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散らかった机の上
ライトファンタジー小説になるといいなのネタ帳&落書き帳
Admin / Write
2024/05/19 (Sun) 08:54
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2011/07/09 (Sat) 04:58

「・・・・・・ル、ルェート・・・・・・Блζ=лбζ・・・・・・」
「んー、それは多分、бζ=л」 じゃないかなぁ?」
「あ、そっか」
「そのあたり、活用が難しいよねぇ。私も昔、おぼえるの大変だったよ」
ラングリーに魔法語の本を借りてから、一ヶ月が経った。
夏の暑い盛りを乗り越えて、ようやく涼しい風が吹き始めた今日この頃。リームは休みの時も店番をしている時も、常に魔法語の本を片手に勉強していた。
相変わらず暇な雑貨屋の店内で、カウンターの椅子に腰かけて勉強しているリームを、ティナは微笑ましく見守っていた。
「魔法語と記述魔法語の違いは分かりやすいんですけど、魔法語と精霊語が似ているようで全然違うところもあったりして、ごっちゃになるんです。ティナはライゼール王国の出身だから、精霊語は小さい頃からできたんですか?」
ライゼール王国はクロムベルク王国から北の海を渡った先にある国で、精霊派<エレメンツ>が国教だったはずだった。精霊使いも多く、精霊語もずっと一般的に違いない。しかし、ティナは首をふった。
「ううん。私は田舎の村で育ったから、そもそも読み書きできる人も少なかったし、精霊使いも魔法士もほとんどいなかったの」
「そうなんですね。やっぱりティナは、魔法士になるために都会に出たんですか?」
「いや、村で唯一の魔法士だった先生に教わったんだ。でも途中でお母さんが病気になっちゃったから、治療法を探すために、見習いのまま風従者になって村を出たんだけどね」
風従者は、一定の住まいを持たず、自分の技術や資質だけを頼りに旅をして暮らす人々のことだ。いわゆる何でも屋のようなもので、浮浪者のような人から騎士のような身なりの人まで様々だ。そういえば、フローラ姫からティナは昔風従者だったらしいと話を聞いたおぼえがある。
「それで、お母さんの病気は治ったんですか?」
「うん。無事病気も治って、前よりも元気・・・・・・元気? うん、まぁ元気といえば元気になったかな」
微妙な言い回しだったが、ティナが笑顔だったので、リームは安心した。
しかし、こうティナの話を聞いていると、人間かどうか疑っていたことが完全に間違いに思えてくる。作り話めいたところはまったく感じない。
リームはついまじまじとティナを見てしまい、それに気がついたティナはちょっと勘違いしたらしく、軽く片手を振りながら言いつくろった。
「あ、大丈夫よ、ほんとに元気だから。それで、リーム、明日ラングリーのところに行くってことでいいんだよね?」
「はい。この前、魔法の鳥と話して、だいぶ魔法語おぼえたことは認めてもらいましたから。やっとこれからが本番です。なんでもフィードの感知と魔力の広げ方?をやるとか言ってました」
「あぁ・・・・・・そうなんだ。うん、まぁそうだろうね・・・・・・」
リームの言葉を聞いたティナは、何故か気まずそうな表情をした。なんとなく視線をナナメ上にさまよわせている。リームにはその理由がまったく見当つかなかった。
「なにか問題があるんですか?」
リームが率直に聞くと、ティナは表情はそのままに視線をリームに戻し、言葉を選びながら言う。
「まぁ、なんていうか・・・・・・ラングリーから聞くかもしれないけど、たまに私の周りでは魔法の力が正常に働かないかもしれないから・・・・・・習ってきても、ここで練習するのは難しいかも」
「えっと、それってどういうことですか?」
「うーん、なんだろ。伊達に不思議な雑貨屋じゃないっていうか、まぁ不思議じゃなくなるのが目標なわけだけど、現時点では難しい・・・・・・かも。まぁ、そういう魔法があるって思ってくれれば」
魔法の力が正常に働かなくなる結界のような魔法をティナが使っているということだろうか? だったらそう言ってくれればいいのにとリームは思ったが、そう言わないということはそれは正しい表現ではないのだろう。
正直まったく分からなかったが、リームはとりあえず分かりましたと答えるしかなかった。
人間のようにしか見えないのに、時々こういうところが怪しさ満点の、相変わらず正体不明な謎多き店主だった。


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2011/07/05 (Tue) 05:45

どんっ、とリームの目の前に積まれたのは、分厚い4~5冊の本だった。どれも布張りのしっかりした装丁で、1つ1つが片手で持ち運ぶのは大変そうなほどの重さに見える。
「基礎魔法語、記述魔法語、精霊語。発音に特化した教本に、初歩の魔法陣形式。とりあえず、これをすべておぼえろ。文字を知らないと話にならないからな」
「分かりました。この本は持って帰ってもいいんですか?」
「あぁ、良いぞ。ただ、城の蔵書から借りてきたものだから、ちゃんと返すようにな」
宮廷魔法士ラングリーの執務室は、クロムベルク城の中庭に建つ塔の上にあった。塔にはいくつか部屋があるらしいが、リームがいるのはその最も高い位置にある部屋だ。正面に飾り格子のついた窓と、その手前に磨き上げられた大きな木机。左右の本棚には大量の本と巻物、アミュレットのようなもの、そして何故かレースで飾られた人形や淡いピンク色の花飾りなど、似つかわしくないものがところどころに置かれていた。
中央の机以外に、片側の壁沿いに長細い机があり、もともとは小物が置かれていたのだろうか、今は除けられて空いた場所をリームは使っていた。
「じゃ、がんばれよ」
軽く右手をあげてそう言うと、ラングリーは自分の机に戻る。リームは重い魔法語の教本の1冊を手に取り、ぱらぱらと中身を見て、ラングリーに言った。
「あの。こういう勉強はうちでもできますから、ここに来ている間に、もっとこう・・・・・・実践的なこと教えてほしいんですけど」
『青』になるために宮廷魔法士ラングリーのもとで魔法を教わることになって、リームは自分なりに今まで独学で調べてきたことを復習してきた。この腹黒宮廷魔法士のことは今でも気に食わないし、飄々とした笑顔は馬鹿にされているようで腹がたつけれど、その魔法の技術だけは素直に認めている。どんなことを教わるのだろうと、期待していたし不安もあったし、でも『青』になるために絶対負けるもんか!と気合いを入れてきたのだ。
それが、一番に渡されたのが語学の本。そして放置。正直、拍子抜けだった。本を借りられるのはありがたいけれど、せっかくティナに送ってもらってまで来ているのだし、ここでしかできないことをやりたい。
ラングリーは書類らしき紙束から視線をあげ、相変わらずの人を小馬鹿にしたような(とリームには見える)微笑みで言った。
「聞いてなかったのか? 話にならないんだ。ペンの持ち方も知らないやつに、恋文の書き方を教えられないだろう? まず、ペンを持つ。で、字が丁寧に書ける。内容はそれからだ」
「よく分からない例えですけど、自分でできる勉強は、うちでやってきます。ここに来れるのは週に1度くらいなんですから、もっとためになることを教えてください」
「おいおい、それが人にものを教わる態度なのか? 自分の娘じゃなかったら絶対弟子にしないな」
「誰が娘なんですか!」
叫んでしまってから、にやにやと笑っているラングリーを見て、つい乗せられてしまう自分を悔しく思う。本当にこいつは性格が悪い。こっちだって、『青』になるためじゃなかったら、絶っ対に弟子入りなんてしないんだから。
「・・・・・・本を読むだけなら、ここにいる必要ないですね。帰ります。おぼえてきたら、ちゃんと教えてくれるんですね?」
「もちろんだとも。『青』の試験なんて簡単に通れるくらいのことは教えてやるさ。教えてはやるが、身につけられるかどうかはお前次第だ」
「必ず身につけて、『青』になってやります!」
はっきりと断言したリームに、ラングリーは満足げにうなずいた。椅子から立ち上がると、細身の銀の杖と巻物をひとつ持ってリームの机に近づく。
「ティナ・ライヴァートはまだ迎えに来ないだろう? 俺が送ってやろう。本は俺が持つから、ちょっとこれを持っていてくれ。下の部屋に移動するぞ」
渡された巻物と杖を持ち、ラングリーのあとに続いて部屋を出るリーム。銀の杖は細いわりに重量があった。よく見ると表面には細かい呪文が刻まれている。なんとか意味の分かる部分はないかと、目をこらして読んでみたが、何一つ分からなかった。
ひとつ下の階層の部屋は窓がないらしく、扉を開けても薄暗い。ラングリーが入り口横の壁に触れて短い呪文を唱えると、いくつかの魔法の明かりが部屋を照らし、そこには床一面に大きな魔法陣がかかれていた。
「汎用魔法陣だ。あえて記述を未完成にして使用用途を広げている。空間移動の魔法の大部分はそっちの銀の杖に入っている。まぁ内容は分からんだろうが、流れだけでも見ておけ」
ラングリーは魔法陣の中央に魔法語の本を積み置くと、リームをその近くに呼び、杖と巻物を受け取った。ラングリーが呪文を唱えはじめると、床の魔法陣の線に沿って流れるように白い光が広がっていく。呪文が続くにつれて、その光は淡い紫色に変化し、眩しいほどの強さになった。そして、軽い浮遊感とともに、アメジスト色の光の向こう、石造りの部屋の風景が水面のように揺らぎ、別の景色に置き換わる。明るい日差しの下、通りに面した二階建ての店。青地に黄色の文字で書かれた看板。雑貨屋ラヴェル・ヴィアータだ。
「空間移動の魔法が扱えるようになれば、魔法士としてはエリートだな。大貴族や商業組合、神殿、どこからも引く手あまただ。あっという間に城が建てられるほどの稼ぎになるぞ。そこらの魔法士じゃ空船の運転士がせいぜいだからな」
「え? なんでおじさん、一緒に来たんですか? 私、本くらい持てますよ」
リームの疑問に、ラングリーは軽く呆れた溜息をついた。
「お前なぁ、ティナ・ライヴァートを基準に考えるなよ。人を対象にした空間移動の魔法は、術者も一緒に移動するのが当たり前だ。途中で何かあったら取り返しがつかないだろ」
いつもティナに一人で移動させてもらっているリームとしては、いまひとつ納得できなかった。移動が一瞬すぎて、途中で何かあるという事態が想像できない。そうですか、とだけ答えて、重い4~5冊の魔法語教本を両手でかかえた。
ちょうどその時、雑貨屋の入口が開き、噂のティナが顔を出した。
「リーム、ラングリー! どうしたの。早かったのね」
「いえ、ティナ殿。リームが自習ならうちでやりたいと言いましてね。あぁ、あと、これはティナ殿に。約束のやつです」
ラングリーがティナに手渡したのは、執務室から持ってきた巻物だった。ティナは封を解いて初めの方を確認すると、わずかに眉をしかめつつもうなずいた。
「分かった。ちょっと時間がかかるかもしれないけど、考えとく」
「よろしくお願いしますよ。じゃあな、リーム」
ラングリーは、リームとすれ違いざまにぽんぽんと頭をなで、両手が本でふさがったリームは、抵抗のうなり声をあげて心底嫌そうに首をぶんぶんとふった。
2010/04/25 (Sun) 01:36



「まさか、ラングリー殿の仕業だったとは……事前にひとこと言っておいていただければ」
「いくら『青』にでも、報告できないことはある。宮廷魔法士はそういう仕事だろ?」
 ラングリーが『青』にこの雑貨屋の不思議な商品は全て自分の作ったものだと説明し終えた後、5人はラングリーの持ってきた葡萄酒とツマミをかこんで軽い食事をしていた。
 イシュとダナンは元々ラングリーと面識があったらしい。イシュはかなり難解な魔法用語を並べ立ててラングリーにむかっていったが、ラングリーはすらすらと受け答えていた。
 そして、何故こんなことをしているのか、という問いに関しては、国家機密だ、と笑顔の一言で終わらせた。『青』もそれには何も言えないらしい。宮廷魔法士はやっぱり便利だわ、とティナは内心思いながらほくほく笑顔だった。
「しかし、嬢ちゃん、ラングリー殿と関わりがあるとは幸運だな」
「えっ!?」
「そうですね。ラングリー殿はこの私が認める数少ない宮廷魔法士です。魔法構成、特に結界魔法における技術は、シェイグエールにも並ぶものは少ないでしょう。お嬢さんがもし『青』を目指すのでしたら、是非その技術を学ぶべきです」
「なんだ、リーム。お前、『青』になりたかったのか?」
「えっ、いやっ、違っ……わないけど、違うっ?!」
 一番知られたくない相手に自分の夢をばらされて、リームはしどろもどろになった。宮廷魔法士のオジサンみたいになりたいと思ってるなんて思われてはたまらない。案の定、ラングリーはひとりうんうんと満足げに頷いているではないか。
「そうかそうか、リームも魔法士になりたいかぁ~。魔法の素質は遺伝しないが、もしリームが魔法を学びたいというなら協力は惜しまないぞ。俺は基本的に弟子はとらないんだが、他でもない我が子のぐぅぅっ!?」
「黙ってくださいっ!!!」
 余計なことを言おうとしたラングリーの頬を、横から思いっきり押さえて、リームはそれを妨害した。しかし、一瞬遅かったらしい。ダナンはそんなラングリーとリームを見比べて、まさか、とつぶやいた。
「嬢ちゃんが、噂のフローラ姫の?」
「違います! って、噂になってるんですか!?」
 『青』にまで知られているとは、一体どの程度まで知れ渡っていることなのか、リームは空恐ろしくなってしまった。いや、自分は関係ないのだけど、噂の子でもなんでもないし、と心の中で言い訳しながら。
「私もラングリーに魔法を教わるのは良い方法だと思うけどなー」
「ティナまでそんなこと言うんですか!? オジサンに教わるぐらいなら、ひとりで勉強します!!」
「……随分と嫌われているようだな、ラングリー殿」
「反抗期なんだ。なんとかならないもんかな」
 ダナンに同情されて、ラングリーは全力で押さえられて赤く跡の残った頬をさすりながら言った。ダナンはふむと考えながら頷く。
「嬢ちゃん、ラングリー殿の弟子になれば、シェイグエールに行けるかもしれんぞ」
「えっ、ど、どういうことですか?」
「ラングリー殿ほどの実力者であれば、シェイグエール魔法院へ弟子を推薦してもおかしくはないということだ。もちろん試験は通常通り行われるが、名の無い魔法士の弟子として行くよりは、長の目にも留まるだろう」
「うっ、で、でもっ……」
 シェイグエールへの近道が目の前にある。あこがれの『青』その人から保証された道だ。けど、気に食わない宮廷魔法士に父親然とした教え方をされるのは鳥肌がたつほど嫌だった。
 悩むリームを見て、ラングリーはにやりとしながら言った。
「まぁリームにその実力があれば、だがな。リームには悪いが、実力のない者を推薦したとなれば俺の評判が落ちる」
 カチンときた。
 まだ何も始めてないのに、実力がないと決めつけられている様で。……確かに素質はそれほどないのかもしれない。イシュに言われた言葉が頭の中でよみがえる。でも、まだ努力もしてないのに諦められない。見てもないのに実力がないなんて、言わせない。
「私は……諦めません! ぜったい私をシェイグエール魔法院に推薦させてみせます!」
 後からリームはこの時の言葉を後悔することもあったそうだが、そんなことをこの時のリームが知るはずもない。
 こうしてリームは、国有数の実力を持つ世界で一番気に食わない宮廷魔法士の弟子になったのだった。


― 続 ―

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