。あいにく今師匠は出かけているんだ。もうそろそろ帰ってくると思うんだが&hellip;&hellip;本は渡しておくよ。ありがとう」<br />
　そう言いながらリームの抱えている本を受け取る少年。リームはあっけにとられてしまって咄嗟に反応できなかったが、すぐに状況を飲みこんだ。まるであつらえたように同じローブを着ていればおのずと答えは分かってくる。師匠とは、ラングリーのこと。弟子はとらないと言っていたが、いるではないか。<br />
「&hellip;&hellip;？　どうした？　何か他に言いつかっていることがあるのか？」<br />
　魔法語教本を机に運びながら少年がリームに聞く。間違いなくこの少年はリームのことを小間使いだと思っているのだろう。まぁ、慣れてるけどね&hellip;&hellip;リームは少し遠い目をして答えた。<br />
「あの、私は本を届けにきたんじゃないの。私は魔法を教わりにきてて&hellip;&hellip;」<br />
　リームが言い終わる前に、少年は納得の表情でうんうんと大きくうなずきながら言った。<br />
「あぁ、なるほど。うんうん、そうだな、師匠に憧れるのはよーく分かるぞ。師匠は世界で一番、聡明で強力で独創的な素晴らしい最高の魔法士だからな！　しかし残念なことに、師匠はそう簡単には弟子をおとりにならないんだ。ここまで来る行動力は認めるが、弟子になるのは無理だろう。諦めた方がいい」<br />
「いや、そーじゃなくて&hellip;&hellip;」<br />
　その時、階段から足音が聞こえ、リームが振り向くと、いつも変わらぬ飄々とした笑顔のラングリーがあがってくるところだった。<br />
「おう、お前たち。そんな入口につったって、何をやっているんだ？」<br />
　部屋の中の少年もラングリーに気付き、ぱっと笑顔になる。なかなか華やかな見た目の少年だ。黒いローブよりも銀糸の刺繍のはいった豪華な服のほうが似合うだろう。<br />
「師匠！　おかえりなさい！　この子が本を運んできてくれたのですが、師匠が頼んだものですか？」<br />
「あぁ、そういえば、お前たち顔を合わせるのは初めてだったなぁ」<br />
　そう言うラングリーが、一瞬いたずらを企む子供のような笑みを浮かべたのをリームは見逃さなかった。こいつ、何かイヤ～なこと思いついたに違いない。警戒するリームをよそにラングリーは明るい笑顔で続けた。<br />
「リーム、こいつはミハレット。まぁ一応、俺の押しかけ弟子みたいなもんだ。ミハレット、こいつはリーム。新しい弟子だ。ふたりとも仲良くするんだぞ」<br />
　予想がついていたリームはそれほど驚かなかったが、飛び上るほど驚いて大声をあげたのは少年――ミハレットのほうだった。<br />
「あああ、新しい弟子ぃっ！？　ししし師匠っ、どういうことですかっ！？　オレは、あんなに！　あーんなに苦労して弟子にしていただいたのにっ！！　急にひょいと来て弟子になれるなんて、おかしいですっ！！」<br />
「俺がいつ誰を弟子にしようと、俺の勝手だろう？」<br />
　涼しげに言うラングリーに、ミハレットは頭をかかえて身をよじる。あまりの興奮具合にリームは思わず身を引いていた。<br />
「それは！　そうですが！　――あああ、納得できませんっ！！　師匠っ！！　オレは一番弟子としてっ！！　この子が師匠の弟子にふさわしいかどうか、試させていただきますっ！！」<br />
「んー、まぁ、お前ならそう言うと思ったさ。というわけだ、リーム。こいつを納得させるのは大変だぞ？　がんばれよ」<br />
　ラングリーに満面の笑みでぽんと肩を叩かれ、リームはうろたえた。<br />
「えっ、ちょ、ちょっと待ってください！　今日こそは魔法を教えてくれるって、言ってたじゃないですかっ！」<br />
「こいつにギャーギャーわめかれながらか？　それは無理だろう。ま、何事にも試練はつきものだからな」<br />
　その笑顔は、明らかに状況を楽しんでいる表情だった。こいつ&hellip;&hellip;またこうなることを分かっていて黙っていたに違いない。性根が腐っている。この腹黒中年魔法士がっ。<br />
　リームの呪いの視線にも、ラングリーはどこ吹く風といったような明るい表情だった。<br />
<br />
（４）弟子の試練<br />
<br />
　ラングリーは笑顔で執務室の中に去り扉は閉められ、部屋の外に残されたのはリームとミハレットだけだった。<br />
「よーしっ、まずは、お前がどれだけ師匠のことを知っているか試験してやろう！　弟子になるためにはまず師匠のことを知らなければならないからな！」<br />
「だから、ちょっと待ってってば！　私は好きであいつに魔法を教わってるわけじゃないんだから！」<br />
「あ・い・つ&hellip;&hellip;？　まさか、まさかまさかそれは師匠のことじゃないだろうな！？　お、お前は弟子の風上どころか風下にも置けないというよりむしろ人間として救いようのない奴だな！？　どういう礼儀作法を教わって育ったんだ！！」<br />
　面倒くさい。すごい面倒くさい。なに、こいつ。<br />
　リームは苛立ちを抑えきれなかった。やっと魔法を教えてもらえると期待して来たのに、何故こんな面倒なヤツの相手をしないといけないのか。<br />
　しかし『青』に推薦してもらうためには、どうしても宮廷魔法士ラングリーの弟子という地位は必要だった。才能がないと断言されたからこそ、それが唯一の『青』への道。<br />
　深呼吸。ぐっとお腹に力を入れる。なるべく落ち着いた大人びた声が出るように努めた。<br />
「ごめんなさい。確かに言い方が悪かった。私は『青』に推薦してもらうために、あい&hellip;&hellip;宮廷魔法士ラングリーの弟子である必要があるの。二番弟子でも別に文句はないから、認めてくれない？」<br />
「お前、『青』に推薦してもらうために師匠の弟子になりたいのか？　動機が不純だ。そんなことでは、師匠の弟子として認められないな！」<br />
　こいつ&hellip;&hellip;話にならない！<br />
　リームはゆらゆらと怒りをまとってミハレットを睨みつけた。ぐっと握ったこぶしがふるふる震える。射殺ろさんばかりの視線に、さすがのミハレットも気圧されたようだ。<br />
「う、うん。まぁ、お前のがんばり次第では、認めてやらんこともないかなー」<br />
「&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;で、何をすればいいわけ&hellip;&hellip;&hellip;&hellip;」<br />
「えーと、まず、落ち着くんだ。呪い殺しそうな視線で人を見るな。魔法士たるもの、いついかなる時でも冷静沈着でなければならないって師匠が言ってたぞっ」<br />
　とりあえず、リームは矛を収めた。こいつがラングリーの弟子である事実が変わらないのであれば、一刻も早くこの茶番を終わらせたい。<br />
「なるべく早く終わらせてよね。私はこんなことする暇があったら魔法を習いたいの。あんたもそうじゃないの？」<br />
「お前、本当に口が悪いな&hellip;&hellip;オレはあんたじゃなくてミハレットだ。ミハレット・エフォーク。お前はリームと言ったか。家名は？」<br />
「家名なんてあるわけないよ。孤児なんだから」<br />
「&hellip;&hellip;そうなのか。それは失礼を」<br />
　おそらく無意識だろう、胸に片手をあてて謝罪するミハレットの憐れみの混ざる視線に神経がざらざらと逆なでされるようで、リームは軽く唇を噛んでそれを抑えた。ミハレットの言葉遣いと丁寧な所作に貴族の影が見えることに、更に嫌悪感をつのらせる。<br />
　私、こいつ、きらい。オジサンの次ぐらいにキライだ。<br />
<br />
＊　　　　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　　　　＊<br />
<br />
「次は、師匠の部屋の掃除だ。師匠のために自ら進んで掃除をするのが、良い弟子というものだ！」<br />
　最初の試験、師匠のことをどれだけ知っているか、というのは、結局、ミハレットによる素晴らしい師匠の経歴の数々を聞かされるだけに終わった。出会ってから一刻も経たないうちに、ミハレットがラングリーに異常な敬愛を抱いていることはよーく分かった。分かってもなんのためにもならなかったが。<br />
　続いてミハレットに連れてこられたのは、塔の２階にあるラングリーの自室部分だった。ベッドと書き物机とクローゼットしかない部屋で、それなりに整頓されている。<br />
「さぁ、それでは、がんばりたまえ！」<br />
「ふーん。まぁいいけど、掃除するのになんでバケツと雑巾しか持ってきてないわけ？」<br />
「&hellip;&hellip;は？　他に何か必要なのか？」<br />
「掃除するには、まずハタキで上から順にほこりを落として、それから床を掃いて、水拭きはその後でしょう」<br />
　イライラをそのまま言葉に乗せてとげとげしく言うリームに、ミハレットは少し意気を落とす。<br />
「そ、そうか&hellip;&hellip;そういえば、女中たちがそういう道具を持っていた気がしないでもないな」<br />
　お貴族様はこれだから。きっと掃除なんてここに来て初めてやったに違いない。リームは肩をすくめて物置に掃除用具を取りに行った。<br />
　神殿付属の孤児院で育ったリームにとって掃除はお祈りと同じぐらい日常的なもの。てきぱきとこなす様子をミハレットは部屋の入り口でぽかーんと見ていた。<br />
　ひととおり掃除を終え、道具を片付け終わったリームはミハレットに言った。<br />
「さ、終わったけど、次は何すればいいの？」<br />
　不満を隠さず刺すように睨みつける。しかしミハレットはきっちり掃除された部屋を眺めて感心したように言う。<br />
「すごいなぁ&hellip;&hellip;リームは女中見習いなのか？　まぁ城に入れるんだからそうなんだろうな」<br />
　なんで貴族ってどっか抜けてるような天然マイペースが多いのか。かすかにフローラ姫のことを思い出しつつ、リームはため息をついた。<br />
「いや、掃除ぐらい貴族じゃなければ誰でもできるでしょ。私は雑貨屋で働いてるの。ミハレットみたいに毎日暇してる貴族ならいいんでしょーけど、私はわざわざお休みもらってここに来てるわけ。本当に早く魔法の勉強したいんだからね！」<br />
「オレは家の名前は捨てたんだからもう貴族じゃないぞ。魔法士として生きていくんだ。そもそも、魔法の力は平等だ。貴族も庶民もない」<br />
「はいはい。ならきっと、住むところも食べ物も自分で手に入れてるんでしょうね？」<br />
「うっ&hellip;&hellip;いや、それは、ちょっと家の名前で借りているだけだ。いずれ魔法士としての稼ぎで返すんだ」<br />
　しどろもどろなミハレットに、リームは再び大きなため息をついた。これみよがしなため息だったが、ミハレットに効果は薄いらしい。<br />
「はい、次ね、次。ていうか、もう弟子として認めてくれる？」<br />
「いや、まだだ。世界一の師匠の弟子ならば、世界一の弟子であることを目指さなければ！　次は、差し入れだ。調理場に行くぞ！」<br />
　ラングリーに関わることだけ不必要なほどやる気に満ち溢れるミハレット。こんな調子で付きまとわれたから弟子にせざるを得なかったのだろうか。本当に面倒くさいやつだった。<br />
<br />
＊　　　　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　　　＊<br />
<br />
　クロムベルク城の調理場は広間のように大きく、何十人もの調理師が働いている。王様や王妃様のお食事はもちろん、定期的に開かれる晩餐会の食事や、大臣や神官、近衛兵、宮廷魔法士など城に住み込みで働いているものたちの食事も作っていた。<br />
　ミハレットは城の中では有名らしい。とても貴族が通らないような通用口を通っていても使用人たちは会釈をするばかりだ。慣れた様子で調理場に入っていくと、ひとりの体格の良い調理師が声をかけてきた。<br />
「おや、ミハレット坊ちゃん。今日もラングリー様への差し入れですかな？」<br />
「あぁ、そうなんだ。クロッツ菓子はあるかな？」<br />
「それが、あいにく今きらしておりましてねぇ。まぁ材料はありますから、１刻ほどでできあがります。お部屋ででもお待ちいただければ届けさせましょう」<br />
「いや、取りにくるよ。よろしくな」<br />
「&hellip;&hellip;え？　作るんじゃないの？」<br />
　先ほどの掃除のように自分でやるのかとばかり思っていたリームは、ミハレットのうしろでつぶやいた。ミハレットが軽く驚いた様子でふりかえる。<br />
「作る？　自分でか？　&hellip;&hellip;あぁ、そうか。リームは料理もできるのか&hellip;&hellip;なぁ、ドルマー、オレにも作れるかな？」<br />
　どうやらミハレットにはそもそも料理を自分で作るという発想がなかったらしい。聞かれた調理師は困った顔をして片手で帽子を直しながら言った。<br />
「いやぁ&hellip;&hellip;それほど難しくはないですがね。坊ちゃんに火傷でもされたら、あっしらが怒られますからねぇ」<br />
「じゃあ、私だけやればいいですね。ミハレット坊ちゃんはお部屋ででもお待ちいただければお届けしますよ？」<br />
　リームがからかう調子で言うと、ミハレットはむっとした表情で首をふった。<br />
「いやっ、オレもやる！　一番弟子として、負けてはいられないっ」<br />
　こうして何人もの調理師に見守られながらリームとミハレットはクロッツ菓子を作り始めた。<br />
　ミハレットの不器用さは目を見張るものがあった。卵をかき混ぜるだけでこぼしそうになる。リンゴを切る時は、どうかそれだけは代わりにやらせてくださいというドルマーに断固として譲らずに挑戦、予想通り指を切りそうになり、見守る調理師一同が息をのんだ。<br />
「まったく、お嬢ちゃんが変なことを言いださなきゃなぁ&hellip;&hellip;それにしてもお嬢ちゃん見ない顔だけど、新人かい？　随分坊ちゃんと仲が良いように見えるが」<br />
　ミハレットが四苦八苦している間、手際良く生地作りを終わらせていたリームにドルマーが言った。<br />
「まさか！　仲良くなんてないですよ。今日会ったばかりです。私、宮廷魔法士の弟子になりました、リームといいます」<br />
「ほほぉ、そりゃあまた。ラングリー様が新しい弟子をとるとはね。坊ちゃんが弟子になると言いだしたときは、それはもう大変だったさ。ラングリー様は貴族にも容赦しないから、いつ坊ちゃんがやられるかと心配したもんだが、さすがに子供には手を出しづらかったようだねぇ。とうとう折れたのが１年くらい前かな。お嬢ちゃんはいったいどうやって弟子になったんだい？」<br />
「まぁ&hellip;&hellip;なりゆきで」<br />
　フローラ姫が自分を引き取りたいなんて言わなければラングリーと出会うこともなかっただろうし、そうだとしたら『青』のひとりから直々に才能がないと断言された自分が『青』を目指すのは途方もない話だったろう。<br />
　本当はフローラ姫やラングリーに頼るのは嫌だった。自分ひとりの力でなんとかしたい気持ちはあった。しかし、どうしても『青になるのは不可能でしょう』という言葉が頭から離れない。そして『ラングリーの弟子になれば、青になれるかもしれない』という言葉が。憧れの青の魔法監視士から言われた言葉は、重い。<br />
　自分の矜持と夢とを天秤にかけて、リームは夢を選んだのだった。<br />
<br />
<br />
　リンゴを混ぜ込んだ焼き菓子『クロッツ菓子』は、リームの作ったものはそれなりに形になっていたがミハレットのものはぼろぼろと崩れて菓子の形をなしていなかった。<br />
「なんでこうなるんだ&hellip;&hellip;？　リームと何が違うんだ？」<br />
　中庭の塔に戻る道すがら、ミハレットは自分の作った菓子を見てため息をついた。天然マイペースで猪突猛進なミハレットも落ち込むときは落ち込むらしい。<br />
「でも、味はそんなに違わなかったし、いいんじゃない？」<br />
　あまりの気の落としように思わず慰めの言葉をかけてしまうリーム。超絶不器用ながら真剣にお菓子作りに取り組んでいたのを見ていたら、馬鹿にする気にはなれなかった。面倒くさいやつですごく嫌な奴だけど、真っ直ぐなんだよなと思う。そこが某腹黒オジサンとは違うところだ。<br />
「いやっ、師匠に食べていただくんだったら、ちゃんとしたものでないと！　とりあえず、今日はリームのだけ渡してくれ。次こそはちゃんと作るからな」<br />
　そして、こんなに真っ直ぐ慕う対象がなんでアレなんだろうと、ものすごく不思議だ。やはり魔法の技術がすべてなのだろうか。リームには分からなかった。<br />
　ふと、塔の入口の前に人が立っているのが見えた。金髪を高い位置でひとつにまとめ、動きやすい普段着を着た若い女性――ティナだ。リームははっと息をのんだ。いつの間にか予定の時間を過ぎていたのだ。どれくらい待たせてしまっただろう。リームは塔にむかって駆けだした。<br />
「ティナ！　ごめんなさい。うっかりしてました。待ちましたか？」<br />
　そんなリームをティナは笑顔で迎える。<br />
「ううん、全然大丈夫よ。ちょっとラングリーに用事もあったし、問題ないわ。そっちが例のミハレットくん？」<br />
　ラングリーから話を聞いたのだろう、追いついたミハレットを見てティナが言う。ミハレットのほうもリームに聞いた。<br />
「リーム、この人は？」<br />
「私が働いている雑貨屋の店主さんだよ。いつも迎えに来てもらってるの」<br />
「初めまして、ミハレットくん。ティナ・ライヴァートよ」<br />
「初めまして。ミハレット・エフォークだ。どうぞお見知りおきを」<br />
　片手を胸にあてて一礼するミハレットに違和感を抱かないらしいティナは、やはりある程度貴族との付き合いに慣れているようだった。<br />
「どうする？　リーム、もう帰る？　ラングリーに挨拶してからにする？」<br />
「挨拶は別にいいんですけど、これを届けなきゃいけないんです。あと、魔法語の本も借りて帰りたいですし」<br />
「うん。じゃあ行こうか」<br />
　３人は塔をあがり、執務室へとやってきた。ティナがノックをして扉をあける。ラングリーは正面の机に座り何やら真剣な顔で巻物を見ていた。３人を見ると、ふっといつもの笑顔を見せたが――目が笑っていない、とリームは思った。<br />
「おかえり、リーム、ミハレット。どうだ？　試練は乗り越えられそうか？」<br />
「さすが師匠が選んだだけあって見込みはあると思います。ですが！　まだ正式に認めるわけにはいきません！」<br />
　あれだけやって、まだなの？　リームは隣からミハレットを睨みつけたが、ミハレットは気づいていない様子だった。<br />
「クロッツ菓子、作ってきましたよ。ミハレットがいつも差し入れしてるそうですね？　どうぞ」<br />
「おお、悪いな。なんだ、リームが自分で作ったのか？　これはフローラにやったら大喜びだな。持っていってやらないと」<br />
　リームが渡した袋から菓子を取り出して見ながら、満面の笑みで言うラングリー。その言葉をミハレットは不思議に思ったようだ。<br />
「フローラ様に？　フローラ様はそれほどクロッツ菓子がお好きでしたでしょうか」<br />
　いけない、バレる。リームは咄嗟に思い、その隠したい事柄を自分がいまだ認めてないことには気がつかず、声をあげた。<br />
「それじゃ、私は帰りますね！　魔法語の本、借りていきます。さぁ、ティナ、帰りましょう」<br />
　横の机にまとめて置いてあった魔法語の本をかかえ、ティナに言う。ティナはそんなリームの懸念に気付いたのだろう、仕方がないわねというような笑みを浮かべた。<br />
「またね、ラングリー。ミハレットくん」<br />
　ふたりが部屋を出る直前、ラングリーが口を開いた。<br />
「ティナ・ライヴァート殿。貴方は、これを俺に渡す意味を、本当に分かっているのですか？」<br />
　ラングリーの表情に、いつもの飄々とした笑顔はない。真っ直ぐにティナを見ていた。一方のティナは、けろっとした笑みで小首をかしげる。<br />
「意味も何も、あなたが必要だって言ったんじゃない。私は、あなたがそれを持つことに、何か問題があるとは思わない」<br />
「貴方は俺を信用しすぎているのか、見くびりすぎているのか、どちらかですね」<br />
「どちらかだったら何か問題あるの？　私は、そうは思わないってことよ」<br />
　にっこり笑うティナとその隣で目をぱちぱちさせながら様子を見ていたリームが、淡い紫色の光に包まれた。一瞬で強さを増した光は突然ふっと消え、その後にはすでにふたりの姿はなかった。<br />
「&hellip;&hellip;師匠、あの人は、一体&hellip;&hellip;？」<br />
　ミハレットが茫然と尋ねる。ラングリーは長く息をつき、髪をかきあげた。<br />
「気にするな。知らない方がいいことも、世の中にはあるってことだ」]]>
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    <category>■雑貨屋[小説本編]第３話</category>
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    <pubDate>Mon, 03 Dec 2012 10:42:23 GMT</pubDate>
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    <item>
    <title>（６）</title>
    <description>
    <![CDATA[　結局、ティナに先日のラングリーとのやりとりの意味を聞いても、いまひとつリームに理解できない答えが返ってくるばかりだった。<br />
ティナの話をまとめると、『青』の対応を頼んだお礼と今後『青』がラングリーを調査したときの対策のために、『雑貨屋の不思議を背負える何か』を渡したらしい。<br />
おそらく魔法だとリームは思うのだが、つまりこの雑貨屋が奇妙な原因は、ティナが何か魔法をつかっているせいなのだろうか。それと同じ魔法を書いた巻物をラングリーに渡したということなのだろうか。<br />
しかし、ラングリーの様子が只事ではなかった。いつも状況を面白がっているようなにやにや笑い（とリームには見える）を浮かべているのに、あんなに真剣なまなざしは初めてみた。これを渡す意味を分かっているのかとティナに聞いていた。ティナが思っている以上の意味が、あの巻物――あるいは魔法にはあるのだろうか。ティナは問題あるとは思わないと言っていたが・・・・・・。<br />
「リーム～！　そろそろ時間じゃなーい？」<br />
階段下からティナの呼び声が聞こえてきて、雑貨屋の２階の自室にいたリームは、はーいと大きく返事をした。<br />
前回、ラングリーの塔へ行ってから１週間が経っていた。今回はミハレットがいないといいなぁと思いつつ、リームは魔法語教本をまとめて、１階に下りた。<br />
「お待たせしました」<br />
「準備はできた？　じゃあ、送るわよ。迎えはいつも通り４刻くらいでいいかな？」<br />
「はい。いつもありがとうございます」<br />
「いいのよ。魔法は減るもんじゃないしね」<br />
あらわれた紫色の光がリームを包み込む。呪文の詠唱無しで魔法を使えるのは、魔法具に事前に呪文を織り込んでおくからだ。ティナが身につけている魔法具は呼び鈴と連動しているイヤリングくらいだから、たぶんとてつもなく複雑な魔法があのイヤリングには込められているのだろう。<br />
リームの目の前が紫色の光でいっぱいになった次の瞬間には、すでに薄れつつある光の向こうには、ラングリーの塔が見えていた。<br />
<br />
＊　　　　　　　　　　　　　　　　　＊　　　　　　　　　　　　　　　　　　＊<br />
<br />
「待ってたぞ、リーム！　今日も弟子の心意気を教えてやろう！」<br />
塔の入口を入ってすぐ、リームを出迎えたのは相変わらずやる気満々のミハレットだった。<br />
やっぱり、いた・・・・・・。リームはうんざりしたため息をついた。もしかしたら初めてここに来たときのように、ミハレットが居ない日もあるのかもしれないと、淡い期待もいだいていたが無駄だったようだ。<br />
なんとかミハレットと遭わないように日程を調節して魔法を教えてもらえないかとラングリーにも伝えたのだが、結局今逃げても問題は先延ばしになるばかりだろうと言われて、それは確かにその通りだったから納得せざるをえなかった。<br />
逃げるのではなく、ちゃんと真正面から受けて立つしかないのだ。<br />
魔法語教本はとりあえず１階の応接室に置いて、ミハレットに連れられるまま、リームは城内へ向かう。<br />
「宮廷魔法士の弟子たるもの、それなりの知性と気品を兼ね備えてなければならない。まずは形からだ。リームの恰好は魔法士としてふさわしくない」<br />
意気揚々と語るミハレット。リームは庶民は魔法士にふさわしくないと言われたように感じた。これだから貴族は。皮肉をこめて言った。<br />
「魔法の力の前では、貴族も庶民もないんじゃなかったの？」<br />
「貴族も庶民も関係なく、魔法士らしい格好すれば皆魔法士に見えるだろう？　なにより、かっこいいじゃないか」<br />
師匠であるラングリーと全く同じ黒のローブを着て、髪型まで似せてしまうミハレットは、<br />]]>
    </description>
    <category>ストーリー（推敲前）</category>
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    <pubDate>Sat, 09 Jul 2011 22:26:55 GMT</pubDate>
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  </item>

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